決算書を拝見すると連続赤字、借入過多、債務超過と、銀行員が研修で学ぶ理想的な決算書とは程遠い財務内容になっている中小企業が珍しくありません。特に債務超過は全ての資産を現金化しても負債を返済・支払いができないことになります。それでは、銀行も新規の融資を出しにくいですし、リスケジュールでの支援にとどまるケースがとても多いでしょう。
ただ、そのような状態にあっても、事業を継続している中小企業はたくさんあります。
財務分析の上では、もう事業継続が難しいのではと思われる企業であっても、他社よりも特に優れた技術や特許があるわけではないし、競合他社と比較してもどこか飛び抜けて優れた商品を取り扱っているわけでもない、どんどん同業者は減少しているのになぜか生き残っているという中小企業、これが実に多いのです。
そういう生き残っている中小企業は、決算書では分からないけど生き残るために必要なものが何かあるのです。それは特殊なことではあるとは限りません。
決算書だけで中小企業を評価する事に限界があるのを行員は知っていますから、中小企業支援に熱心は金融機関は、財務分析では分からない取引先の強みや特徴を把握しようとしています。
中小企業も、決算書だけで自社を評価されないようにするには、どこが顧客に評価されているのか、強み特徴を見極め、それを銀行にも理解してもらう必要があるのです。
しかし、「自社の強みや特徴というけど、うちにはそんなのあるかな?」と考えこんでしまう中小企業経営者が多いかもしれません。
強みや特徴といった企業の良いところを見つけるためにも、金融機関は企業にしっかり向き合って社長との面談を行う、事務所や工場を訪問する等の必要があります。企業も金融機関に協力して定期的に自社の経営について報告・説明する必要がありますし、金融機関には自社に訪問してもらい社内を見てもらうことが基本です。
金融庁から公表されている「知ってナットク!事例集」という小冊子があります。金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]に書かれた事例を分かりやすく解説してあります。本来は金融検査マニュアルが公表されてから、貸し剥がしが横行したため、経営者にも金融検査について知ってもらう目的で作成されました。
しかし、ここに書かれた内容というのは、中小企業の事業性を理解するための着眼点がよくまとめられているのです。金融機関が中小企業の事業内容を評価・理解するためのヒントが書かれています。これは金融機関の行員だけではなく、中小企業の経営者も参考にすべき内容です。
この事例の中に自社に当てはまる、あるいは近いものがないか確認してみましょう。金融機関が決算書の赤字や債務超過等の問題点だけで自社を評価してきた場合は、事例集を参考にしながら、自社の経営に問題はない、あるいは経営問題は抱えてはいるが、事業に将来性があり、問題のない融資先と評価してもらえる方法はないかの参考にしてください。