11月に入るといつも「冬の賞与はいくら出したらいいでしょうか」と質問してくる顧問先があります。来月に賞与を支給する企業もあるでしょうし、逆にコロナの影響で0円という企業もあるでしょう。そもそもコロナ関係なく賞与が出ない企業もあると思います。
今日訪問した顧問先はコロナの影響がなかったので例年通り支給できそうです。
一般的に経営陣は賞与がなく、従業員だけになっていると思います。
実際には税務署へ事前に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出していれば役員も賞与と同じように支給することはできます。しかし、役員は毎月定額での支給になっている企業が大半でしょう。これについては税務署や顧問税理士等に確認してください。
賞与資金を金融機関から調達
ところでこの賞与ですが、銀行融資においては賞与資金として融資の対象です。一般的には6月と12月のように年2回程度支給されますから、最大でも半年程度の返済期間とした短期融資になります。証書資金を調達するメリットは次のとおりです。
業績好調のアピール材料になる
基本的に賞与を支給するということは業績が良いからであり、悪ければ支給を見合わせる、あるいは大幅に減額となるでしょう。業績が悪くても従業員の離職を防止するために支給する企業もあるでしょうが。
現時点では業績悪化が続いていたとしても、今後の改善を見込んで支給することもあるでしょう。金融機関との融資取引において賞与支給は、業績好調をアピールできますからプラスに評価されると思います。
ただし、業績悪化が続いているのに例年通りの賞与額を支給したいとの申し込みには、あまりいい評価はしないでしょう。その場合は、賞与資金を名目に赤字補填資金を調達していると疑われることもあります。
資金繰りが安定する
資金繰りが安定する、このメリットは極めて大きいでしょう。
賞与ですから自己資金で支払うべきとの考えはあると思います。それに余計な利息支払いが発生します。しかし、賞与は一度に多額の資金が出ていきますから資金繰りは不安定になります。それに賞与支給のタイミングで十分な資金が確保されているとは限りません。
それを融資でまかなえば、返済は毎月均等返済になりますので、預金残高の大きな増減を均等にする効果があります。
支給してから「やっぱり資金繰りが苦しくなってきたな。今から相談しよう」では遅いので注意してください。
プロパー融資を受けやすい
銀行融資においては、保証協会付き融資とプロパー融資があります。
保証協会付き融資は信用保証協会が保証してくれるので、金融機関は回収不能リスクを大幅に回避することができます。
プロパー融資とは、信用保証協会の保証がない融資です。公的な保証がありませんから回収に不安が伴います。不動産等の担保があったとしても回収不能が発生しますし、仮に全額回収できたとしても手間と費用がかかります。
だから金融機関は保証協会付き融資を推進してきます。
しかし、企業としては業績悪化時等のいざという場合に備えて、信用保証協会を温存しておきたいですし、保証料がバカになりませんからプロパー融資を受けるべきなのです。
そんな時、賞与資金はプロパー融資を相談しやすい資金使途なのです。なぜなら、返済期間が半年程度ですし、賞与を支給するだけの業績ですから、短期間に倒産するリスクは少ないでしょうから、金融機関もプロパー融資の相談を受けやすいのです。
特にこれまでプロパー融資での資金調達経験がない企業は、賞与資金(あと納税資金)でチャレンジしてみましょう。資金繰りには困っていない企業でも、メインバンクとはプロパー融資でもっと付き合っていきたいのなら、賞与資金を理由に相談してもいいでしょう。
一度でもプロパー融資の実績ができると信用力が付きますから、より有利な条件でプロパー融資が受けやすくなります。それに他行がプロパー融資を提案してくることが期待できます。
原則は給与振り込みをしている金融機関
賞与資金を申し込むときは、各従業員にそれぞれいくら支給するのかを書類で説明しましょう。過去の実績も提出すると申込金額の妥当性に役立ちます。
申し込みは原則として給与振り込みをしている金融機関になります。多くはメインバンクになるでしょう。
冬の賞与が支給される12月は資金需要が発生し、多くの中小企業が融資を申し込む月です。利益は出て順調だけど資金繰りが不安定というのなら、賞与資金を調達することも検討してください。