決算書を金融機関へ提出する理由と目的

決算書 銀行融資

決算書は企業にとって1年間の経営成績が書かれた成績表のようなものであって、税務申告、銀行融資、自社の財務分析・経営改善等にとって大切な財務書類です。金融機関から融資を受ける際、必ず必要になる書類は決算書です。

融資を受ける際、決算書の提出が必要なことは経営者さんならご存知でしょう。そして、融資実行後も融資取引が継続している間、金融機関は決算書の提出を求めてきます。

誰でも知っていることだし、融資を受けたい企業経営者は、積極的に決算書を提出するでしょう。

では融資を受けた後、金融機関に決算書を提出し続けなければならないのでしょうか。

金融機関が決算書を求める理由

経営者の中には決算書の提出を嫌がる方がいます。あまり決算内容が良くないとか、過去に融資を否決された嫌な経験があると、提出したくないかもしれません。しかし、企業が金融機関と初めて融資取引する際、銀行取引約定書(信用金庫なら信用金庫取引約定書)という書類に署名捺印されたかと思います。その中にある「報告および調査」という項目には次のような内容が書かれているはずです。

「甲(企業)は、貸借対照表、損益計算書等の甲の財務状況を示す書類の写しを、定期的に乙(銀行)に提出するものとします」

金融機関が決算書の提出を求めるのには理由があります。

経営状態の確認

金融機関が決算書の提出を求めるのは、融資後の業績を確認する事が一番の目的です。融資した資金を使って企業が成長しているか、経営改善がなされているかを確認するためです。貸した資金をちゃんと返済してくれるか、完済されるまで管理したいのは当然のことでしょう。

融資の提案

決算書を求めるのは管理面だけではありません。新たな融資を提案できないか、営業の面でも決算書は欲しいのです。売上が増加していれば運転資金が必要ではないか、固定資産の減価償却が進んでいれば設備購入を検討する段階にないかも提案できるでしょう。

逆に決算内容が悪化していれば、返済額を軽減する、または経営改善でお手伝いできないか、を検討することもできます。

企業側のメリット

決算書を毎年提出し続ければ、金融機関は企業の最新情報を把握できているので、いざ融資を申し込む時にも短時間で審査が進みますから、そういう意味でもメリットがあります。それに提案を受けやすくなるのです。

決算書の提出を拒むということは、金融機関担当者からすれば、決算内容が悪くて見せられる状態ではない、困った時だけ来て良好な関係を築こうとしない企業、とマイナスイメージにも捉えられることもあるでしょう。

中小企業の資金繰り支援に熱心な金融機関であれば、決算書だけですべてが決まるわけではないので、あまり恐れずに提出してください。

すべて開示した方がいい

決算書の継続的な提出は金融機関からのお願いであって、拒んだからといって融資全額を返済しなければならないことはありませんが、そのような融資先をとても嫌がります。

お互いの信頼関係のため

金融機関としては融資先の最新の業績を把握したいですし、決算書を提出しないと情報開示に消極的だと見做し信頼関係を築けないと思うからです。

それに金融機関は中小企業に厳しいイメージがあるかもしれませんが、これからも融資の実行や、融資が無理でも返済条件の変更等いろいろ協力して、長い付き合いをしたいと基本的には思っています。

もし今後、資金調達が必要になって決算書を持って行ったとしても、「また融資実行後は決算書の提出を拒むのだろう」「情報開示に消極的だろう」と銀行員は考えるでしょう。よほど財務内容が良好ならそれでも融資はするでしょうが、そうでないならあまり積極的にはならないのが銀行員の本音です。

また、このような企業の対応は記録に残して引き継がれてしまい、将来の資金調達の可能性を小さくする原因にもなります。

どの範囲まで提出する?

ではどこまで提出すればいいかというと、金融機関と良好なお付き合いをしたいのであればすべて提出する事をお勧めします。

決算書といっても、貸借対照表、損益計算書、販売管理費、(製造業等の場合)製造原価報告書、株主利益計算書、勘定科目明細書がありますがそれらすべてです。法人税等の申告書も一緒になっているでしょうから、法人税を計算する別表という書類もありますがそれも提出しましょう。

何か理由を付けて出し渋っていると、「隠したい理由があるのだろう」と間違いなく疑われます。経営課題のない企業は存在しませんから、だったら隠したい事があったとしても、言われる前に堂々と提出してその際に報告したほうがいいです。

そして、その隠したい経営課題についてこれからどう解決していくのかを説明し、これから進捗状況を定期的に報告していくのです。そのような説明を熱心に聞く金融機関もあれば、決算書の内容だけで距離を置こうとする金融機関もあるでしょう。だからこそ普段から複数行と取引をして、前向きなところと深く付き合っていきましょう。

融資の審査を行う場合は、その時点での決算書を使って審査を行いますから、その後の決算内容が悪化したからといって、繰り上げて返済を求めるということはありません。期限の利益といって、約定通りの返済を行っている場合は、借入期限までに返済をすればいい、融資を受け続ける権利が企業にはあるのです。

今は資金繰りに余裕があるとしても、中小企業の経営環境は数年で大きく変化するものです。ぜひ自社の将来の資金繰りのためにも決算書は積極的に提出するようにして下さい。

決算内容は簡単にでも説明

決算書を提出する際にはぜひ内容を説明しましょう。

年1回の決算説明は、金融機関と会って自社の経営結果の報告、そして反省点から今後の経営について説明する良い機会です。

過去との比較から大きく変動した勘定科目、売上や利益及び利益率の変化、他にも特殊要因もあれば伝えるようにします。

特に赤字ならその理由を説明したいところですし、黒字であっても反省点や課題が出てくるでしょうから、それらに加えてと今後の改善策とその見通しをできるだけ詳しく伝えてください。

また、できることなら次の決算までの資金繰り見通しを立て、いつごろ融資を受ける必要があるのかも資金繰り表で説明してください。そうすれば早めに資金調達に動けますし、担当者も提案をしてくれます。

まとめ

今は借りる立場が結構強いですから、無理に決算書を提出しなくても、困った時だけ相談に行っても、融資を受けることはできるでしょう。しかし、先ほどのように短時間で審査を進めて資金調達したり、金融機関から積極的な支援を受けようと考えると、やはり定期的に提出して簡単でも決算説明するようなお付き合いをしてください。