営業利益よりも経常利益

決算書 経理業務

損益計算書には上から売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益が計上されています。

利益はいくつもある

ではそれぞれの利益について簡単に説明します。

売上総利益

商品や製品等の販売、またはサービスを提供するという、企業の主たる営業活動から発生した利益です。粗利や粗利益ともいわれます。

小売りや卸売業なら売上高から商品の仕入代金を引いた分、製造業なら製品の製造原価を差し引いた利益です。したがって、これは絶対にプラスでなければなりません。しかし、製造業を営む企業が高額な機械などを購入した場合、減価償却方法は定率法を採用しているとしたら、初期に減価償却費が大きくなりますから、もしかしたら赤字になることがあるかもしれません。あるいは大規模な自然災害や経済危機によってはそれもあるでしょう。そのような例外を除いて、ここはプラスである必要があります。

もしここがマイナスであれば売上高の計上漏れがあるなど、経理処理に不備があるのかもしれません。そうでないとしたら商品を1万円で仕入れて5千円で販売しているようなものです。そもそも商売はしない方がいいでしょう。

営業利益

売上総利益から販管費(販売活動や社内の管理に必要な経費)を差し引いた利益です。販管費は売上及び製造原価と同じように事業を行っていれば必ず発生しますので、これも原則としては売上総利益と同様にプラスでなければなりません。

主たる事業を行ったことで得られる利益ですから非常に重要です。売上先の減少や、営業活動に伴い交際費や広告宣伝費等が増加し、赤字になることもあるでしょう。しかし、2期以上続かないよう早期の立て直しが必要です。

経常利益

経常利益は営業利益から営業外収益や営業外費用を加減したものです。営業外収益の例としては預金利息や配当金以外に、保険料の解約返戻金、補助金や助成金、それ以外にも本業ではないが定期的に入ってくる収入です。例えば、所有するアパートを貸し出すことで得られる家賃収入、そして自動販売機から得られる収入です。

営業外費用としては、借入金の利息や手形の割引料です。

「けいつね」と言うことも多いです。

税引前当期純利益

経常利益から臨時的に発生した特別利益や特別損失を加減算して計上される利益です。法人税等の税金を計算する利益になります。

特別利益の例として固定資産売却益、投資有価証券売却益などがあります。特別損失の例として固定資産売却損・除却損、投資有価証券売却損、火災や災害による損失、役員退職金などがあります。

当期純利益

税引前当期純利益から法人税等の税金を控除した後の最終利益です。法人税等とは国税の法人税や地方法人税、都道府県や市区町村の住民税および事業税をいいます。

営業利益と経常利益

どの利益も大切ですが、金融機関との付き合いについては、営業利益や経常利益が重要と聞いたことがあるかもしれません。以前は借入金の利息を引いた経常利益が重要と言われてきましたが、最近は財務分析の計算式でも営業利益を使って計算することが増えました。

ではどちらがより重要でしょうか。

営業利益よりも経常利益

税引前当期純利益や当期純利益は、通常の経営活動では発生しない利益や損失による影響を受けた利益になります。したがって、それらの影響を受ける前の経常利益あるいは営業利益が本来の収益力であり重要というわけです。

例えば、多額の経常利益を計上していたが、代表取締役が退任するため高額な退職金を特別損失に計上したため、最終利益が少額あるいはマイナスになったとしましょう。しかし、だからといってその企業の収益力に問題があるとはいえず、翌期にはまた多額の経常利益が発生し当期純利益もそれに応じたものとなるでしょう。したがって、経常利益が重視されます。

営業利益より経常利益を重視したほうがいいです。なぜなら、金融機関からの借入金に大きく依存している企業であれば、相応の利息支払いが発生しているからです。

中小企業の多くは自己資金だけでは足りず、金融機関からの融資に大きく依存しています。負債の部には多額の借入金が計上されていませんか。もしそうだとしたら借入金の利息は無視できません。

したがって、営業利益よりも支払利息を反映した経常利益を重視するべきなのです。

ただし、支払利息は毎月発生しますし、先ほどの例なら家賃収入や自販機収入も毎月発生します。しかし、補助金や助成金、保険の解約返戻金のようなものは違います。企業の収益力を見るならそれら偶発的な収入は除いた方がいいでしょう。

インタレスト・カバレッジ・レシオ

営業利益と支払利息のバランスを見る重要な財務指標として、インタレスト・カバレッジ・レシオがあります。

インタレスト・カバレッジ・レシオ=(営業利益+受取利息・配当金)/支払利息・割引料(倍)

事業利益(営業利益+受取利息・配当金)が金融費用(支払利息・配当金)の何倍あるかを示す指標です。経常利益が重要ですが、営業利益に偶発的な収入等が反映されている可能性があります。それなら計算式が有効です。

預金金利は若干上がってきましたがほぼ0%と考えれば、多くの中小企業では「営業利益/支払利息」と考えていいでしょう。

「営業利益=支払利息」の時は1倍ですから、経常利益をプラスにするためにはそれ以上でなければなりません。借入金返済を考えればよりその数字は大きい必要があります。

設備投資が頻繁にある企業は、分子は資金流出を伴わない減価償却費分を加えた計算式(営業利益+減価償却費+受取利息・配当金)を用いることも考えられます。

減価償却費の計上額が大きく、しかも定率法なら初期の償却額が大きくなるので、このような計算式を用いてもいいでしょう

まとめ

このように支払利息を差し引いた収益力を見るためにも、営業利益より経常利益を重要した方がいいでしょう。もし営業外収益に補助金や保険解約返戻金のような経常的には発生しない収入が含まれているのなら、それらを除いて経常利益がプラスかどうか、そこから借入金返済が可能かどうかをチェックするようにしましょう。