決算書の内容は簡単にでも説明する

銀行融資

決算書が出来上がると金融機関から「コピーをさせてください」と電話や訪問があるでしょう。「ああいいよ」と手渡すかと思うのですが、その際にはぜひ簡単にでも説明をしておきましょう。なぜなら、金融機関は融資先企業の決算書を財務分析ソフトに入力するのですが、誤った入力により正しい分析結果が出ないことがあるからです。したがって、決算書の内容については説明しておいたほうがいいのです。

資産の部には現預金と売掛金しかない非常にシンプルな決算書も見かけますが、通常はたくさんの勘定科目があると思います。一般的な勘定科目を使っていればいいのですが、そうでない企業だと、担当者が間違った判断をする可能性があります。

例えば売掛金です。相手先に商品やサービスを提供したら売上が発生し、まだ現預金を受け取っていない場合は、通常だと売掛金を使うと思います。しかし、たまになのですが未収入金等に計上されていることがあります。

法人税の計算には支障はありませんが、財務分析上は問題が発生する可能性があります。

例えば、正常運転資金(経常運転資金)がいくらなのか計算する場合、計算式は「正常運転資金=売上債権+棚卸資産-仕入債務」となります。

もし受取手形は0円として、未収入金を売上債権としては認識しなければ、正常運転資金はかなり小さいものとなってしまいます。棚卸資産が小さい企業ならマイナスになってしまうかもしれません。

したがって、売上債権は一般的な勘定科目を使うか、担当者には念のため伝えておきましょう。

それと、中小企業では経営者が資金繰りのために自社に資金を投入することがあります。それに対する対応は企業や税理士によって様々です。

短期借入金や長期借入金の中に計上する、あるいは役員借入金や個人借入金といった勘定科目を別途作って、金融機関からの借入金とは分けて計上していることもあるでしょう。

短期借入金などに計上されていても、内訳書を見れば経営者からの借入金だと分かるのですが、できれば科目を分けるまたは決算書を渡すときにこれも伝えておきましょう。

もう一つ、特殊な損失が発生するというのはめったにないかもしれませんが、当社の顧問先スーパーで雨漏りがひどく商品をダメにしてしまい損失が発生したことがありました。

そういった場合、そのまま仕入に計上してしまうと、利益率は大幅に低下してしまいます。販売して売上原価に計上しているわけではないので、そのような損失が発生したら特別損失として計上するようにしましょう。ないとは思いますが、顧問税理士がそのような処理を嫌がったり、間違えて処理してしまったりした場合は、必ず金融機関には説明しましょう。いくらの損失が発生したのか、それがなければ利益率や利益額に問題はなかったと。

「安売りをしなければならない経営に陥っている」「仕入先との関係が悪化しこれまで通りの仕入れができないのでは」と疑われるようなことは避けましょう。

また、業種についてもこれまで通りでしょうか。以前は〇〇業だけだったけど、今は▲▲業もやっていて、売上はむしろそっちの方が中心になっているという場合です。財務分析は業種によっても結果が変わってきます。

間違ったおかげで有利に判断されればいいですけど、そうでないとしたら自社を見る姿勢に大きな影響を与えますので、そういう意味からも決算は簡単でもいいから説明をしてください。