ゼロゼロ融資の返済はすでに4割でスタート

資金繰り予定表 銀行融資

みなさんはこちらの記事をご覧になったでしょうか。

日本経済新聞 3月16日、地銀協会長、ゼロゼロ融資「9月に5割が返済開始」

この記事によると、新型コロナウイルス感染症拡大によって経営が悪化した企業を支援するために行われた実質無利子・無担保融資(以下、ゼロゼロ融資)について、2021年9月末で残高がある約40万件のうち、すでに4割で返済が始まり、今年9月末までにおよそ5割に上る見通しとのこと。

民間金融機関によるゼロゼロ融資は2021年3月末で終了しています(ちなみに政府系金融機関による制度は存続しており、今のところ今年6月末までとなります)。3年程度と長期の据え置きを受けられている企業もあるでしょうが、多くは1年程度で返済がスタートするでしょう。

当社顧問先では長期の据置期間をいただき、まだ返済がスタートしていない企業が多いのですが、すでに始まった経営者さんは資金繰り厳しくないでしょうか。まだこれからという経営者さんも返済がスタートしてからの資金繰りを考えたことがありますか。

ゼロゼロ融資の返済ができないと

この記事は、全国地方銀行協会の柴田会長(静岡銀行頭取)が16日にオンライン記者会見を行った内容なのですが、ご自身が頭取をされている静岡銀行では、返済が始まった企業の約4割に自前での追加融資を実行しているとのこと。

自前というのはプロパー融資のことです。確かに信用保証協会の保証を受けているゼロゼロ融資の返済がスタートして、銀行が資金繰り支援のためにプロパー融資を出すことはあります。しかし、多くの企業が対応してもらえるかといえば、そうはならないケースが圧倒的だと思います。

保証協会付き融資は、金融機関が80~100%保証を受けられますが、プロパー融資は100%リスクを被るのです。業績の回復に伴い前向きな資金需要が発生したら可能性はあるでしょうが、赤字企業では難しいと考えた方がいいです。

ゼロゼロ融資はコロナ感染拡大に伴い売上が減少、それによって発生した損失により悪化した資金繰りを支援するための融資です。したがって、コロナが落ち着いてきたら他の借入金よりも優先すべき債務です。

それにもかかわらず資金繰りが苦しく返済が思うようにできなければ、リスケジュールには応じてもらえるでしょう。しかし、新規融資は返済能力をより慎重に審査してくることになります。

つまり経営での実績を出していくしかありませんし、直ちにそれが無理でも早期に正常返済が開始できる見通しが必要です。

自社の将来を考えていますか

ゼロゼロ融資によって救われた中小企業が多かったわけですが、今はその借入金が経営の大きな負担となってきます。

コロナ前の融資とゼロゼロ融資を合せた返済能力を、企業はこれから生み出さなければなりませんが、現実にはいきなりそうなるのは困難でしょう。

まずは資金繰り表なら経常収支、キャッシュフロー計算書なら営業キャッシュフローがプラスを目指す必要があります。

それはほとんどの経営者が理解されていると思うのですが、ではこれから経営をどう立て直していくかについてしっかり考えているかというと、そうでもないことが多いようです。

何とかしなければと思っているものの、日常の忙しさ等を理由に考えるのを避けてはいないでしょうか。今までの経営を続け回復しているのなら問題ありませんが、そうでないなら抜本的な改善が必要です。

少しずつでも経営改善を進め実績を出し、金融機関との接触を増やしていくことで、受けられる金融支援も増えてくると考えられます。リスケジュールだけではなく新規融資の可能性も出てきますし、企業によっては資本性劣後ローンの可能性も出てくるでしょう。

経営者として経営改善の策定や実行は当然ですし、金融機関へ提出する資料(経営改善計画書)を作成し、試算表や資金繰り表を用意して対話する時間を作るようにしてください。