キャッシュ・コンバージョン・サイクル

資金繰り

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)とは

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)とは、企業が商品・原材料等の仕入分を支払ってから、その後の販売によって発生した売上債権が回収されるまでにかかる日数を示す指標です。

例を用いて説明します。

商品を仕入れます。仕入代金は30日後に支払をします。商品はさらに10日後(仕入れから40日後)に販売することができました。そして、その販売代金は45日後に支払ってもらうことができました。

商品を仕入れてから販売代金を回収するまで85日かかりました。そして商品を仕入れてから支払するまでの期間は30日です。この例ですと、CCCは55日(=40日+45日-30日)です。それだけ支払から回収までのタイムラグが生じることになりますから、その分だけ資金繰りが苦しくなります。

このタイムラグであるCCCが短くなれば、それだけ回収までの期間が短くなりますから、資金繰りは改善されることになります。

計算式は次の通りです。

CCC=売上債権回転日数+棚卸資産回転日数-仕入債務回転日数

まずは各回転日数について見ていきます。

(1)売上債権回転日数

売上債権回転日数(日)=売上債権÷売上高×365日

売上債権=受取手形+売掛金+割引手形-前受金

売上債権回転日数は、売上が発生してから回収するまでに要する日数を示しています。

売上債権は、一般的には受取手形と売掛金ですが、未収入金等の勘定科目に売上債権が含まれている場合はそれも加えて計算します。

受取手形を割り引いている場合、受取手形勘定を減額する経理処理をしていたら、その分を加算して計算する必要があります。割引手形勘定を使っている場合は、受取手形勘定を減額していませんからそのままで大丈夫です。

また中小企業は少ないケースかもしれませんが、商品・製品を販売する前に代金を受けとっていたら、売上債権からその額を差し引いて計算してください。

(2)棚卸資産回転日数

棚卸資産回転日数(日)=棚卸資産÷売上原価×365日

棚卸資産=商品+製品+原材料+仕掛品等

分母は売上高を使う場合もありますが、この回転日数は棚卸資産を仕入れてから販売されるまでの日数ですから、分母には仕入高の数字は使いません。仕入高は販売されていない分も含まれた金額ですから、正確な回転日数を計算するには売上原価を用います。

(3)仕入債務回転日数

仕入債務回転日数(日)=仕入債務÷仕入債務支払高×365日

仕入債務=支払手形+買掛金-前払金

仕入債務の決済までに要する日数を示しています。

仕入債務(買入債務)は、一般的には支払手形や買掛金ですが、それ以外の勘定科目(例えば、未払金)に仕入債務が含まれているようでしたら、その分も加えて計算する必要があります。また、商品等を仕入れる前に前払をしている場合は、仕入債務から前払金を差し引いて計算するようにしてください。

より正確に計算するには、分母は実際の支払額である仕入債務支払高(期首仕入債務+当期仕入高-期末仕入債務)を用います。ただ、実務上は売上原価を用いることが多いです。

なお、売上債権、棚卸資産、仕入債務は、期末残高で計算する事もできますが、期中平均残高を用いたほうがより正確です。(簡易な方法ではありますが)分子は期首残高と期末残高の合計を2で割って計算するといいでしょう。

キャッシュ・コンバージョン・サイクルの計算例

では例を用いてキャッシュ・コンバージョン・サイクルを計算してみます。10期から14期まで以下のように推移している企業があったとします。

そして、10期を例にすると、各回転日数とキャッシュ・コンバージョン・サイクルは次の通り計算できます。

正常運転資金との違い

良く似た概念として正常運転資金(または、経常運転資金)があります。

計算式は次の通りです。
正常運転資金=売上債権+棚卸資産-仕入債務

企業は棚卸資産の分だけお金を寝かせ、売上債権の分だけ顧客からの入金を待たされており、そして仕入債務の分だけ支払いを待ってもらっている状態です。

「売上債権+棚卸資産>仕入債務」なら、差額である正常運転資金の分だけ資金繰りが苦しくなり、自社で用意しておくべき現金預金がいくらなのかを表しています。

そして、CCCは金額ではなく期間(時間)を表す概念です。仕入代金支払いから売上代金回収まで何日かかるのかを表しています。CCCが長ければ長いほど資金繰りは苦しくなりますし、逆に短縮することができれば改善されることになります。

みなさんも自社のCCCは何日か計算してみましょう。

そして、CCCが少しずつでも短縮される経営を目指してください。