銀行融資では書類を要求される

銀行融資

金融機関から融資を受けようとすれば、いろいろな書類を要求され、何だか面倒なイメージを持つ方もいるでしょう。確かにそのとおりで、業績が極めて好調な企業であれば金融機関から借りてくれと言われる立場で、決算書程度しか要求されないことがあるかもしれません。しかし、そうでない多くの企業は、あれこれ書類を要求されることがありますし、申し込んでかなり経ってから追加書類を求められることもあります。

書類を要求される理由

いくつも書類を要求されるのは次の理由からです。

低金利で融資するため

金融機関は預金者のお金を企業に融資しますし、預金者から引き出したいと言われれば必ず応じなければなりません。つまり確実に返済してくれる企業かどうかを審査するためには、様々な書類を要求せざるを得ません。

それが嫌でノンバンクやファクタリングを利用したがる経営者がいます。あるいは銀行でも口座の動きから審査する商品があります。それらは審査結果が速いですし、通常の銀行融資よりも求められる書類が少ないのは確かです。しかし、融資額に制限があったり、金利や手数料が高額だったりしますから、高額かつ低金利で資金調達したいのなら書類提出に応じるしかありません。

書類の要求は融資を通したいから

申し込んでからいくつもの書類を要求されると、経営者からすれば何だか融資が通らなさそうな感じがするかもしれません。あるいは自社が信頼されていないように感じるでしょう。さらにしばらくたってから追加書類を要求されると「最初に言ってくれよ」と不満に思うかと思います。

しかし、金融機関がいくつも書類を要求するということは、担当者が融資を何とか通そうとしているからです。上司や本部から今回の融資について質問を受け、それに対する回答として必要な書類を求めているのです。

特に担当者の融資経験が浅いと、必要書類を後になって依頼してくることもあります。そんな時は怒ったり不満を言ったりせず、気持ちよく応じるようにしてください。

もし融資する気がなければ、追加書類なんて求めずに断りの連絡をします。それは断る融資ほど早く回答するよう教育を受けているからです。

粉飾決算を疑っている

そうでない場合も稀にあります。例えば、自社の決算内容に疑問を持たれている場合は、要求される書類が増えます。ただ、粉飾決算をしていなければ気にすることではありませんし、通常は多く求められるのは金融機関が融資に前向きであると捉えていいでしょう。

要求される書類

必要最低限の必要書類としては決算書があります。それ以外に要求されるものとしては次のとおりです。

試算表

試算表は決算書の次に求められる書類です。試算表とは、期中に作成される損益や資産負債の状況を表した書類です。期の途中で作成される決算書といえばいいでしょう。会計ソフトで日々経理処理をしていればすぐに作成できるものになります。試算表を求められて作成する、あるいは税理士に作成依頼するようでは問題です。

税務申告直後であればできたての決算書がありますから、試算表は求められないでしょうが、基本的には融資申し込みのたびに提出を求められると考えたほうがいいでしょう。

資金繰り表

試算表の次に求められるのは資金繰り表です。以前は要求されなかったとしても、最近は資金繰り表を重視する傾向にあります。

資金繰り表を見てこれまでどのように資金繰りが回っていたのか、そして融資を受けることで今後の資金繰りはどう推移する見通しなのかを確認するために要求します。

試算表と同様に経営管理の意味で日頃から資金繰り表は作成すべきです。これができていると金融機関からの評価は高いです。しかし作成を苦手とする企業が少なくありません。

資金繰り表には実績と予定から構成されます。実績は現預金の入出金を集計したものから、あるいは簡易的には試算表からも作れますが、やや手間がかかります。

予定表はこれからの収支計画等から実績よりも作成は容易です。そこで金融機関から求められたら、実績も必要か、今後何カ月程度先まで必要か確認するといいでしょう。

資金繰り表については当社ホームページでもう少し詳しく解説しております。詳しくは「資金繰り表」をご覧ください。

経営計画書

経営計画書は、企業がこれからどのような経営を行っていくのかについての具体策、そこから想定される目標(収支計画など)をまとめた書類になります。

経営者の頭の中にある計画や目標を書類いまとめることで、社内が目標に向かって一致団結することができたり、金融機関への説明においても口頭よりも的確に計画内容を伝えたりすることができます。

計画期間は3年~5年程度作成するべきですが、長期間の数値計画は信頼性が低下しますし、計画作成が難しい等の意見もあるでしょう。それならばせめて期首に今期1年間の行動計画と数値計画だけでも作ってみませんか。そして試算表を持参して期中の進捗状況を金融機関に報告するのです。

計画書なんて作成していない中小企業が非常に多いですから、作成し計画通りに進んでいるか、そうでなければ新たな改善策を実行して目標達成を目指す、それを続けている企業を金融機関は評価しますし、まったくやらなければ信用できず審査は厳しくなります。

それ以外に求められる書類

これら代表的な書類以外にも金融機関別取引推移表等があります。さらに日頃の業務で発生する見積書、注文書、契約書等を確認したいと言われる場合があります。売上増加に伴う運転資金であれば、新しい取引先との契約書や今後の売上予測、設備資金なら設備の見積書、設備投資目的や投資効果等をまとめた設備投資計画書が必要になります。

資金が必要になった理由が必ずあります。それを説明するための書類は、金融機関から言われなくても相談時に提出しましょう。

普段から自主的に提出するべき

多数の中小企業がこれら必要書類を求められてから提出します。求められてすぐに提出できればいいです。それは日頃から作成しているわけですから。しかし、ほとんどは言われてから作成を始めますから、それではその後の審査にも時間がかかり融資実行に影響が出ます。

それに試算表、資金繰り表、経営計画書は融資に関係なく自社の経営管理を目的に作成するものであり、金融機関との良好な関係維持のためには求められなくても提出すべき書類です。

私の経験でいえば、経営計画書を作成し試算表で進捗管理を行い、計画と実績に乖離があれば直ちに改善策を実行、そして常に数カ月先の資金繰りを管理している企業は順調な経営をしています。しかし、何もしていない企業はその逆の経営になっていることが多いです。

まとめ

融資を申し込まれた金融機関がいくつも書類提出を求めてくるのは、何とか融資をしたいと担当者が頑張っているからです。そんな担当者に「必要書類が多い」「後になって言ってくるな」などと不満を言えば、お願いしたら社長に怒られると頼みづらくなります。気持ちよく協力してください。

融資に関係なく試算表、資金繰り表、経営計画書は定期的に提出すべきです。金融機関が企業を見る印象は良くなりますし審査もスムーズに進みます。

融資が必要になったということはその理由が必ずあります。資金使途が発生した理由を説明する書類は融資申し込み時に提出するようにしてください。