保証枠内でしか支援できない地域金融機関

銀行員と経営者の面談 銀行融資

昨年から始まっているコロナ禍、1年もすれば落ち着くだろうなんて思っていたらもう2年近く続き、中小企業へのダメージは非常に大きいものになりました。ちなみに、私の周りではワクチンのせいで危険な状態になった人はいますけど、コロナウイルスが原因で死亡や重症になった人はいません。

そのような中、昨年は新型コロナウイルス感染症拡大による資金繰り支援策として、無利子無担保融資「ゼロゼロ融資」が実行され、民間金融機関によるものは今年3月まで行われました。

昨年の春頃のことですから覚えている方も多いでしょうが融資申込みが殺到、日本政策金融公庫では退職した職員を一時的に採用したと聞きましたし、民間金融機関でも申し込みから実行まで通常では考えられないほど待たされました。

当社顧問先もゼロゼロ融資を受けました。リスケジュールしたばかりの企業でも月商の数カ月分は調達できるほど積極的な支援が行われ、倒産件数は低く抑えられていましたから、かなりの効果があったことは間違いありません。

支援は保証限度額の範囲内

しかし、このゼロゼロ融資を限度額まで受けた後で追加資金が必要になった時、保証限度額を超えて支援してくれたでしょうか。

そのゼロゼロ融資で資金調達するときも、金融機関担当者から売上が前期比で20%以上の減少が必要と言われたかもしれません。それは20%以上減少するとセーフティネット4号という100%保証の制度が利用できるためです。金融機関はリスクが全くありませんから、最近の売上を少なくして試算表を作るよう指示を出す銀行員もいました。

つまり、保証の範囲内でしか支援しないということなのです。

ゼロゼロ融資の保証限度額に達してしまった企業がプロパー融資で支援を受けたケースもありましたけど、「信用保証協会さんから保証が出なかったので」とあっけなく断る金融機関が本当に多いし、コロナ禍でも前向きな資金需要が発生しても「良い決算書になったら融資を考えます」と言ってくる金融機関もありました。

信用保証協会が保証すれば融資をする、保証が出なければ融資をしない、そんな丸投げ体質の金融機関はいまだに存在します、というか結構多いのです。

昔の事ですが私が銀行員の時、上司の課長が隣で電話をしていました。相手は東京信用保証協会の職員です。課長は「保証協会さんですか? 取引先の株式会社〇〇さんなのですが、あといくら融資していいですか」と相談していました。

職員の方から「それは銀行さんが考えることですよね」と言って切られてしまったとのこと。当たり前ですね。でもそんな元上司みたいな融資判断をすべて信用保証協会に任せる銀行員がいまだに多いのでしょう。

銀行融資審査

事業性評価融資

地方銀行、信用金庫、信用組合といった地域金融機関は、地域の中小企業の資金繰り支援は重点的に取り組まなければなりません。

5年ぐらい前から事業性評価融資という言葉が聞かれるようになりました。これは企業の決算内容、担保や保証に過度な依存をせず、企業の持つ事業継続性や将来性について適切に評価し融資に取り組むことをいいます。

地域金融機関には特に求められていることですし、そもそもそれが本業のはずです。金融庁は中小企業向けにパンフレット「円滑な資金供給の促進に向けて」を作成し、事業性評価融資について解説しています。

しかし一部の金融機関では、先ほどのように依然として決算書重視、担保や保証協会に依存しています。コロナ禍によってその姿勢があらわになったといえるでしょう。

当社の顧問先でコロナの影響を受け売上が減少した企業があります。そんな時、ある信用金庫が新規開拓で頻繁に訪問し、コロナ融資をセールスしてきました。本当はメインバンクに依頼する予定でしたし、私もそのようにアドバイスしていたのですが、顧問先はその熱意に負けてコロナ融資を申し込みました。

100%保証が目当てなのは明らかでした。ゼロゼロ融資を限度額まで対応した途端に来なくなりました。今後の業績回復は実現可能性が極めて高いものでしたが、それが若干遅れていたため追加の融資を求めたところ、良い内容の決算書ができあがったら相談してくださいと冷たい対応に。

もちろん、どう頑張っても支援が無理な企業もあります。しかし、企業の事業性や将来性を評価できず、最初から保証協会の枠内だけの支援、それ以外は対応しない、そんな地域金融機関が存在するのは確かです。

今年1年、コロナ禍で取引金融機関の対応はいかがだったでしょうか。少しでも応援しようと頑張る金融機関、最初からやる気のない金融機関もあったのではないでしょうか。

金融機関はどこも同じではありません。来年は自社の経営支援に熱心な金融機関はどこか、よく考えて付き合っていきましょう。