現預金には余裕を持たせる

資金繰り

お金を借りるという行為は、返済できなければすべてを失うといったマイナスのイメージを持たれる方が多いためか、無借金経営を目標にされる経営者がいます。

しかし、無借金経営が本当にいいとはいえません。重要なのは経営を継続させることです。どんなに売上が増加し利益が出たとしても、資金がなくなれば継続はできませんし、倒産までには至らなくとも取引先や従業員への支払いが滞れば、信用不安により取引解消や退職が発生し経営にダメージを与えます。したがって、資金繰りに余裕を持たせることが重要です。

現預金は月商の3カ月分以上を目標

資金繰りでまず気を付けるのは現預金残高です。3カ月分と書きましたが、そもそも1カ月分にも満たない企業が結構あります。

もし自社がそのような残高水準であるとしたら、少なくとも1カ月分を確保するようにしましょう。そうすれば、売上入金が少し遅れるといったアクシデントが発生しても対応できます。

ただ、中小企業は売上先が1社減っただけでも業績が大きく悪化しますから、目標としてはぜひ3カ月分以上は確保して欲しいです。

そのためにも金融機関からの融資を受けましょう。3カ月程度と余裕があれば、今後の資金繰り計画に多少の狂いが生じても直ちに様々な対応策を講じることができます。それに、資金繰りにゆとりがあれば、金融機関は安心して融資がしやすくなります。

現預金残高にゆとりを持たせるために、金融機関からの融資に頼ることは決して悪いことではありません。むしろ経営を安定させることにつながります。経営者は資金繰り対応に時間を割かれることがなく、経営問題に集中することができます。

もし経営悪化等を理由に融資が受けられないのが確定的であれば、リスケジュールによって資金の流出を抑えることが必要です。

借りられるときに借りておく

この「借りられるときに借りておく」という考え方、人によって意見は異なるでしょう。

専門家によって考えは異なる

当社のような資金繰りや経営改善を専門とするコンサルタントとしては、経営を安定させるためには手持資金は多い方がいいですし、ビジネスチャンスにも迅速に対応できると考えます。

しかし、税理士や経営コンサルタントの中には、「支払利息の分だけ利益が減るし、もったいないから、できるだけ融資は受けない、資金に余裕があるのなら返済しておくべきだ」とアドバイスをされていることがあります。

その意見が間違っているというわけではないですし、正しい面もありますが、やはり当社としては資金繰りの安定を優先させるべきだと考えます。特に中小企業は経営基盤が脆弱ですし、これからの原材料や人件費の上昇といった不安要素を考えると、余裕を持たせた方がいいでしょう。

本当に困った時に借りられないかも

多くの企業は資金繰りで困ったことが発生してから金融機関に相談するわけですが、必ず融資が承認されるとは限りません。

資金繰りで困ったといっても、財務内容は良好かつ前向きな資金需要であればすぐに対応してくれるかもしれません。しかし、その逆である場合、融資は受けられない可能性が非常に高いでしょう。

これまでずっと赤字の企業が販路開拓に成功した等によって、「今までは赤字経営が続いていましたが、これからは毎月黒字経営が可能です」と主張しても、「ではそうなってから改めて相談に来てください」と言われることが多いでしょう。

だったら借りられるうちに、少しでも金融機関が自社を評価してくれているうちに、資金を調達しておくことです。

それに、仕入や給与は支払いを待ってもらうことが無理あるいは難しいですし、税金や社会保険料は多少待ってもらえるにしても長期間の未納は困難です。しかし、金融機関からの借入金は超低金利ですし、返済も1年以上待ってもらえることが可能です。だからこそ借りられるときに借りて、他の支払いが滞らないようにするべきです。

無理して繰上返済をしなくていい

真面目な経営者に多いのですが、金融機関に迷惑をかけたくないからと、資金繰りに余裕がある時に繰上返済をしたいと考えることはありませんか。

その迷惑をかけたくないからという気持ちは理解できるのですが、せっかく調達した資金ですから、当初の約束通りに返済すればいいのです。

返済は簡単にできますが、融資を受けるのは時間と手間がかかります。だからこそ繰上返済なんて、よほど資金が余っているのならかまいませんが、そうでないなら慎重に考えましょう。それに最近は繰上返済をすると手数料を要求されることもあります。

まとめ

どんなに黒字でも、資金ショートを起こせば経営を続けることはできません。それに経営は好不調と波があります。不調を乗り越えるためにも資金にゆとりを持たせておきましょう。

金融機関からの借入金は、現在は低金利ですし、資金繰りに困れば返済も相談に乗ってくれます。経営者が資金繰りで悩まず経営に集中できる環境を持つためにも、借りられるときに借りておくことを考えてください。