金融機関にもいろいろあって、都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合、そして日本政策金融公庫のような政府系金融機関もあります。都市銀行の中でも、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行はメガバンクと呼ばれ、ほとんどの人が知っている銀行かと思います。最近ではネット銀行の利用も増えました。
金融機関の種類
中小企業が融資取引をする金融機関について少し説明します。
都市銀行・メガバンク
都市銀行とは三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行のことを指します。そしてりそな銀行を除いた3行はメガバンクとも呼ばれます。
東京や大阪等の大都市に本店を置き、全国転嫁している金融機関です。大企業や中堅企業をメインにしており、海外での事業にも積極的に取り組んでいます。
地方銀行
各都道府県全体を営業エリアにし、中小企業をメインとしています。地域経済に大きな影響力を持ち、地域の主要企業への主要融資を担っています。神奈川県は横浜銀行、千葉県は千葉銀行、栃木県なら足利銀行であり各県全体をカバーしています。
地方銀行の中には第二地方銀行に属する銀行があります。神奈川県は神奈川銀行、千葉県は京葉銀行、栃木県は栃木銀行です。やや規模が小さいため、小規模企業にも利用しやすい金融機関です。
信用金庫・信用組合
信用金庫は地方銀行よりも規模的には小さく、利益第一主義ではなく地域社会の利益を優先する金融機関です。営業地域は一定の地域に限定され、預けられた資金はその地域の発展に生かされているのが銀行とは異なります。
政府系金融機関
政府系金融機関の代表として日本政策金融公庫があります。略して「公庫(こうこ)」と呼ぶ方も多いでしょう。銀行は営利企業ですから自行の利益を優先する傾向があります。しかし、政府系金融機関は国の企業支援政策を優先する必要がありますので、特に中小企業の資金繰り支援に熱心なのが特徴です。
中小企業が取引すべき金融機関
このように金融機関にも大から小までありますが、中小企業が取引すべき金融機関は企業規模に合わせて選択しましょう。
メガバンクは中小企業を歓迎していない
メガバンクは正直なところ、中小企業と積極的に取引をしたいとはあまり思っていません。
年商が10億円以上もあれば、融資額は大きくなりますから歓迎されるでしょうが、中小企業では取引するメリットはないと判断されます。
中小企業であっても大企業との取引拡大などの理由で売上高が急増、かつ今後もそれが継続される見通しで、高額な融資取引が十分見込まれるなら担当者も付くでしょうが、そうでないなら歓迎されることはありません。
地方銀行は各都道府県とその周辺を、信用金庫・信用組合はより狭い営業エリアを対象としていますが、メガバンクは全国そして海外にも進出し大規模な融資を中心にしています。
メガバンクからすれば、中小企業への融資は金額的にも小さいですから得られる利息収入は少ないし、大企業よりもリスクは高いことが多く、積極的に融資を行うメリットは少ないのです。
したがって、経営悪化時の対応にも金融機関による温度差があります。
地域金融機関(地方銀行、信用金庫、信用組合)ならば、地元の中小企業を支援しようと熱心に取り組んでくれる姿勢が見られますが、メガバンクではあまりそういうことはないと思います。
経営が好調な時は熱心に営業してきたとしても、そうでなくなったときは明らかに異なる対応をしてきます。どうしても中小企業への対応には差が出ます。
何となくメガバンクは避ける
中小企業経営者の中にはメガバンクとの取引をしたがる方がいます。たとえ普通預金だけであっても、「当社はみずほ銀行がメインの口座だ」と、あたかも自社が大規模で立派な企業に見せたいのでしょう。昔はそういう見栄を張りたい経営者が少なくありませんでした。
そこまでこだわる経営者は以前より明らかに減ったように思いますし、最近は口座開設も厳しくなってきました。
時々ある相談に、起業時にメガバンクで預金口座を開設していたが、事業も順調に成長しそろそろ融資を受けてより規模を拡大したいと相談に行ったら、冷たくあしらわれたというのがあります。
銀行との付き合い方をよく知らない経営者は、規模の大きいほうがメリットを感じるのかもしれません。それにイメージが良いように見えるでしょう。しかし、これまで述べたようにメリットは中小企業にはほとんどないといえるでしょう。
地域金融機関をメインに
ただ、中小企業がメガバンクと預金取引をするのは問題ありません。例えば多数の個人客を相手にする商売なら、多くの人が利用している大手銀行に口座を持つのはメリットがありますから。しかし、融資取引についてはメリットはないということです。
中小企業は地域金融機関と取引しましょう。もちろん各金融機関によって規模は異なりますが、年商が5億円を超えてくるようなら地方銀行、2,3億円規模なら信用金庫をメインにすべきだと考えます。より小規模なら信用組合も選択しです。
信用金庫や信用組合は、利益第一主義にならず、地域経済発展のために重要な役割を果たすのが使命です(一部そうでない信用金庫が四国にありますが)。
こちらは2024年4月に公表された日本銀行金融システムレポートにある図表です。

35ページ目にあるこの図表は債務者区分別の構成を表しています。
水色が正常先、白色は要注意先、青色は要管理先、オレンジが破綻懸念先です。正常先は業績好調で財務内容にも問題がない、要注意先は赤字が続くなど業績が低迷している、要管理先は3カ月以上返済が延滞したり、融資条件を緩和してもらったりしている先です。破綻懸念先は経営難にあり今後の経営破綻の可能性が高い先です。
これを見ると左側の大手行は正常先が圧倒的に多く、右側の信用金庫は要注意先以下の割合が多いことが分かります。それだけ信用金庫は多少のリスクを負ってでも地元中小企業を支援していることを表しています。
中小企業は大企業と比べ、景気の影響を受けやすいですし、経営基盤がぜい弱なため、赤字になりやすいのが特徴です。
そのようなことからも、中小企業はぜひ信用金庫(あるいは信用組合)とのお付き合いを中心にすることをお勧めします。
地方銀行がダメということではありません。小規模企業への支援に積極的な銀行もありますが、信用金庫のほうが同じ目線で対話ができるのでメリットが多いように思います。
政府系金融機関とも付き合いを
そしてもう一つ忘れてはならないのが、政府系金融機関である日本政策金融公庫でしょう。
民間金融機関が慎重になる融資案件でも前向きに取り組んでくれることが多いです。当社顧問先でもメインの地方銀行からは融資の謝絶連絡があったものの、公庫に相談したところ満額出たことは何度もあります。そのおかげでみなさん安定した経営を続けています。
それは公庫の審査が甘いという意味ではありません。決算書も大切ですが、企業の将来性をより重視する審査を行うからです。
したがって、中小企業は公庫と付き合っておくことは何かとメリットが大きいのです。
まとめ
中小企業は無理して大手銀行と取引する必要はありません。それならば中小企業の支援に熱心な信用金庫を中心に取り引きし、それに政府系金融機関を加えたほうが、より丁寧な金融支援を受けやすくなるでしょう。