返済原資は「利益+減価償却費」?

資金繰り

借入金の返済能力を見る財務指標として債務償還年数があります。

計算式は金融機関によって考え方にやや差はありますが次のようなものになるでしょう。
・営業利益+減価償却費
・経常利益+減価償却費-法人税等
・税引き後利益+減価償却費

どちらにしても、損益計算書に表示されている利益と減価償却費を加えたものが返済能力として利用されます。聞いたことがある方も多いでしょう。

税金を引いた残りの利益は企業が自由に使えますね。減価償却費はお金の流出が発生しない費用ですから、返済能力を見る際には利益に加えます。

しかし、実際には「利益+減価償却費」の分だけ現預金が増えているとは限りません。むしろそうでない中小企業が多く「利益=現預金の増加」ではないのです。

経営者の多くは「返済するには利益を出さなければ、利益を出すためには売上を増やさなければ」と売上拡大を目指すようになります。

それは悪いことではないのですが、売上が増加すれば売上債権も増えることになります。売上増加に対応するには棚卸資産を増やす必要も出てきます。その結果、今まで以上に運転資金が必要となるのです。

よって、「売上が増えて利益も増えたけど資金繰りが苦しくなった。計算式では返済可能であっても実際にはそんな資金はない。結局借入金が増えた」なんてことになるのです。

先ほどの計算式も、返済能力を決算書から簡易的に計算するためのもので正確とはいえません。

本来はキャッシュフロー計算書でいうところの、フリーキャッシュフローが借入金の返済原資となります。営業活動でいくらの現金を獲得し、そこからいくら設備投資に使い、その残った金額が返済可能額ということなのです。

キャッシュフロー計算書

債務償還年数でどれだけ大きな金額が出たとしても、それに見合った現預金が増えてなければ意味がありません。

 

これを改善するには例えば、売上債権の入金サイトを改善する、在庫管理を強化する、経営に不要な資産(貸付金など)を発生させない、などが考えられます。

特に売上債権についていえば「うちの業界は〇〇日後の入金が常識」とおっしゃる方がいます。力関係から既存の取引先には言えないかもしれません。それに途中から入金サイトの変更を依頼するのは信用不安に発展しても嫌でしょうし。

しかし、どの業界でも取引先ごとに条件は異なります。そこで新しい取引先との取引開始時には交渉できるでしょう。売上先だけではありません。仕入れや外注先ならこちらから仕事を出す立場ですし交渉しやすいでしょう。

棚卸資産についても、現預金が商品や原材料に変化しています。すぐに販売されて売上債権になり現預金になることが必要です。すぐに販売できないような商品は原則仕入れない、流行に影響されるような商品に売れ残りが発生しない数量を仕入れるなどの管理は必要です。

利益増加はもちろん大切ですが、入金や支払いの条件見直しなどによる資金繰り改善も重要なのです。