経営者は資金が不足した(あるいは、これから不足しそうだ)から融資を受けたいと思っても、銀行からすると本音では次のような企業に融資をしたいと思います。
・毎期黒字である
・自己資本が厚い、現預金に余裕がある
・そもそもお金を借りる必要がない(資金の余裕があるから返済に懸念がない)
このような企業なら支店長や本部の承認も取りやすいですから、担当者からしたら作業的にも楽でしょう。しかし、そんな魅力的とは程遠い企業は、日本政策金融公庫や信用保証協会を頼っても、業績が悪すぎる、借入過多、税金未納等を理由に否決されてしまう事もあります。
そうすると、「銀行融資の裏技は無いのか?」と考える経営者がいても不思議ではありません。
銀行融資の裏技はない
銀行融資の裏技というと何を想像しますか。まず思い浮かぶのは口利きではないでしょうか。それともう一つは銀行に評価されやすい決算書の作成、つまり粉飾決算もそうでしょう。
口利きとしては、支店長や頭取等、政治家(秘書)を紹介して欲しいと言われたことがあります。「支店長と親しくなれば融資が出るんでしょ? 紹介して下さいよ」という相談というか依頼はあります。
しかし、銀行の経営陣と親しくなっても出るものは出るし、出ないものはでません。
政治家ですが確かに政府系金融機関ではよく聞きますし実際ありますが、最近は世間の目が厳しいですからやりにくくなっているでしょう。政治家からということで一応丁寧に対応はするけど、否決されることも少なくはありません。
粉飾決算は不正なことですし、粉飾が発覚すれば一気に信頼関係を失いますからやるべきではありません。
どちらにしても自社の返済能力を超えた借り入れとなりますから、成功して一時的に資金繰りは改善されても、すぐに資金は必要となりまた依頼しようとします。
そんな裏技に頼ろうとする経営者は、「かっこ悪い決算書を銀行に見せたくない」「頭を下げて銀行にリスケジュールの依頼をしたくない」と見栄っ張りの方が多いように感じます。それでいい業績に見せたいから粉飾決算、それでもだめなら口利きとなってしまうのです。だけど、自分たちは特にコスト削減や営業活動等の努力はしたくないのです。
銀行融資で裏技というのはありません。そもそもそんなことに頼ろうとする経営を改めることが先決です。
銀行融資の裏技より大切なもの
銀行融資で最も大切なのは銀行との信頼関係です。
企業は不都合な経営情報を、融資審査に不利となるからと銀行に出したくないと考えます。
逆に銀行は、企業は自社に都合の良い情報ばかりだし、都合の悪いことは隠すから疑ったほうがいいと考えます。
それでは銀行員と経営者の間では情報が共有できていない状態となりますから、企業を信用して支援することはできません。
最大限に銀行からの支援を得られるようにするためには、企業内の情報をオープンにすることです。嘘のない正しい経営報告を積み重ねる。それを続けることです。
定期的な経営報告の中で情報を公開していくことは、正直言って面倒臭いことだと思います。しかし、そういう努力を積み重ね企業側から銀行に近づいていくことで、銀行も信頼して対応することができますし、そんな企業を最大限に支援したいと思うのです。多少のリスクを負ってでも金融支援を受けられる可能性もあります。
時間をかけて信頼関係を築いていく事が、銀行融資で一番必要なことなのです。