前回の運転資金に対応する融資から十分に間が空いていないにもかかわらず申し込まれると、金融機関からはあまりいい印象を持たれないでしょう。
そのため、「また融資が必要になったのですか、時期尚早ですね」などと言われるかもしれません。
いい印象を持たれない
融資を受けて2,3カ月程度しか経っていないのに、また「運転資金が必要となりました。お金を貸してください」と相談されると、金融機関は「資金繰り管理がまったくできていない企業だ」「前回の融資で当面の資金繰りが安定するはずだったのに、予想以上に悪化しているのではないか」と明らかにマイナスの印象を与えます。
したがって、しばらく様子を見たいとなるでしょう。明確な基準があるわけではありませんが、できれば1年、最低でも半年は空けたいところです。
では他行に申し込みをすればいいでしょうか。確かにそれならまた来たとは思われないでしょう。しかし、相談を受けた金融機関が審査をする中で、最近にも他行で融資を受けていたことが分かれば、なぜそんなに融資が必要なのか、他行から断られて自行に来たのかと問われることになります。
問題のないケース
どんなことにも例外はあります。次のような資金使途であれば、半年を経過していなくて問題はありません。
売上高が急増している場合(増加運転資金)
売上高が急増している企業は、仕入高や外注費、そして人件費などの諸経費が増加しますから、必要となる運転資金も増えていきます。例えば販路開拓に成功し、これまで以上に多くの製品を納品しなければならないとします。そのためには原材料を仕入れて製品を作り、そして納品します。しかし、売上代金が回収されるまでの間に、原材料の支払い、給与等の支払いが先に発生し、売上高が急増すれば、その支払いも今まで以上に増加します。
このような理由で資金需要が発生したのならば、売上先との契約書などの書類、そして試算表・資金繰り表を使って説明すれば、前向きに審査してもらえます。
設備資金の申し込み
金融機関が不安になるのは運転資金を年に何度も申し込んでくることです。しかし、設備資金であれば資金の使い道が違いますから、金融機関も相談に乗りやすいといえます。
9月に運転資金に対する融資を受け、11月に設備資金の相談をしても問題はありません。ただ、そのようなケースであれば、近いうちに設備資金でも相談したいと伝えておいた方がよりいいと思います。
つなぎ資金
つなぎ資金とは、例えば建設業を例にすれば、1つの工事案件に対して、材料費や外注費が発生、それらへの支払いが先行し、工事代金の回収は後になる場合、先行支払いから代金回収までの間をつなぐために発生する資金需要のことをいいます。
1工事案件ごとに融資が実行され短期で返済する性質の資金需要ですから、この場合はすぐに融資を申し込んでも問題はありません。
企業の対応策とメリット
このようにつなぎ資金、増加運転資金、設備資金であれば、前回の融資を受けたばかりであっても原則問題にはなりません。しかし、何度も運転資金で融資を申し込むのは、それだけ資金繰りが悪化しているのですから、将来の返済に懸念を持ちます。
資金繰り管理を強化
資金繰り表を作成しない中小企業が未だに多いのですが、これからの銀行融資においては必須の書類です。「難しそう」「苦手だから」と言い訳にしない方がいいです。お近くの専門家に作成方法を教えてもらってください。
今後6カ月~1年程度の資金繰り、しかもかなり精度の高い予測を行ってください。特に売上入金は保守的にします。6カ月から1年程度先までの資金繰り予想を保守的に行えば、希望融資額をいくらにすれば資金繰りが回るのかが明確になります。
そうすれば、融資を受けてすぐに再度申し込むようなことはなくなります。
企業にもメリット
このように資金繰り予想をしっかり行い融資を申し込むことで、金融機関に何度も融資をお願いする必要はなくなりますし、資金繰りの安定にもつながります。
さらに経営者は融資のたびに時間を取られずにすみます。金融機関からお願いされている立場なら手間や時間はかかりませんが、こちらからお願いする立場で、しかも前回の融資からそれほど時間も経っていなければ求められる書類は増えます。金融機関からの質問も増えるかもしれません。
経営者が余計なことに時間を取られてしまえば本業にも影響します。
まとめ
金融機関に年に何回も「資金が底を尽きそうなので融資をお願いします」と相談しているようでは、資金繰り管理が杜撰、そして相当の経営悪化が予想され、融資することに不安が生じします。
設備資金、増加運転資金、つなぎ資金など一部を除いて、自社の資金繰り予想をしっかり行い、6カ月~1円程度は資金繰りが回る融資額を計算してから、金融機関に融資を申し込んでください。