コロナ融資の返済開始が近づいていませんか

資金繰り

新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年、経営に大きな打撃を受けたものの、コロナ融資で何とか凌いだ中小企業は多いかと思います。

日本政策金融公庫は3月17日に実質無利子・無担保融資の取り扱いを開始、据置期間は最大5年です。同年5月には民間金融機関でも同様の融資が開始、据置期間はやはり最大5年です。こちらは2021年3月末で終了しました。

コロナの影響がしばらくは続くであろうと予想されましたから、多数の中小企業が据置期間を設けてもらったと思います。しかし、予想以上に影響は長期化したことから、据置期間が終了しても業績は回復していない、まだもう少し時間が欲しい中小企業は少なくないでしょう。

据置期間で一番多いのは1年ですから、すでに元金返済がスタート、もうすぐスタートという中小企業は多いはずです。

新型コロナウイルス感染症拡大によって経営が悪化した企業を支援するために行われた実質無利子・無担保融資(以下、ゼロゼロ融資)について、2021年9月末で残高がある約40万件のうち、すでに4割で返済が始まり、今年9月末までにおよそ5割に上る見通しとのこと。今年3月に全国地方銀行協会の会長が、そのように発言されたことが報道されました。

現状から返済開始は可能ですか?

自社の経営状況から3つに分かれると思います。

・業績はすでに回復し返済は可能
⇒コロナ前よりも借入金残高は増加したとしても、すでに業績が回復しており、コロナ融資を含めた全体の借入金返済を上回るキャッシュフローが発生していれば、元金返済を開始しても問題ありません。これが理想ですね。

・業績は回復したが通常返済は難しい
業績は回復してきたとしても、コロナ融資を含めた借入金の返済はまだ負担となるレベルにあることも多いでしょう。

・業績が回復していないので返済は困難
業績が回復しないなかで返済が開始されれば、資金繰りは急速に悪化するでしょう。ひょっとしたら、コロナ融資の元金返済が据置されている現状でも苦しいかもしれません。

自社の返済能力をしっかり確認し、元金返済はまだ先延ばししたいと希望される経営者は、据置期間の延長を取引金融機関に相談してみましょう。

当初の条件通りに元金返済を開始しなければならないわけではありません。

据置期間延長の交渉

政府は民間金融機関そして政府系金融機関双方に対し、令和4年3月8日に「事業者等に対する金融の円滑化について」と題した要請を出しました。その中の4つめには次のように書かれています。

事業者からの返済期間・据置期間延長の事前の相談において、申込みを断念させるような対応を 取らないことは勿論のこと、返済期間・据置期間の長期の延長等を積極的に提案するなど、既往債 務の条件変更や借換等について、事業者の実情に応じた迅速かつ柔軟な対応を継続すること。その 際、据置期間終了後の返済負担が重くなることをおそれて据置期間の延長を躊躇する事業者がいる 場合には、返済期間の延長も併せて提案すること。

あくまでも要請ではありますが、企業から据置期間延長の相談を受けたら、柔軟かつ積極的に対応するよう求めているのです。したがって、据置期間延長の相談は可能ですし、認められる可能性は十分あるのです。

資金繰りが厳しく元金返済が困難であるなら、取引金融機関には早めに相談しましょう。そして据置期間を延長してもらえないかと相談してください。門税払いなんてせず相談に乗ってくれるはずですが、もしそうでなかったとしたら、政府からも要請が出ていることを伝えてみましょう。

しかし、政府からの要請があったとしても、金融機関からすれば義務ではありません。最終的には金融機関が判断することです。

したがって、「まだ資金繰りが苦しいですし、困っているので助けてください」では金融機関も前向きな支援を行おうとは思わないでしょう。すでにコロナの感染拡大が始まって2年以上経過しているのですから、これまでの経営改善の内容や結果、そしてこれからの見通しについても説明することが必要ですし、そのためにも資料作成が必須です。

据置期間延長についてですが、金融機関からリスケジュール(条件変更)による延長の提案であったとしたら、今後の新規融資に影響する可能性が高いです。

もしそのような提案であったとしたら、既存のコロナ融資を借り換えることで新たに据置期間を設けることができるよう交渉してください。これならばリスケジュールには該当しません。