役員借入金で金融機関への返済をする意味

資金繰り

役員借入金が発生する原因としては、金融機関から融資を受けることはできるが支払利息の増加を嫌がって受けていない場合もありますが、どちらかといえば、金融機関から融資が受けられないことのほうが多いように思います。

支払いの優先順位

企業は毎月いろいろな支払いが発生します。支払いの優先順位としては、次のようになります。

人件費

人件費が支払えなければ従業員は当然退職していきますから事業継続はできません。数日は待ってもらえるにしても、自分の将来を考えれば転職を考えるでしょう。それが頻繁に発生すればより退職は増加します。

したがって、これは最優先に支払うべきです。

仕入先や外注先

売上原価となる仕入先や外注先への支払いができなければ、今後の販売にも影響を与えます。そして、今後の取引継続ができなくなる可能性も。一部仕入先からは分割での支払いにも応じてもらえる可能性はありますが、人件費同様に優先順位は高いです。

経費

事務所賃料、駐車場代、保険料、電話代、水道光熱費等の経費です。

一部例外はあるにしても、多少待ってもらえる経費は多いでしょう。

税金や社会保険料

原則は期限内納付しなければなりません。それが困難な場合、役所窓口で交渉することにより、分割での支払いに応じてもらえる可能性は高いです。

例えば、消費税が年2回納付なら、次の納付期限までの最大半年間での分割払いとなります。

金融機関への返済

金融機関への返済は最後になります。なぜなら、これまでの返済条件を変更してもらうことを金融機関が了承すれば、事業を継続することは可能だからです。少なくとも1年程度は返済をストップしてもらえるでしょう。

必ず応じてもらえるわけではありませんが、金融機関は100%に近い数字で応じています。

誤った優先順位の経営者がいる

しかし、誤った優先順位で考えている経営者がいます。本来優先順位の高い人件費や仕入先への支払いよりも、金融機関への返済を優先しているのです。これでは従業員や仕入先の協力を得て経営を立て直そうとしても、うまくいかない可能性が出てきます。

役員借入金で返済を続けても融資が出るとは限らない

金融機関への返済を優先するのは、「ちゃんと遅れずに約束どおりに返済していれば、また融資してくれるだろう」との思い込みからです。

もう10年近く前まで当社でお手伝いしていたある企業は、競合他社との価格競争に陥り赤字決算が続いていました。

そこで返済をストップし資金繰りを少しでも楽にして経営を立て直そうと提案しました。しかし、メインの信用金庫担当者は「ちゃんと返済を継続してくれれば次の融資も期待できますよ」と経営者に伝えていたのです。

その時に改めて審査が行われるのだから、融資が出るとは限らないと言ったのですが信用金庫担当者の言葉を信用し、自身の資金を投入してまで返済を継続。

結局、いろいろな理由を付けて融資が出ることはありませんでした。法人も個人も資金が底をつく結果になってしまったのです。

役員借入金で金融機関への返済はやめよう

返済継続に必要な資金を経営者個人から借入れ、それを役員借入金として処理している企業は、この元顧問先のように融資を受けられるとは限りません。

もちろん業績や財務内容に問題がなければ可能性は十分にあるでしょう。しかし、赤字が何期も継続されている、あるいは債務超過に陥っていれば可能性は非常に低いです。

「返済を継続すれば何とかなる」で今までどおりの経営を継続するのではなく、決算書でいえば収益力や安全性の立て直しを優先すべきです。

役員借入金で返済を継続するのは意味がありません。経営者が自己資金を入れなければならない状況に陥った時、金融機関に融資を相談してみましょう。その結果、しばらくは融資が出ないことが明らかであれば、すみやかにリスケジュールを行いましょう。返済を猶予してもらっている間に、経営改善を直ちに実行すべきです。

経営者個人の現預金はいざという場合に備え手元に残す

経営者が持っている現預金などの個人資産は手元に残しておきましょう。そして、いざという場合に使うようにするのです。

例えば、リスケジュール中に経営改善を行い、経営の立て直しが徐々に進んでくると売上高が回復してきます。それに伴い売掛金や商品等の在庫も増えてきますから運転資金が必要になります。そんな時に使うのです。

経営改善中に発生する、人件費、仕入先や外注先、経費の支払いに個人資金を使い、間違っても借入金返済には使わないことです。

個人の資金は非常時に備えて手元に残しておきましょう。