役員報酬と交際費が多いとの指摘

銀行融資

業績にこれといって問題がなく、かつ遅れず返済しているのなら、金融機関が経費の使い方に口を出すことはありません。

しかし、経営が順調でない場合、金額の多い経費について口を出してくることがあります。特に問題となる経費として指摘されやすいのは役員報酬と交際費でしょう。

当社顧問先も最近、経営改善が遅れていることが理由でこの2つの経費削減を求められました。

役員報酬

損益計算書には役員報酬の総額、そして勘定科目内訳明細書の役員報酬欄には各役員の報酬額が記載されています。

それを見てあまりにも高額な役員報酬が計上されていれば、「少し高くないですか、減額を考えてみませんか」と言ってくることがあります。

黒字ではあるが少額の場合

黒字ではあるものの少額であることから、借入金を返済するだけのキャッシュフローを稼いでいるとはいえない場合、高額な役員報酬を見直すよう提案してくることがあります。

高額な役員報酬がダメと否定的に言っているのではなく、見直せば返済能力が改善されるため、企業は借りやすく、金融機関は貸しやすく、お互いにメリットがあるので提案しているのです。

赤字のとき

赤字になったからといって直ちに役員報酬を見直せと言ってくることはありませんが、高額な役員報酬を受け取りながら2期以上赤字が継続されている、あるいは赤字額が大きい場合、見直すべきと金融機関は言ってくるでしょう。

今後の資金調達を考えれば、その提案は受け入れて減額するべきでしょう。

リスケジュールを考えている、もしくはすでにしている

リスケジュールは金融機関に返済を減額もしくは猶予してもらうことです。当初の約束通りに返済できないにもかかわらず、経営者が高額な役員報酬を受け取っていれば、金融機関としては「協力しているのだから、社長も減額して少しは努力しろよ」と不満に思います。

したがって、企業からリスケジュールの依頼があった時、金融機関は役員報酬の減額を条件にしてくることがあります。

すでにリスケジュール中にもかかわらず、経営改善が進まず当初の返済計画に影響が出ているのなら、役員報酬の削減を強く要求してきます。そうなれば受け入れざるを得ません。

直ちに引き下げができないことも

役員報酬を減額すれば、社会保険料、源泉所得税そして住民税の負担も軽減されますから経営者にもある程度のメリットはあります。

赤字やリスケジュール中なら、今後のことを考え金融機関の意見を受け入れ見直しをすべきでしょう。

しかし、役員報酬額の変更には注意が必要です。

役員報酬が変更できるタイミングは、原則として事業年度開始から3カ月以内です。それ以降に正当な理由もなく変更することは法人税で制限されています。差額が損金算入できないから増減させることはできない、と税理士等から聞いたことがあるでしょう。

しかし、経営の状況が著しく悪化した場合には減額が認められます。

① 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役 員給与の額を減額せざるを得ない場合

② 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合

③ 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維 持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給 与の額の減額が盛り込まれた場合

国税庁ホームページ「役員給与に関するQ&A」より

金融機関にリスケジュールを認めてもらうために、役員報酬を減額することは問題ないと考えられます。単なる利益調整のために役員報酬額を変更することは認められませんから注意してください。詳しくは税務署または顧問税理士に相談してください、

交際費

役員報酬以外で指摘してくるとしたら交際費でしょう。取引先とのお付き合いを深めるためには、飲食やプレゼント等でお金を使うことも必要です。

特に中小企業は、同業他社と比較してブランド力や技術力等で差別化できるものがないことが多く、どうしても相手企業との関係を維持するために交際費が必要になることが多いでしょう。

交際費は無駄が多いように見える

交際費を使うことで仕事をいただき、売上を獲得することが目的なわけですが、売上に結びつかない、あるいは売上に結びついても必要以上に使っていることもあると思います。経営者の個人的な支出を交際費として処理している企業もあります。もしそのような支出があるのなら改めるべきです。

交際費が多い企業は、「個人的なものでは?」「そんなに頻繁に行かなくても」「社長も楽しみたいだけでは?」と疑いたくなるものが多いですね。

金融機関から見てもそうです。外部から見れば交際費は無駄なものが多いように感じるのです。多額の交際費が計上されていると削減できる余地があるのではと考えます。しかし、経営者からすれば広告宣伝費と一緒で営業の武器だと反論するでしょう。

役員報酬と一緒で、経営に大きな問題がなければ指摘されることはありません。しかし、赤字が続いている、リスケジュール中となれば、金融機関としても経費の使い方に口をだすことが考えられますから、交際費を使う必要性を説明する必要があります。

交際費の効果と削減努力を伝える

金融機関担当者:「交際費が多いようですが、こんなに必要なのでしょうか。少しは削減できませんか」

経営者:「そうですね。景気が悪いですから交際費を使わないと仕事がもらえないので」

というよりも、もっと具体的に効果があったことを示したほうがいいです。

経営者:「6月はA社との取引開始が見込めたため、接待のために交際費が増えました。そのおかげで今後は毎月500万円程度の売上が見込めます」

効果がなかったとしても、例えば削減努力を伝えることでもいいでしょう。

例えば、当社顧問先にケースなのですが、超大手企業から仕事をいただいており、関係を維持するために時々接待をしています。最近増えてきた交際費について、メインの信用金庫から指摘を受けました。

そこでまずどれだけの利益獲得に貢献したかを説明、それに加えて少しでも金額を減らすために、午後訪問すると夜の高額な接待となるため、午前中に訪問し昼食を一緒にすることで金額を抑える削減努力を伝えました。

金融機関も交際費が営業活動で必要なのは理解していますから、効果的に使っているのか、少しでも削減努力をしているいのかを説明できるようにしましょう。

まとめ

経営者個人へ資金が流れる役員報酬、あるいは無駄に支出されやすい交際費については、過去と比較して増加している、あるいはそもそも多い場合、金融機関から削減の提案を受けることがあります。

特にリスケジュールをしてもらう立場では、金融機関は返済面で協力するのですから、経営者自身にも相応の努力を求めてきます。それができなければ、支援継続にも影響が出る可能性がありますから注意してください。