政治家への融資口利き依頼

銀行融資

中小企業の資金繰りに関するコンサルタントとして働いていると、政治家(またはそれ以外の有力者)への口利き依頼というのは時々聞く話です。

政治家と付き合いがあることを自慢したい社長っているみたいで、私のお客様ではないのですが高崎市で会った社長は「いつも○○○(ほとんどの人が知っている名前)に言えば、いくらでも私は借りられるんですよ」と言っていました。

口利き効果はある

20年ほど前のことです。まだリスケジュール(返済条件等の変更。以下、リスケ)が今よりも難しい時代に、顧問先とリスケの依頼をしに政府系金融機関に行きました。向かっている途中でその顧問先が政治家にも相談したと言ってきました。

リスケの依頼に行ってもいろいろ書類を提出する必要があるだろうし、その金融機関内でも審査があるから少し時間がかかるだろうと思っていました。

しかし、金融機関に着いてすぐに担当者から「都議会議員の○○先生から聞いております。この書類に記入して会社の実印を押してください」と言われました。言われたとおりにしたところ、「ではこれで元金返済をストップしておきます。今日はご苦労様でした。」と2,3分で終わり、口利きの影響力って本当にあるんだなと初めて経験した時でした。

またこれは昨年のことですが、ある政治家のパーティーに出席した時に聞いた話です。

名刺交換をした経営者さんは創業したばかりの頃、金融機関がなかなか貸してくれなかったそうで、かなり資金繰りに苦しんでいたそうです。そこで○○先生に相談したところ、すぐに借り入れをすることができたと言っていました。しかし、その後が大変だそうで、「政治活動の応援を求められるし、毎月顧問料を支払うはめになるし、資金繰りが苦しかったとはいえ頼まなきゃよかった。」と後悔していました。

数年前までお手伝いしていた顧問先は、近くの政府系金融機関へ相談に行きました。希望金額は1,000万円です。すると窓口の職員から「申し込むのは自由だけど、融資は絶対に出ませんよ」と一度は言われたものの、ある方にお願いし一緒に行ったところすぐに「1,000万円は無理ですが500万円でいかがでしょうか」と言われたのです。

最近でも政治家による口利きが報道されその議員が逮捕されましたね。

これら以外にも同様の話を何度も聞きましたし、実際簡単に借入やリスケができた現場にいたことも何度かあります。

口利き依頼はしない

政治家(あるいは秘書)に働きかけ、借入ができたら高い報酬を要求する業者と会ったこともあります。中小企業に政治家を紹介するビジネスをしている人で、政治家を接待する経費として約15万円、融資が実行されたら実行額の10%を支払ってもらうと言っていました。だいたいどこも報酬は融資額の10%程度のようです。

15万円+借入額の10%が上乗せされるのですから、金利にしたらとても高くなるのは明らかです。経営が悪化し資金の流出が続いているのなら、調達できた資金で一時的に落ち着くとしても、それだけではすぐに資金繰りは悪化します。

経営をどうにか立て直す必要がありますし、金融機関にはリスケの相談をするべきといえます。

今は昔と違い口利きを依頼したからといって簡単に要望が通ることは難しいのかもしれませんが、あまりそういうことを依頼するべきではないと思いますし、少なくとも政治家との間を取り持つ業者に高い手数料を払うことだけは絶対にやめましょう。

それに、金融機関の行職員からはあまり良い印象を持たれません。そのような融資案件は何らかの問題点がある場合が多く、警戒して慎重に対応する必要があることを知っています。