売上代金の振込口座としての利用を求める

銀行融資

取引金融機関の担当者から、「売上代金の振込口座として、当行を利用してくれませんか」と言われた事がないでしょうか。

売上先に請求書を発行する際、振り込んで欲しい口座を書きますが、そこに「自行の口座を記載してください」と言ってくるのです。

売上先には今までA銀行の口座を指定してきたのに、B銀行の口座に変更してくれるよう依頼することになります。売上先と親しい関係であれば容易に変更してもらえるでしょうが、事務手続きや振込手数料の関係から簡単にはいかない売上先もあるでしょう。大手企業が相手なら○○銀行(メガバンク)と指定してくることもあります。

もちろん、そこは銀行も承知しています。すべてとはいかないまでも、できるだけ当行の口座を指定して欲しいのです。請求書に口座を1つしか書かない、または複数の口座を記載するなら一番上に書いてもらいたいのです。

振込口座指定の狙い

自行の預金口座を指定してもらえれば、それだけ預金残高が増えることになります。少しでも多くの売上先から振り込んでもらえる口座になれば、(支払口座は別ということもあるでしょうが)通常は仕入や外注、あるいは給与の振り込みもそこから行ってもらえるようになりますので、銀行は振込手数料収入が得られます。それ以外にも次の理由があります。

保全強化

今後返済ができなくなった場合、金融機関は融資と預金を相殺することができます。したがって、売上代金の振り込み口座に指定してもらうことで、預金口座に日頃から多くの預金がある状態を作っておきたいのです。

採算性のため

常に預金口座にはある程度の残高を置くようになることで、金融機関の採算性が改善されます。例えば、融資残高が5,000万円で金利2%であるなら、金融機関の年間利息収入は100万円です。

もし売上代金が振り込まれるようになり、預金残高(預金金利0%)が常に3,000万円あるとしましょう。すると、実質の融資額2,000万円で100万円を稼ぐことになります。したがって、実質的な金利は5%となります。

資金の動きを管理

振込口座として指定させることで、資金の動きが把握しやすいといえます。預金口座の動きや残高の推移から、大雑把ながら業績面そして資金繰りが把握しやすくなります。

銀行側からすると振込口座に指定してもらうことで、融資先企業の債権管理がしやすくなります。常にある程度の預金残高を維持するようになりますので、融資の審査面でもプラスに評価しやすくなり、それは企業側にもメリットのあることなのです。

1行に指定する必要はない

しかし、企業側からすれば、担保には取られていないものの、いざとなれば銀行は預金を抑えてくるだろうとの不安があります。

それにそもそも1行に集中させて資金繰りが丸裸にされるのは、やはり抵抗があるという経営者が多いでしょう。

取引先に口座変更を依頼すると、今までの銀行と関係が悪化したのだろうか、と考えるかもしれません。それによって、取引先から警戒される事になったりしないだろうか、と不安になる経営者もいるかもしれませんが、そこまで気にする必要はないでしょう。

融資取引のことを考えると、多少はメインの銀行の依頼にも応じておいたほうがいいです。ただ、すべてを1行に集中させる必要はありません。何があってもいいように、複数の銀行とうまく付き合っていきましょう。