信用保証協会の利用を提案する金融機関

銀行融資

中小企業は大企業と比べて信用力で弱いところがあります。それを補ってくれるのが信用保証協会です。

「自行で融資をしたいがどうしても安全性に問題があるし、今後の業績面に不安が残るため、信用保証協会に保証をお願いしよう」、これが本来の利用の仕方です。

しかし、経営者が融資をお願いしたく金融機関の窓口へ相談に行っても、担当者が自社に融資を提案しに来ても、いつも信用保証協会の利用を勧めてくると不満に思っている経営者もいるかと思います。

私が銀行員だった頃、支店長に融資の相談があったと報告すると、「信用保証協会がOKならいいよ」とよく言われましたし、融資が苦手な上司はいくらまで融資していいか信用保証協会に電話相談していました。職員からは「それは銀行さんが考えることでしょ」と怒られていましたが。

そんな依存体質は現在でも大きく変わることなく、信用保証協会任せにする金融機関は少なくありません。

信用保証協会の利用を提案してくる理由

金融機関が信用保証協会の利用を提案してくる理由は次のとおりです。

企業の業績が良くない

まずはこれでしょう。手持資金が少ないため将来の資金繰りに不安がある、自己資本が少額で安全性が低い、収益力に難があるため赤字または少額の利益しかなく返済能力に問題があるなどです。このような経営状態にある企業に長期間の融資をするのはリスクが伴いますから、信用保証協会の利用を提案してくる可能性が高いでしょう。

これは企業側にも問題があります。

金融機関にとってリスクがないあるいは少ない

信用保証協会は金融機関に対して原則80%保証します。保証制度によっては全額を保証するので、金融機関は低リスクで融資をすることができます。

かつては100%保証でしたが、2007年10月から、金融機関にもリスクの一部を引き受けてもらうことになりました。100%保証ですからろくな審査もせず信用保証協会に丸投げしていることが問題になったためです。

とはいえ現在の80%でも大きな魅力です。

リーマンショック、東日本大震災、新型コロナが発生した際、100%保証の制度が実施されましたが、普段は接触がないのに営業に来た金融機関がありませんでしたか。目的は100%保証が付いた融資をするためです。

金融機関も保証協会付き融資には営業目標があり、保証協会が付かないいわゆるプロパー融資よりも高い評価が得られます。だから業績好調な企業に対しても、保証協会付き融資を獲得したいのです。

他行取引がいない

小規模企業は取引金融機関の数も少ないため、1行取引になっていることがあります。この場合、競争相手がいませんから経営者は他行の提案と比較できません。金融機関も他行に案件を持っていかれないため、自分たちに有利な融資を提案してきます。

経営者が何も言ってこない

金融機関に反抗した場合の融資への影響を懸念し、何も言わない経営者もいます。また、融資には必ず信用保証協会の保証が必要だと思い込んでいる人もいました。

金融機関も経営者が何も言ってこないなら、これまでどおりの条件を提案してくることがよくあります。

企業側も信用保証協会に依存しない

信用保証協会の利用ばかり提案してくるのは、業績面で信用がないか、経営者が何も言ってこない、つまり金融機関にとって言いなりになる都合が良い企業です。したがって、次のように改善していきましょう。

プロパー融資で資金調達できる企業へ

プロパー融資は金融機関がリスクを負って融資しますから、保証協会付き融資より審査は厳しくなります。しかし、信用保証協会は中小企業の信用力を補完し資金繰りを支援する公的機関としての使命があります。決して審査が甘いというわけではありませんけど、プロパー融資の審査よりはやさしくなります。

ぜひ審査の難易度が高いプロパー融資を受けられる経営を目指しましょう。「別に融資が受けられるならどちらでもいいよ」との意見もあるでしょう。しかし、それは間違いだと思います。利益を出し決算書の内容を良くしながら有利な条件で融資が受けられる、金融機関から借りてくださいと言われる経営を目指すべきです。業績面を理由に提案してくるのなら、金融機関から信用されていない企業だということです。

普段はプロパー融資で資金調達し、信用保証協会の保証枠を万一に備えて温存するのです。そうすれば資金調達できる総額は増やせることになります。

自社の希望も伝える

決算書を見ても赤字続き、債務超過など、自社に大きな問題点があるのならやむを得ないでしょうが、そこそこ優良な経営をしても保証協会付き融資を提案するのは、金融機関が自己の都合を押し付けているだけかもしれません。

プロパー融資を希望する経営者はぜひ自社の希望を伝えてみましょう。金利や担保・保証もそうですが、自社の希望を伝えることはまったく問題ありません。他行にも希望する融資条件を提示し適度な競争を促すことも必要です。

そして、応じてもらえないのなら、どこを改善すれば検討してもらえるのか説明を求めましょう。

どこかの金融機関でプロパー融資が受けられると、他行からも応じてもらえる可能性は高くなります。

なお政府系金融機関である日本政策金融公庫と取引することも有効です。保証協会の利用は不要ですし、民間金融機関よりも審査は前向きだからです。

まとめ

保証協会付き融資を提案するのは、信用保証協会の保証は原則80%(一部の保証制度は100%)で金融機関にメリットがあるからです。

保証協会付き融資を提案してくるのは、業績面に不安があるのか、それとも金融機関が自分たちの都合で提案していることもあります。

したがって、業績面で問題ないのに保証協会付き融資を提案してくるなら、自社でもプロパー融資は利用できないか相談しましょう。