信用保証協会のデメリット

銀行融資

中小企業が金融機関から融資を受ける際、信用保証協会を利用することが多いと思います。

金融機関の立場としても、中小企業(特に小規模企業)への融資は自行のリスクを回避するためには、信用保証協会の利用を提案してくるでしょう。

信用保証協会のメリット

中小企業にとって信用保証協会(以下、保証協会)の利用は大きなメリットがあります。

例えば、創業時や小規模事業者は経営基盤が不安定で信用力が低いですから、金融機関は慎重姿勢になり資金調達で苦労することになります。しかし、保証協会が保証を出すことで信用力を補完してもらえますから、金融機関は低リスクで融資を実行できます。

コロナウイルスやリーマンショック等の発生により中小企業が大きな影響を受けた場合、大きなリスクを取ってでも保証を出してくれます。

また、業績悪化によりリスケジュールをする場合も、保証協会を利用していると全金融機関の同意を得やすいでしょう。

したがって、保証協会は中小企業の資金繰り安定には不可欠な公的機関です。今はすべてプロパー融資で資金調達できているとしても、業績悪化によってそれが困難になった時でも保証協会が利用できるメリットは大きいでしょう。

信用保証協会のデメリット

中小企業にとって頼りになる保証協会ですがデメリットもあります。

保証料の発生

まずは保証料の負担です。そのおかげでスムーズに資金調達できるとはいえ負担は小さくありません。

例えば、融資希望金額3,000万円、期間5年(60ヶ月)、保証料率1%で計算すると、融資実行時に徴収される保証料は825,000円と計算されます(詳細は利用されている信用保証協会に問い合わせてください)。

ちなみに千葉県信用保証協会ホームページ内にある「保証料計算シミュレーション」で計算しました。

保証協会が企業の命運を握ることに

すべて保証協会付き融資であったとしたら、複数の金融機関と付き合っていても保証協会の保証審査の影響を受けることになります。保証協会が企業の命運を握っていることです。保証協会に睨まれたら今後の資金繰りへの影響は極めて大きいです。粉飾決算等で信頼を裏切ることがないよう注意してください。

これまで保証協会付き融資のみの対応をしていた金融機関が、保証協会が保証を謝絶した時にリスクを犯してまでプロパー融資で対応してくれるかといえば、その可能性は低いと言わざるを得ません。

保証限度額が限られている

保証協会の利用には限度額があります。一般的な保証限度額は1企業2億8,000万円、うち無担保で利用できる無担保保証枠8,000万円、有担保を前提とする普通保証枠2億円です。この限度額はすべての企業に当てはまるわけではなく各企業によって異なります。ただ、小規模企業なら保証枠内で十分かもしれません。

しかし、中堅企業で担保になるようなものがない場合、保証枠だけでは不十分になります。プロパー融資も必要となるでしょう。

経営者が経営改善意欲を失う懸念

一番のデメリットはこれだと思います。

金融機関がプロパー融資を避けたい赤字や債務超過等、財務内容が悪化したとしても、保証協会は保証を出してくれることが多いです。それは公的な立場としてリスクを負ってでも中小企業を支援するからです。

しかし、経営者は資金調達ができるのだから今の経営で問題ないと思うのです。「保証協会は中小企業を支援する公的機関なのだから積極的に保証を行うだろうし、金融機関も保証が出れば融資を出してくれるはずだ」と考え、経営改善の意欲を失うことが懸念されます。

金融機関は、保証協会が保証を出せば融資をしやすいでしょう。企業の経営に問題があったとしても、少なくとも80%(一部保証制度は100%)は回収できるわけですから、金融機関はあまり経営に厳しいことは言ってこないことが多いのです。

リスケジュールをせざるを得ない経営になっても、融資した資金のほとんどが回収できるため、金融機関は保証協会付融資しかない企業の経営支援には熱心ではないのも問題です。

金融機関がプロパー融資を出す経営を目指す

保証協会の利用がいけないわけではありません。過度な依存は避けましょうということです。そのためには、プロパー融資を目指す経営を意識することです。

プロパー融資が受けられれば資金調達に必要な保証料を減らすことができますし、保証協会に自社の命運を握られないようにもできます。

それに保証枠を温存する事ができますから、プロパー融資が難しい経営状況に陥っても資金調達の可能性は高いといえます

金融機関の信用を獲得してプロパー融資を受けるには、自社の経営を良くしていくことが必要ですから。経営者はそれを考え実行するようになります。だからこそプロパー融資を目指してほしいのです。

それに、そもそも保証協会に依存した融資しか実行してくれないというのは、金融機関が企業を信用していない、本気で付き合ってくれていないということでもあるのです。

「うちの財務内容はまあまあいいと思うのだけど」と思っている経営者さん、担当者と会ったら「弊社はプロパー融資を利用できませんか」と聞いてみましょう。

もし、まともに考えてくれる雰囲気でなければ、自社は金融機関に信用してもらえる経営内容ではないということです。それでは保証協会が保証を断ってきたら、金融機関からの資金調達は期待できない可能性が高いです。

今後のためにも保証協会に依存した経営を改めてみませんか。