無借金経営は理想的だけど

手持資金 資金繰り

借金という言葉にはあまりいいイメージはないですから、できれば金融機関から借入れはしたくないと思いますし、すでにある借入金もできれば早期に返済をしたいと思う方はいるでしょう。それに無借金経営という言葉は優良企業という感じがします。

よほど潤沢な資金があるのなら無借金経営でもかまいません。しかし、経営のことを考えると、それが正しい判断とは限りません。

■余裕資金は経営に不可欠

どんなに売上や利益を計上しようとも、資金がなくなれば経営を続けることはできません。安全な経営をするには、できれば返済義務のない出資による資金調達が理想的ですが、それが無理なら銀行融資を使っても、資金に余裕を持たせたほうがいいのです。

資金に余裕があると次のようなメリットがあります。

1、経営には波がある

常に安定した経営を続けることは難しいです。これまで順調に売上を増加させてきたとしても、競合他社や商品の出現によって影響を受けます。それに自然災害や景気の影響も大きく受けます。リーマンショック、東日本大震災、新型コロナウイルス感染症を経験した皆さんなら、どれだけ影響があるかご理解いただけるでしょう。

売上の大きな割合を占める販売先が1社なくなっただけでも、中小企業であれば赤字に転落することは珍しいことではありません。それらの影響は早期に解決することもあれば長期に渡ることもありますから、経営の完全性を確保するためにも余裕資金は絶対に必要なのです。

2,余裕があると前向きに経営できる

いつも資金繰りが厳しいと経営者は経営に集中することができません。限られた時間の一部が資金繰りや金融機関との交渉に充てられてしまいますから、悪化した経営を立て直そうとしても難しくなっていきます。

しかし、資金繰りに余裕があれば経営改善に集中できますから、立て直しに成功する可能性が高くなります。

資金に余裕を持たせるために借入金残高が増加しますから、その分だけ支払利息も増えます。それでも経営改善に集中できるメリットは大きいでしょう。

■繰上返済は慎重に

資金に少し余裕ができたからと繰上返済をしたがる経営者は少なくありません。支払利息を減らせますから支出は減らせますし決算書の内容も改善されます。

ただ、返済は簡単にできますが、再度新たな資金調達をするためには労力と時間が必要となります。それに次も融資を申し込んで絶対実行してくれるとは限りません。

また最近は、繰上返済をした場合の手数料が発生することが多いですから注意しましょう。

借入金が多くても倒産はしませんが、資金が不足すればどんなに財務内容が良くてもすぐに倒産です。したがって、今後の業績や資金繰りの見通しをよく確認してから実行するようにしましょう。

■晴れの日に借りておく

金融機関は「晴れの日には傘を貸し、雨の日には傘を貸さない(取り上げる)」といわれます。

金融機関の対応にも徐々に変化が出てきて、雨の日だからこそ貸す(融資をする)という姿勢も見受けられるようになりました。

ただ、それは「雨の日でも貸して大丈夫だ」という材料がその企業にあるから融資をするのです。それ以外の企業は雨の日は貸してくれない事の方が多いです。

こういう金融機関の姿勢に文句を言う人がいますが、融資したお金を返してくれる安全な企業を相手にしたいと考えるのは当然の事です。もし雨の日であってもどの企業にも積極的に融資するなら、金利は1~2%ではとても経営していけません。

そもそも「晴れの日に貸して、雨の日には貸さない」金融機関の対応は分かっているのですからそれを利用したほうが良いのです。今は資金繰りの不安がなかったとしても、今後はやや心配するところがあるのでしたら、金融機関から「借りてください」と言われている間に借りておくことも検討しましょう。

それに、財務内容は良好であっても、全く借入がないよりも過去の返済実績があるとやはり金融機関は安心します。融資でのお付き合いも継続されているほうがいいのです。

今は雨の日であっても、「当社も近い将来は晴れの日になりますよ」と経営改善計画書で説明して、将来も返済に懸念がない事をしっかり説明できれば、政府系金融機関なら可能性があるかもしれません。