金融機関の行動から分かる融資スタンス

銀行融資

金融機関が自社への融資に積極的なのか、それとも消極的なのか、資金調達を融資に依存する経営者であれば非常に気になります。

金融機関は融資先ごとに方針を決めており、次のような行動から自社はどちらなのかを知ることができます。

積極方針

積極方針の企業に対しては次のような行動が見られます。

担当者の訪問が増加

まずはこれでしょう。担当者の訪問が明らかに増えます。他行の担当者よりも顔を覚えてもらいたい、親しくなりたい、それにより経営者から努力を認めてもらうためです。「君はよく来てくれるから、今回の融資はお願いしよう」と依頼される可能性が増えるでしょうし、頻繁に通うことでいち早く資金需要をキャッチし融資提案をしやすくなります。

支店長など役席者の訪問が増える

融資取引をする企業数は多いですから、支店長がすべての融資先を訪問することはできませんし把握もしていません。

当然、積極方針の企業を中心に訪問します。

優良企業にはどこの金融機関も担当者が頻繁に訪問します。企業としては、同じ条件なら融資はどこからでもいいと思いますから、そこで支店長が訪問してくれば、「支店長が来てくださったのだから、今回の融資はお願いします」となるでしょう。それを狙っているのです。

支店長は支店のトップですから、融資ばかりしているわけではありません。したがって、訪問できる企業数は限られますから、副支店長や融資課長が訪問してくることもあるでしょう。立場は下であっても、積極方針であることに間違いはありません。

何か用事があって企業側が金融機関を訪問すると、担当者の上司が出てきて挨拶をしてきます。支店内のレイアウトにもよりますが来店客を時々チェックしていますから、積極方針先の経営者がいれば挨拶をしに来ることも多いです。

好条件の融資を提案してくる

積極方針ですから財務内容は良好な企業のはずです。他行も狙っているのですから、好条件の融資を提案してきます。優良企業に信用保証協会の利用を条件にしたら、他行に融資を取られてしまいます。プロパー融資はもちろん、金利や担保・保証面でも好条件を提案してきます。

融資実行後も他行とは金利などの条件面での競争が続きます。「A銀行が×%を提案してきた」「B銀行が経営者保証は不要と言ってきた」と聞けば、それと同条件あるいはより好条件を提案してくる可能性があります。

企業側が強い立場になりますから融資交渉はしやすくなります。

消極方針

消極方針の場合は積極方針の逆になります。

担当者の訪問が減少

消極的な方針であれば担当者の訪問は減少します。営業目標を課されていれば、効率よく達成するには優良企業を訪問したほうがいいのは明らかです。消極方針が決まっている企業では、融資実行まで手間と時間がかかりますから訪問頻度は減少します。

支店長などとの接触は減る

担当者の訪問が減少するのですから、上司の支店長や融資課長などの訪問は期待できません。経営者が金融機関を訪問した際も挨拶してくれることは減るでしょう。

融資は信用保証協会付のみ

通常であれば、返済がある程度進んでくると、「返済が進んで借入金残高がかなり減りましたし、そろそろご融資のほうはいかがですか」と提案してきます。しかし、融資に消極的なのですから提案なんてしてきません。あったとしても他に営業する先がないときなどに限られます。

顧客から預かった預金を貸して利息を得る商売なのに、それをしてこないとすれば積極的に提案できない企業ということです。

それでも企業から融資の相談があれば、信用保証協会の利用を条件とした提案程度になります。

信用保証協会は原則として融資額の8割を保証しますが、一部例外として全額を保証する制度もあります。それだけの保証がないと融資をしてくれないのですから、金融機関は信用力の低い企業と見ているのは明らかです。

審査に時間がかかる、要求書類が増える

消極的ですから仮に融資を検討してくれるとしても、そこから承認を得るには様々な書類を要求されるでしょうし、質問も増えることになります。それに本部の審査が必要であればより時間を要します。

対応策

消極方針では企業側がお願いする立場になります。そのため次の対応策が必要です。

経営を立て直す

当たり前のことですが金融機関から見て魅力的な企業にすることです。つまり利益が出ている決算書するために努力するしかありません。

こう書くと、「そんなことは分かっているよ」と言われそうです。しかし、そう言ってくる経営者の行動を見ていると、黒字化のための行動を何かしているかというとしていないのです。

社内あるいは外部専門家から、新しい取り組みやアイデアが出ても、「どうせ・・・」などと否定して今までどおりのことをします。そして、景気悪化などのせいにしています。

金融機関から消極的な対応を受けているのですから、コスト削減、販路開拓、資金繰り改善などやることはいくらでもあります。部下や外部専門家の意見にも耳を傾け経営改善していくことが必要です。

努力した結果はすぐには数字に表れないかもしれません。しかし、その原因を突き止め改善していかなければなりませんし、それを金融機関に定期報告することで最低限の金融支援は継続してもらえるようにしなければなりません。

赤字、債務超過、資金繰りが苦しいなどの経営に陥り、経営改善を考えている経営者様は「経営改善計画書作成支援」サービスのページもご覧ください。

接触する機会をこちらから作る

金融機関は店舗の統廃合を進めていますし、行員は昔のように遅くまで残業はできない中で、多くの目標を達成しなければなりません。どうしても効率性を考えると、積極方針の企業に行くのは仕方がないことです。

「昔はよく来てくれたのに」「決算書が悪くなったら途端に来なくなった」と不満を言っても仕方がありません。みなさんも逆の立場になったら同じことをするでしょう。

それならこちらから行けばいいのです。3カ月に1回程度なら経営改善に関して報告することもあるでしょうし、30分程度なら相手にも迷惑にはならないでしょう。それに接触機会が多いと、担当者もできる範囲内で最大限の努力はしようとなるものです。

目線の近い金融機関を選ぶ

取引金融機関の選び方を間違えている企業は意外と多いです。例えば、年商が3千万円程度なのに大手地方銀行をメインにするような企業です。

それでも取引はしてくれるでしょう。しかし、大手銀行には多くの優良企業と取引が集まるし、1社あたりの融資額も大きいです。多少業績が良かったとしても、少額の融資ではいいお付き合いは期待できないでしょう。ましてや消極方針に位置付けられてしまってはなおさらそうです。

ぜひみなさんの企業規模に合った金融機関を選択してください。小規模企業であるのなら信用金庫あるいは信用組合と取引したほうが、大手銀行よりははるかに丁寧な対応が期待できます。

まとめ

金融機関の行動から自社の融資方針が積極的なのか、あるいはそうでないのかについて説明しました。

だからといって、自社の支援方針が変更しないようにと粉飾決算をしてはいけません。決算書をうまく取り繕ってもバレたときが大変ですし、味方してくれない可能性が大きいですから。

それに企業を分析する情報は決算書だけに依存していません。AIを活用して口座の取引情報を分析し、より資金繰りを重視するようにもなっています。

消極方針になるほど経営課題を抱えているのに、それを放置したままの企業では返済能力はありませんから消極方針になるのは当然です。

金融機関が消極的になってきたときは、自社の経営課題が山積みでそれが決算書の数字にも表れているはずです。だからこそ経営結果が出ない、金融機関の対応が冷たくなったと感じたら、直ちに行動していきましょう。