建設業なら工事を受注したものの、工事代金は完了後に一括、あるいは工事進捗に合わせて3回程度の分割で受け取ることは多いでしょう。
建設会社が工事代金を受け取るまでに立て替える金額、特に材料費や人件費は大きな負担となります。
したがって、先行して発生する材料費や人件費、その他経費に必要な資金を支援してもらい、完成後の代金回収で返済する約束で金融機関から融資を受けなければなりません。
このように入金確実な資金はあるが、その入金以前に資金が必要となった場合(支払の先行)、この回収資金を引き当てに調達される資金をつなぎ資金といいます。そんな融資を紐付き融資といったりもします。
建設業を例に出しましたが、他の業種でもこのような融資はよくあります。
通常なら完成後に代金を回収し返済できるはずです。しかし、それができなくなってしまことがあります。
まず考えらえるのは工事が遅れていることです。工事の進捗が遅れていることから回収できないことは考えられるでしょう。
これは金融機関もやむを得ないと考えます。遅れることが確実になった時点で金融機関にはすぐ伝えるべきです。何か大きなトラブルが発生して遅れているのではなく、ただ単純に遅れているだけなら返済期日を延長する手続きをしてくれます。
もう一つ、回収した代金を他に使ってしまった場合です。これは大問題です。
別の借入金返済や納税等の支払いに使ってしまった、または他工事で発生した材料・人件費支払いに充ててしまった、資金繰りが苦しい建設会社だと時々あることです。
しかし、金融機関からすれば約束を守ってくれず裏切られたわけです。それに建設業ですから金額も大きいでしょう。
「分かりました。仕方がないですね」なんて対応はしてくれず、返済を求めてくるでしょうし、今後の融資は期待できないでしょう。両者の関係は極めて悪化します。
返済原資となる資金に手を付けないよう、金融機関には必ず相談することです。金融機関を裏切る前でしたらまだ支援策が残っているかもしれませんが、手を付けてしまってから、「返済ができません。どうしたらいいでしょうか」では、金融機関も支援することはできません。
建設業ではないのですが、同じような相談を受けたことがあります。
当社を設立した頃、ある酒造会社さんから相談を受けました。
メインバンクから原料となるお米を仕入れる等の目的で資金を借りて、日本酒を販売した代金で返済するという約束だったのだけれど、資金繰りが苦しくいろいろな支払いや他の返済に充ててしまい、返済原資がなくなってしまいました。メインバンクからは「もう二度と融資をしない」と怒鳴られてしまったがどうしたらいいだろうか、という内容でした。
そのケースでは、政府系金融機関が支援を申し出てくれたおかげで何とかなりました。ただ当然、そこまで悪化した経営をどう立て直すのか、経営改善計画書の提出を求められました。
自社の経営がうまく行っていないと、金融機関には相談したくないでしょうし、隠してしまいたくなるかもしれませんが、だからこそ余計に後で大きな問題になるのです。
建設業界といっても幅広いですが、扱う金額が大きい工事が中心でしたら、多額の資金調達ができないと困ります。新規融資が出ないからと、リスケジュールしてもらってもまとまった資金は調達できませんから。
だからこそ、金融機関との良好な関係を絶対維持するようにしてください。