継続支援に必要な経営計画書

銀行融資

経営計画書は継続支援に必要な書類

1年半以上、コロナウイルスの影響を受け続けて、ようやく陽性者数も落ち着いてきました。どの顧問先も経営が前向きに動き始めています。しかし、資金繰り安定のためにやむを得ず銀行融資を受けた結果、借入金残高が増加したでしょう。資金繰りが苦しい企業の中には税金の未納が発生しているかもしれません。それらに該当する中小企業は、コロナが落ち着いてきたといっても安心はできないでしょう。

日本経済新聞の10月24日の記事「中小の負債、10年ぶり高水準 返済猶予切れ迫る」には、倒産件数は低水準にあるものの、資本金1,000万円未満の中小零細企業においては、有利子負債をEBITDA(利払い、税引、償却前利益)で割った返済負担が13.9倍と大きく悪化しています。早期の返済能力回復が急務です。

もう廃業すると判断したなら特に金融機関との付き合いに悩む必要はないでしょうが、事業継続意欲があり今後も金融機関との取引が必要であるなら、直ちに数字で結果を出していかなければなりません。

とはいっても回復には時間がかかる場合もあるでしょうし、すでに借入限度額まで、あるいはそれ近くまで融資を受けている場合は、リスケジュール(返済猶予)しか残されていないかもしれません。

そんな場合は、金融機関に自社の事業継続性に懸念がないことを説明しなければなりません。そのために必要な書類は経営計画書(経営改善計画書)です。悪化した経営をどのようにして立て直すのか、その結果として今後の予想損益計算書や貸借対照表、そしてキャッシュフロー計算書を作成し交渉する必要があるのです。

2021事務年度金融行政方針に実抜計画が明記

今年8月31日、金融庁は2021事務年度金融行政方針を公表しました。

金融行政方針とは、金融行政における重点課題や金融行政に取り組む上での方針のことです。

要点の1つに「新型コロナへの対応」があります。金融庁は金融機関に資金繰り支援、事業者の経営改善・事業再生への積極的な関与等を求めているのですが、本文3ページ中には次のように書かれています。

金融機関が返済猶予等の貸出条件等を変更する場合の債権の区分(債務者区分)に関し、融資先企業が一定の経営改善等を実現する計画(実現可能性の高い抜本的な経営再建計画)を策定した場合には正常債権と取り扱うことができる。

「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」は「実抜計画」と言われ以前からありましたが、金融行政方針に明記されたということは、中小企業と金融機関の対話において経営計画書の重要性が増してくると考えられます。

実抜計画と合実計画

中小企業再生支援協議会における実抜計画とは次の条件を満たすものとなります。

・概ね3年以内の黒字化
・5年以内の実質債務超過解消
・債務超過解消から10年以内に借入金のうち運転資金を除く借入金の返済を行う計画
※運転資金とは正常運転資金(経常運転資金)のことです。

また、金融庁の監督指針における実抜計画とは次の要件を全て満たす計画であることをいいます。

・計画の実現に必要な関係者との同意が得られていること
・計画における債権放棄等の支援の額が確定しており、当該計画を超える追加的支援が必要と見込まれる状況でないこと
・計画における売上高、費用及び利益の予測等の想定が十分に厳しいものとなっていること

そして「抜本的な」とは、おおむね3年(債務者企業の規模または事業の特質を考慮した合理的な期間の延長を排除しない)後の当該債務者の債務者区分が正常先となることをいいます。

ただ、債務者が中小企業である場合、合実計画が策定されていれば、実抜計画とみなして差支えがないとされています。

では合実計画は何かといえば、合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画の略です。その合実計画の内容は次のとおりです。

・経営改善計画等の計画期間が原則として概ね5年以内で、かつ、計画の実現可能性が高いこと。なお、中小企業の場合は、5年を超え概ね10年以内とされています。
・計画期間終了後の当該債務者の債務者区分が原則として正常先となること。ただし、金融機関の再建支援を要せず、自助努力によって事業の継続性を確保することが可能な状態となる場合は、要注意先であっても差し支えない
・全ての取引金融機関等において、支援を行うことについて、正式な内部手続きを経て合意されていること

これら実抜計画や合実計画の要件を見て、「なかなかハードルが高いな」と感じたかもしれません。それはみなさんの会社だけではありません。おそらく多くの特に中小企業が3年以内に黒字はできたとしても、それ以外の要件をクリアするのは難しいと思うでしょう。

しかし、金融検査マニュアルは2019年末に廃止され、債務者企業の債務者区分(格付け)については、すでに金融機関が柔軟に取り扱って差し支えないとなっています。

さらにコロナウイルス感染拡大に伴い、2021年9月10日に銀行協会等に宛てて発出された要請文(事業者の実情に応じた資金繰り支援等の徹底について)においても次のように書かれています。

5・なお、民間金融機関が事業者の資金繰り支援に当たって条件変更や新規融資を行う場合の債権の区分に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業者への資金繰り支援の観点から、金融担当大臣談話等で累次にわたって要請しているとおり、政府は、民間金融機関の判断を尊重している。

こうした大臣談話等の趣旨を踏まえ、貸出条件緩和債権の判定に当たっては、実現可能性の高い抜本的な経営再建計画等の計画期間を延長する、計画を策定するまでの期限を猶予する、計画を新型コロナウイルス感染症以前の実績等に基づき作成するなどの柔軟な取扱いも差し支えない。

したがいまして、経営計画書を作成する場合、この実抜計画・合実計画に該当するよう無理やり合わせる必要はありません。まずは自社の経営改善策、そして実現可能な数値計画を作成しましょう。

金融機関の企業選別は進む

新型コロナで借入金を増やした企業は少なくありません。赤字や債務超過に陥った、そして税金を滞納している企業もあるでしょう。

金融機関はすべての取引先企業の経営支援を行うことはできません。限られた経営資源を効率よく配分する必要がありますから、どこを支援先にするかの選別材料として経営計画書が必要なのです。

金融機関が「一番気にするのは貸したお金が返済されるかどうか」です。悪化した経営の具体的な改善策、返済できる利益を生み出せることを示さなければなりません。

これからは決算書と融資のたびに試算表を出すだけでは不十分です。経営計画書はリスケジュールを依頼する際に作成するイメージがあるかもしれませんが、金融機関と良好な関係を維持したいのなら、毎年の経営計画書提出は常識だと考えた方がいいです。

ただし、一部の金融機関や行職員には計画書に対して消極的な考えを持つケースもあります。そういう金融機関とはお付き合いの仕方も考えたほうがいいかもしれません。なぜなら、自社の支援には後ろ向きだからです。それならば、これからの経営計画実現に向けて伴走してくれる金融機関と付き合いましょう。

当社が経営計画書作成をお手伝い

当社では経営計画書の作成をお手伝いしています。

毎年の経営計画書作成支援、そしてその後の進捗管理、定期的な金融機関への報告をお手伝いすることで、金融機関取引や経営の改善が可能となります。

詳しくは「経営改善計画書作成支援」あるいは「金融機関との融資取引サポート」をご覧ください。