経済産業省がファクタリングを勧めている?

資金繰り

資金調達手段の一つであるファクタリングは、売掛債権を売却して資金を調達する方法です。ファクター(ファクタリング会社)は、企業から売掛債権を買取り、売掛先から債権を回収します。最近はそういうファクタリングを3社間ファクタリングと言ったりします。

しかし、企業はこの資金調達を使うと、売掛先から「資金繰りに苦しい企業」と疑われるかもしれません。そこで、最近増えたのが2社間ファクタリングです。売掛先には知られずに資金調達ができるとして利用が増えています。詳しくは当社HP「ファクタリング」を参照してください。

また2社間ファクタリングは、銀行融資とは違い決算内容が悪い、税金の滞納があるなど、金融機関からは敬遠されがちな中小企業でも利用できる資金調達手法といえます。それと同時に、かなり高額な手数料を取られてしまうあまり良いイメージを持たない経営者も私の周りでは増えました。ファクタリング会社は非常にリスクが高いため、どうしても高い手数料になってしまうのです。

有名になったおかげでしょうか、当社にもファクタリング依頼のお問い合わせを時々いただきます。当社はファクタリング会社ではありませんので、残念ながらファクタリングによる資金調達のお手伝いはできません。

ファクタリング会社やファクタリングを紹介しているサイトを見ると、「経済産業省がファクタリングを勧めている」あるいは「経済産業省がファクタリングを推奨している」と書かれています。

それらには出典を明らかにしているところもあったので確認してみました。

参議院/中小企業における資金調達の課題(PDF)

経済産業省/売掛債権の利用促進について(PDF)

企業が金融機関から資金調達する際、担保が必要になると不動産担保に大きく依存しています。しかし、企業は多額の売掛債権を保有していることから、それを利用して資金調達しましょうとは確かに書かれてはいます。

また、ここではファクタリングも資金調達手法として紹介されています。

経済産業省 売掛債権流動化とは(PowerPoint)

しかし、3社間でのファクタリングによる資金調達方法であって、2社間でのファクタリングについては書かれていません。

経済産業省が売掛債権を使った資金調達の推進に力を入れている中で、ファクタリングもそのうちの一つでしょうが、それは3社間であって2社間のファクタリングではありません。

ただそうはいっても、中小企業の資金繰りについては、銀行融資だけではどうにもならないことがあるのも事実です。

だから、私は2社間ファクタリングを否定はしません。しかし、「国がお墨付きを与えている。安心な資金調達方法なのだ」とは思わないようにして欲しいのです。2社間ファクタリングは取扱業者が増えたので手数料は低下傾向にあるとはいえ高額です。

もし国が(2社間)ファクタリングを推奨していたとしても、1か月後に入金される売掛金を10%も引かれて買い取ってもらうというのは、気軽に手を出さない方がいいというのは分かっていただけるかと思います。最後の手段としてどうしてもというのなら、少しでも手数料が低いところを選ぶようにしましょう。

本来のファクタリングである3社間なら、ファクタリング業者もリスクが低減しますから手数料は安く、資金調達方法として検討してもいいでしょう。

大手企業と取引がある企業なら、知らないうちにファクタリングを利用している可能性があります。請求してから入金まで待たされる場合、大手企業の関連会社がファクタリング業務を行い、手数料を引かれて振り込まれている中小企業はあると思います。当社顧問先も利用していますが1%台の手数料です。

金融機関が融資を断ってきたら、それだけ存続可能性の低い企業だと見ているわけです。そうなると高金利や高い手数料による資金調達が選択肢に入ってくるでしょうが、ファクタリング会社も企業から相談があっても実際にファクタリングを実行できるのは10%程度だと担当者から聞いたことがあります。

「金融機関から融資が断られてしまったからファクタリングでいいや」とはいかない可能性だってあるのです。

したがって、みなさんは「(2社間)ファクタリングを利用しなければならなくなった。これから経営を改善していこう」ではなく、そうなる前の「金融機関が冷たくなってきたな」と感じた時点で、これ以上経営悪化しないよう行動しましょう。