粉飾決算が一因となった倒産が増加

中小企業経営

東京商工リサーチが今日公表した2019年(1-10月)「粉飾決算」倒産調査によると、「コンプライアンス違反」倒産のうち、「粉飾決算」が一因となった倒産は16件(前年同期比8件)と、前年同期の2.0倍に増加したとのこと。

経営者の立場としては、赤字や債務超過だと金融機関は融資に消極的になる、融資が出たとしても条件は悪化するとデメリットが大きい、だから粉飾をするしかないと。

実際、粉飾決算をしている中小企業は多いです。

よくあるケースとして、

1、売上が増加する

2、売上増加に伴い固定費や借入金が増加する

3、そのうち売上の増加が落ち着いてくる

4、固定費や借入金が増えているため、赤字や返済が苦しくなる

5、資金調達が円滑に進むよう架空売上を計上させるなどの粉飾に手を出す

6、粉飾して資金調達ができても抜本的な経営改善をしないと資金流出が続く

7、さらに粉飾決算で資金調達を続ける

8、徐々に粉飾決算から抜け出せなくなる

9、金融機関も粉飾を疑うけど、今後の融資に影響するのを嫌がり見て見ぬふりをする

10、そのうち本当の返済能力では返済しきれない借入金残高になる

11、いずれ金融機関の融資がストップ

12、リスケジュールを相談し、そこで本当の決算書をさらけ出すことに

リスケジュールで半年から1年程度の元金据え置きをするけど、その後の見通しは立たず、経営改善計画書を作成しても実現可能性の極めて低い内容に。

粉飾決算の問題は経営者が現実から逃げてしまうことです。嫌なことや面倒なことは避けたいから粉飾することでとりあえず資金繰りが落ち着いてしまいます。だから経営改善をしません。それに雇用維持、取引先に迷惑をかけない、そのためには粉飾決算は必要悪と考えてしまうのです。

金融機関は法人融資の獲得に躍起となって、多少の問題はありそうでも目をつむって融資をしてしまう。

税理士も酷い人になると、粉飾はサービスの一つになっている方がいます。立場上、脱税はダメですけど、黒字になるのはいいだろうと。

でもこれって問題を先延ばしするだけで、結局は後で迷惑をかけることになるのは同じです。問題が発覚するのを繰り延べているだけ。

粉飾決算をこれからやろう、あるいはやってしまったばかりという経営者さんは、すぐに今後の経営をどうするべきか改善策について考えましょう。

金融機関にいきなり報告するのは勇気がいるかもしれません。それならコンサルタントなどの経営の専門家にまず相談して対策を考えてから伝えるといいです。

確かに今の経営状況が悪いと対応を変える金融機関は今でも存在します。しかし、企業の過去より現在そして未来がより重視される傾向により進みます。傷が浅いうちにぜひ対応してください。

そして、かなり大規模な粉飾をしているケースもあるでしょう。赤字から脱却できる見通しがまったく立たないのか、可能でも返済が大きな負担となるのか、企業によって再生の可能性は違いますし、再生手法も様々ですが、それでもまずは自社の現状を直視しましょう。

「このままではまずい方向に進んでしまう」と感じているのなら、経営者お1人で抱え込まないことです。