納税資金

資金繰り

企業は税務申告を行い、法人税、消費税などの税金を納付しなければなりません。しかし、納税は一度に多額の資金が流出することもあり、資金繰りへの影響は無視できません。金融機関に相談したいと考える経営者もいるでしょうし、納税資金は融資対象となる資金使途です。

納税資金について

利益が出れば企業は繰越欠損金がない限り、3割超の法人税(地方税も含む)を納付しなければなりません。

利益が出ていればその分だけ現預金が増えるように感じるかもしれません。確かにそういう場合もあるでしょうが、現実にはそうならないことが多いでしょう。なぜなら、売掛金の入金が遅れている、借入金の返済に充ててしまっている、あるいは設備投資に使ってしまったなどで、利益分の現預金が残ることはまずないからです。

利益は出ているが納税資金が手元にない、あるけど使ってしまうと後の資金繰りに影響しそうだ、そんな時、金融機関は資金繰り安定のために納税資金を融資するのです。

対象となる、ならない税金

企業が納める税金はいくつかありますが、金融機関の融資対象となる税金がある一方で、対象外となる税金もあります。

法人税

法人税は納税資金の対象となる税金です。国税である法人税だけでなく、法人住民税や法人事業税といった地方税も対象になります。

法人税が発生するのですから、その分だけ利益が出ているということです。金融機関としては利益が出ている業績が良好な企業であり、資金使途がはっきりしているので、前向きに取り組める融資になります。

消費税

「当社は赤字企業だから税金なんて関係ない」とおっしゃる経営者がいますが、消費税は赤字でも発生する可能性が高い税金です。滞納して税務署から厳しいことを言われ苦労している中小企業は多いでしょう。

しかし、消費税は納税資金の対象外です。なぜなら、売上代金の消費税分を預かっているのだから納税できるはずであり、できないというのは預かった消費税分の資金を他に流用したともいえます。したがって、それを銀行融資で補填するのは適切ではないということなのです。

実態は消費税も対象

消費税は納税資金の対象外と説明しました。現実的には預かった消費税分の資金を事業に使用していることがほとんどです。それにわざわざ別口座で管理なんて面倒なことはしないでしょうし、流用したくなくても無意識に使わざるを得ないでしょう。

そこで資金使途は消費税納税のためとはせず、そうせざるを得ない本来の理由、例えば売上高増加に伴う運転資金の発生、赤字による資金の流出、借入金返済の負担など、本来の資金使途で申し込みをすればいいでしょう。

消費税納税積立預金を取り扱っている金融機関

自社のおよその年間消費税額が分かれば、それを毎月積み立てることも考えられます。通常の定期積金でもいいですし、消費税の納税を目的とした定期積金を取り扱っている金融機関があります。

ほんの一部ではありますが、納税額と積立金額に差が発生した場合、融資を検討する金融機関もあります。次の金融機関で取り扱いをしています。

・さわやか信用金庫「備エール

・足立成和信用金庫「消費税納税定期積金

・足利小山信用金庫「納税専科

・舘林信用金庫「安心だ税

・アルプス中央信用金庫「完納奉行

融資ですから希望どおりにいかないこともありますが、取引金融機関でも取り扱っていないか確認しましょう。

源泉所得税

源泉所得税とは、役員や従業員の給与から徴収し納める税金です。給与からは他にも住民税が発生します。

給与から源泉徴収して納める税金です。つまり消費税と同じ預り金です。資金繰りが苦しいためにこの預り金に手を出してしまうのはよくあることです。

したがって、これも消費税と同じ理由から納税資金の対象外になります。

融資条件

納税資金の返済期間は6カ月、かつ毎月の分割返済が一般的な条件になります。少し短いように感じるかもしれませんが、前期の年税額によっては年2回、半年ごとに納税が発生するためであり、その前に完済できる期間にしているのです。

早めに納税額の把握を

決算月で最も多いのは3月です。5月には申告納税をしなければなりません。もし3月であれば2~3カ月前、1月ぐらいには今期の予想利益を試算し、資金繰りから納税が可能かどうか検討しましょう。

資金的余裕があればいいのですが、もし納税が期限内には難しそうであれば、金融機関担当者に利益が出ること、納税資金を検討してくれないかを伝えてください。

「また借入金が増えるのか」と不満を口にする方がいますけど、期限内に納付しないと延滞税が発生しますし、銀行融資の金利よりも高いです。しかも税金に未納があれば今後の融資にも影響が出ますし、税務署と分割納付について交渉するよりも、金融機関と借入金の返済について相談するほうがはるかにやりやすいでしょう。これらの理由からも金融機関より税務署を優先してください。

納税資金のまとめ

金融機関では納税資金を取り扱っています。返済期間と方法は、原則として6カ月の分割返済になります。法人税そして地方税(法人住民税や法人事業税)が対象であり、消費税や源泉所得税は納税資金の対象とはなりませんから注意が必要です。しかし、消費税については納税資金が不足した理由を金融機関に説明することで融資申し込みは可能です。

また、消費税納税目的の積立や融資を検討する預金を取り扱っている金融機関もありますから、お近くの金融機関で取り扱いがないか確認しましょう。