「情報の非対称性」の解消

銀行融資

大学は経済学部でしたが、経済学の授業で確か「情報の非対称性」というのがテキストに載っていたと思います。

細かい説明は省きますが、商品の売買取引が行われるとき売り手と買い手の情報に差があることを情報の非対称性といいます。買い手が売り手より詳しいこともありますが、通常は買い手よりも売り手の方が商品に関する情報を多く持っています。持っている情報量に差がある場合、または買い手側が持っている情報が誤った内容である場合、買い手が不利益を被ることがあります。

銀行融資における情報の非対称性

これは銀行融資でもよくあることです。

中小企業は株式を公開しているような大企業に比べると、経営情報(特に財務情報)の開示は圧倒的に劣っています。年1回の決算書だけかもしれませんし、融資依頼の時に提出された試算表だけかもしれません。そして、その内容も粉飾によって正確性が歪められているかもしれません。

中小企業に対する融資は、限られた情報と正確かどうか分からない決算書ぐらいしかありません。金融機関側も決算書や試算表の信頼性が低いことは承知しています。中小企業向け融資において、金融機関は圧倒的に情報が不足していることが多いのです。

銀行融資における情報の非対称性については、中小企業白書2005年版では次のように書かれていました。

大企業に比べ中小企業が資金調達する際に困難を生ずる大きな要因として、貸し手が借り手の質や、借りた後の行動を正確にモニタリングすることが難しいため、貸し手と借り手の間に生じる「情報の非対称性」が指摘されており、中小企業が円滑に資金調達を行うためにはこの「情報の非対称性」を緩和することが必要不可欠である。このため不動産担保だけでは 「情報の非対称性」によるリスクがカバーしきれなくなっている状況下では、不動産担保以外の手段により「情報の非対称性」の緩和をすることが金融機関等に求められている。

銀行融資において情報の非対称性を解消することが必要です。

情報の非対称性解消のために

金融機関の担当者は、基本的にみなさんの会社に融資をしたいと考えています。それは自分のノルマもありますが、顧客のために役に立ちたいと思っているからです。

しかし、企業の情報が少なく限られていて、かつ信用性が低いと考えられる可能性があるから、金融機関は融資をしても回収不能リスクが高いと考えてしまうでしょう。どこまでリスクがあるのか分からないのです。

もしすべての情報を公開することができるとしたら、どれだけのリスクを負うことになるのかを明確にして融資を実行できます。

それにどんなに優秀な担当者であっても、情報の量が不足していたり、質が低かったりすれば、上手に稟議書を書くことが難しくなります。どこの企業でも小さな問題点を抱えていますが、そんなのだって気の利いた担当者なら有利に解釈をして稟議書を作成しますから、提供する情報は多い方がいいのです。

普段は決算書と試算表ぐらいしか提出しないでしょうけど、資金繰り表、契約書、見積書、借入金内訳明細等も提出して欲しいです。それらに加えて経営計画書等の作成・提出も検討してください。

金融機関を自分たちとは対立する存在との立場で対応する経営者が多いのですが、むしろそういう姿勢が金融機関との付き合い方に悪影響であると認識されたほうがいいでしょう。