金融機関が注意する融資先の変化

銀行融資

金融機関は日々の訪問や面談を通して、融資先企業の変化を注視しています。

財務面の注意点

決算書や試算表、あるいは資金繰り表を見て金融機関が特に注意するのは次の点です。

売上や利益の減少

売上や利益が減少したからといって直ちに問題とはなりませんが、2期以上にわたって減少傾向が続いていれば、どのように企業が対応するのかに関心を持ちます。

減少が続き赤字に陥れば早急な対応が求められます。

自己資本比率の低下

自己資本とは貸借対照表の右下にある純資産の部のことをいいます。ここには資本金やこれまで獲得した利益が蓄積される場所になります。

自己資本比率とは総資産に占める自己資本(純資産)の割合です。

これが低下してきたということは、増資や利益計上ができず、借入金に資金調達を依存していることになります。

現預金の減少

赤字決算が続いていたとしても手持ちの現金預金が潤沢であれば、直ちに事業がストップする懸念は低いですし、借入金返済が滞るリスクも少ないでしょう。

しかし、いくら損益計算書には利益が計上されていようが、現金預金が少額であれば資金ショートを起こすリスクは高いです。

したがって、現金預金残高が減少を続けているのは不安になるのです。

営業キャッシュフローがマイナス

営業キャッシュフローは設備投資や借入金返済の原資となりますから、原則はプラスでなければなりません。単年でマイナスになってしまうことはあるでしょうが、続くようであれば経営を継続させることは厳しくなってきます。

財務面以外の注意点

金融機関は決算書等の数字面だけをチェックするのではありません。訪問時も取引先に何らかの変化がないかに目を光らせています。

経理・財務を担当するベテラン社員が突然退職した

経理・財務を担当する社員、特に経理部長等の責任者が突然退職した理由としては、すでに資金繰りが持たず自社の将来がないことを悟った、会社のお金を横領する等の不正行為をしていた、粉飾決算を経営者から強制された等が考えられます。病気等のやむを得ない事情での退職もあるでしょうが、そうでなければかなり危険な経営状態になっています。

従業員の退職が増加

従業員の出入りが激しい企業は、パワハラ等の雇用上の問題が常態化している、過酷な労働を強いられていると考えられます。それでは経営が安定せず、今後の成長は見込めないと金融機関は考えます。

業界内でのうわさ

うわさなんて信じてはいけないと言う方もいるでしょうが、やはり火のない所に煙は立たぬと考えてよさそうです。少なくとも私の経験では。業界内でのうわさはかなり正確です。

経営者の行動・態度に変化が

経営悪化は財務面を見なくても経営者で分かることも多いです。最近、体調が悪そうだ、いつも落ち込んでいる、怒りやすくイライラすることが多い、身だしなみに気を使わなくなった等の変化が起きやすくなります。

社内の雰囲気が変わった

これまでは活気があったし、社内の人たちの雰囲気も良かったのに、最近は応接態度が良くない、雰囲気が暗いことが多い、そんな場合には、何か経営に問題が発生している可能性があります。それに加えて、社内の整理整頓や清掃ができていない企業は、業績が悪いケースが多いと思います。

自社の取引先に変化はありませんか

できの悪い金融機関担当者なら自身のノルマのことで頭がいっぱいでしょうが、できる担当者はこういう所まで見ていると思っていたほうがいいですから注意しましょう。といっても担当者が来た時だけ丁寧に対応しても経営的には意味がないので、従業員の働きやすい環境を整備する等の経営改善を行ってください。

これらは金融機関が企業を見る場合にチェックするポイントではありますが、私たち企業経営者も同じです。取引先に訪問したら、このようなことが発生していないか注意深く見る必要があるのです。

営業や打ち合わせで取引先を訪問したら、何らかの変化がないかをチェックしましょう。そういうことの積み重ねが売掛金の回収不能を防ぐことにつながりますから。

コロナの影響からZoom等で取引先と打ち合わせすることも多いでしょうが、できれば訪問したほうが変化を感じ取りやすいと思います。