在庫が多い企業

在庫確認 資金繰り

貸借対照表の資産の部には、商品、製品、原材料等の棚卸資産、いわゆる在庫が計上されています。

過大な在庫を持つ企業

在庫はできるだけ多く保有した方が顧客の要望に応えることができるため、それを自社の強みとしていることがあります。種類が豊富なら「あそこに行けばなんでも揃っている」と認知してもらえますし、数に余裕を持たせておけば販売の機会損失を防止できます。

売上を増加させたい経営者であれば、過大な在庫を保有したいと考えるのは当然です。

在庫を増やすと資金繰りは苦しい

販売機会を失いたくないため、在庫を多めにそして品揃えを豊富にしたいのはとてもよく理解できます。しかし、在庫は現預金が変化したものですから、多いほど資金繰りを苦しくさせるのです。

在庫を保有しても早期に販売できるものならいいのですが、売れるか分からないものを取り扱うのは要注意です。

また、多めに在庫を持つということは売れ残ってしまうリスクがあります。陳腐化や紛失により資金が回収できない可能性があります。

在庫を持つということは、売上のために必要ではありますが、資金繰り上はマイナスだということは忘れないでください。

金融機関はマイナスに見る

金融機関は在庫が多くなると次のように考えます。

過大な在庫を抱えてしまった

夏の需要増加に備えてビールやジュースを大量に仕入れ、一時的に在庫が急増することはあります。そのような過大な在庫については問題ないでしょう

しかし、過大な在庫のほとんどは、仕入れたもしくは製造した時に見込んでいた売上が立たずに残ったものです。

在庫は売れない期間が長期化すれば陳腐化していきますから、いつか正常な価格で売れるということはまずありません。

そのため、販売できずに陳腐化する在庫は早めに処分しなければなりません。少しでも現金回収できるうちに販売した方がいいですし、倉庫代や管理費等も発生し続けるからです。

安い価格で販売するか、廃棄処理するしかありませんが、仕入金額よりも低い価格になりますから、それは赤字として表面化することになります。

そう聞くと、「低価格販売や廃棄処理なんかせず、そのままにしておいた方がいいのでは?」との心配を持たれるかもしれません。そこで在庫処分に対する金融機関対策として次のようにしましょう。

在庫処分による損失は特別損失に計上

特別損失とは、臨時的に発生した損失のことです。例えば、社内の現金や商品が盗まれた、火災で倉庫が焼失してしまった、こういうのは毎年発生するものではありませんから、営業利益や経常利益に影響しないよう、その下の特別損失に計上するのです。

在庫処分もその期だけの特別に発生したものがあるのでしたら、顧問税理士と相談し特別損失に計上しましょう。

そうすれば、金融機関が重視する営業利益・経常利益を悪化させずに済みます。

あらかじめ金融機関に説明

企業の財務を正常化するためなら、金融機関は在庫処分について前向きであると考えられます。

金融機関は貸借対照表の資産の中に、資産価値のないものがあればそれを減額して評価しています。したがって、不良在庫を処分することは、企業の財務体質が改善されるため前向きな評価をします。

ただ、念のため決算書が完成する前に説明しておきましょう。というのも、それによって赤字や自己資本が減少することをよく思わない担当者もいるからです。

粉飾決算の影響では?

粉飾決算の代表的な方法として在庫の水増しがあります。これはよく行われる方法なので、金融機関は在庫の金額が大きければ粉飾を疑いますから、正当な理由があるのであれば、説明した方がいいでしょう。

以前ご相談を受けた先で宗教関連の商品を扱っている企業がありました。在庫を見るとかなり過大な水準です。

そのことを申し上げると、金融機関からも必ず言われるとのことでした。流行とかは特にないし、製造できる企業が少ないため、一度にまとめて発注するということでした。

このように理由を説明し、できれば在庫を見てもらうと金融機関の疑いは晴れます。

定期的に在庫確認を

商品を仕入れ、材料を仕入れて製造する業種では、決算書には商品、製品、材料等の在庫が計上されているはずですし、決算書の後ろにある明細書にはそれらの内訳(期末時点での数量、単価、合計)が記入されています。

そこに計上されている在庫は、期末時点にちゃんと確認したものでしょうか。

実際のところは、経理社員や税理士事務所から期末時点での在庫残高を求められ、経営者が「だいたい〇〇〇万円位かな」という感じで計上している企業が多いのでは。

私が税理士事務所に勤めていた時の顧問先はほとんどそんな感じでしたし、今はコンサルタントとしていろいろな税理士が作成された決算書を拝見しますが、やはりそのように作成されていることが多いです。

お金を払って仕入れている在庫ですから大切なものです。それなのに在庫管理がしっかりできていない中小企業が本当に多いと思います。

棚卸作業は時間と労力がかかりますから大変だとは思います。しかし、正確な利益計算、資金繰りのためにも、定期的に行ってください。どうしても無理だとしても、せめて年に1回、決算時にはやるようにしましょう。