リスケ依頼時、金融機関からの要求は断る

金融機関との交渉 銀行融資

経営の立て直しが思うように行かず資金の流出が続き、これ以上返済を続ければ他の支払いが滞ってしまう、かといって新たな融資がまったく期待できないのであれば、リスケジュールをお願いするしかありません。リスケジュール(リスケ)を金融機関に依頼するのは企業側なので、経営者が金融機関にお願いする立場になります。

金融機関はリスクに応じた要求をしてくるかも

リスケを依頼するのは資金繰りが苦しいからですが、そもそも業績が悪化していることでしょう。金融機関の立場に立てば、「経営悪化により資金繰りが不安定になっている、今後の返済が困難になってしまうのでは?」となります。

したがって、金融機関はリスケに応じる引き換えとして、金利引上げ、不動産等担保の提供、他行預金や売上入金を自行へ移行するよう要求してくる可能性があります(もちろんない場合もあります)。

一番多いのは金利引き上げかと思います。リスケを依頼するということは、当初の計画通りに返済が進まない経営状態なわけです、それは販売不振、売掛金の回収不能が発生等、経営に問題が発生しているのですから、原因は何であれ金融機関は回収不能リスクが上昇していると見るのです。

直ちに一括で返済してもらおうにもそれができないわけですから、リスケに応じる引き換えとして、例えばリスク分を金利に上乗せさせて欲しいと要求するのです。

「うちが困って頭を下げているのに、担保や金利引上げだなんて冷たい奴だ」と頭に来るかもしれませんが、金融機関にも立場があります。リスケによって返済が進まず、融資した資金の回収リスクが上昇するわけですから、そのような要求をするのは当然です。

まずは要求を断る

しかし、経営を立て直し正常な返済が再開できるようこれから頑張ろうという時に、金利引上げを受け入れれば利益はその分だけ減少するのですから回避しなければなりません。

担保提供もそうです。担保を提供することで資金調達ができるのならいいですが、金融機関が保全面を強化するだけが目的ならそれは避けたいところです。

金融機関と揉めたくないし、とりあえずリスケに同意してもらわなければと、安易に要求を受け入れるのはやめましょう。弱い立場で言いづらくても「今経営が苦しくて立て直そうという時にそれはやめてほしい」と伝えてください。こちらの要求も伝えるべきです。

もちろん、担当者に「お願いします」を繰り返したところで、金融機関も「はいわかりました」とはなりません。どこかで折り合いを付けなければならないとしても、すぐに相手の要求に応じることは避けてください。

担当者は融資先をいじめたいわけではありません。協力してくれれば自社の経営改善が進み、返済面でも問題がないことを説明しなければなりません。そのために必要な書類を作成する必要があります。

その書類とは経営改善計画書です。

リスケ交渉時に必要なこと

1,経営改善計画書

経営改善計画書には、経営が悪化した原因、それに対してどのような改善策を実行するのか、その結果として今後の見通しをまとめた数値計画や返済計画をまとめたものになります。そして、計画内容が実現性の高いものであれば、計画内容を受け入れてもらいやすくなります。

金融機関に説明するとき、「リスケをお願いする経営内容ですから確かに現時点ではリスクが上昇しているかもしれません。しかし、この計画書のとおりに再生していきますから経営悪化は一時的なものです。金利引上げをするような企業ではありません。また、金利を据え置いてくださればより実現性の高い計画内容になります」といった説明をしましょう。

2,少なくとも1年は返済額0円で交渉

金利に加えて元金返済額も0円で交渉してください。多少の減額で資金繰りが大丈夫ならかまいませんけど、リスケを依頼する程度ですからかなり厳しいはず。それなら後で再度の減額申請をしないで済むよう元金返済は0円でお願いするのです。資金流出を抑えるだけでなく、手持資金を増やす目的もあります。

「少しは返済してください」と言われても、「後でまた返済額のことで相談するのもご迷惑ですし、資金繰りの悩みから離れて経営改善に集中させてください」と強く依頼してください。

3,面倒でも交渉は粘り強く

リスケの実行率は非常に高い水準を維持していますが、金融機関がすぐに同意してくれるとは限りません。「金利据え置きに加えて元金返済ストップ? ふざけるな!」とまでは言われないと思いますが、「少しはこちらの立場も考えて欲しい」程度は言われるかもしれません。やさしい性格の経営者だと「では少しは返済します」なんて言ってしまう方いますけどそれはやめましょう。

まず金利はそのまま、元金返済は0円でお願いしてください。

そのまま受け入れてくれるか、多少は譲歩しなければならないか、それは交渉事ですからすべてが自社の都合通りに行くとは限りません。ただ、交渉が面倒だからとすぐに金融機関に譲歩するのだけは避けましょう。

実現可能性の高い経営改善計画書を提出したのに、金融機関が強硬に応じてくれないなら、例えば「金利引上げは半年待ってください、それまでにこの計画書通りに進捗しなければ金利引上げに応じますから」と抵抗してください。

4,メインバンクから先に相談する

取引金融機関が1行だけということは少数で、多くの中小企業では複数取引だと思います。全金融機関が強硬に反対することは珍しく、多くが同意すれば反対している金融機関も協調して応じるケースが多数です。

取引金融機関が複数ある場合、必ずメインバンクから相談してください。そうしないと必ず「メインのA銀行さんはどうおっしゃっていますか」と質問を受けます。最初にメインバンクからの支援を取り付けていることを説明すれば、通常は「メインさんと一緒に協力します」との回答が得られるでしょう。

一部の金融機関からいい返事がすぐにもらえないこともあるかもしれません。それでもメインバンクを中心に協力金融機関を増やすことで、最終的には協力を得られるかと思います。

だからこそまずはメインの金融機関から先に相談して、支援を取り付けてから残りの金融機関にもリスケ依頼をしましょう。