金融機関への決算説明の仕方

金融機関からのセールス 銀行融資

決算書が出来上がると金融機関担当者から求められるでしょうし、企業側から積極的に提出することもあるでしょう。どうせ決算書を提出するのであれば、こちらから積極的に提出した方がいいですし、その時には決算内容や今後の見通し等を説明することでより良い付き合い方ができます。

金融機関担当者の立場を理解しましょう

金融機関が普段どのように仕事をしているのか、そして決算書をどう見ているのかを理解すると決算説明の重要性が理解できるでしょう。

担当者は忙しい

金融機関はかつて残業が非常に多くありました。現在ではそのような労働環境は改善されましたし、RPAを活用した事務作業の自動化による効率化が進む一方で、一人当たりの担当する顧客数が増加したり、取扱商品のラインナップ(融資だけでなく投資信託や保険等)が増え、行員一人当たりの仕事量はむしろ増えていますから、今でも非常に忙しいと認識しておく必要があります。

こちらは長年付き合っている金融機関なのだから、自社のことをよく理解しているだろうと思っていても、担当者からすれば数ある融資先の1社なのです。

そんな担当者に関心を持ってもらい、親身になって対応してもらう必要があります。

決算説明の重要性

決算書は金融機関との付き合い方において大きな影響を与えます。決算書を入手するとその内容を登録して格付けをします。

その結果で基本的な取引方針が決まります。積極方針なら安心です。こちらがお願いしなくても融資セールスをしてくるでしょう。現状維持なら、今までの融資残高の範囲までなら貸しておくということです。返済が進めばその分までは対応するが、過去の実績を超えるまでの融資は避けようとするかもしれません。

消極方針に位置づけられると、返済を続けるだけで、追加融資は基本的に期待できなくなります。融資の相談をしても原則断られるか、次の決算書を見てから検討させてください、といった回答になるでしょう。

このように金融機関は入手した決算書でそれらを判断するわけです。忙しい担当者は決算書を本部に送って、数字をコンピューターに登録して出てきた結果で企業を判断しがちになります。

したがって、決算書を作成する際、金融機関対策を意識する必要がありますし、詳しく決算内容について説明した方がいいのです。

決算説明の仕方

決算説明の重要性はご理解いただけたかと思いますが、次に決算説明の仕方やどのような内容を話せばいいのかをご説明します。

経営者自身が決算説明を

決算書や数字に関する事は苦手だからと詳しく説明しない、または経理担当者に説明させようでは経営者失格です。経営コンサルタントや税理士など外部の専門家が同席するのはかまいませんが、説明をすべて丸投げすることだけは絶対にやめましょう。

必ず経営者自身が説明してください。なぜなら、経営者が自社の数字について全く説明できないようでは、経営者としての能力を疑います。それに金融機関は経営者から直接説明を受けたいのです。

もちろん細かいところまですべて説明できないかもしれませんが、その時は経理担当者や専門家に補助してもらう程度なら問題ありません。

つたない説明であっても問題ありませんから、経営者から説明した方が評価は良いですし、金融機関もその内容を重く受け止めます。

どうしても数字に弱いのでしたら、事前に説明することを決めて資料を準備するといいでしょう。

担当者は忙しいですから、あまり長時間拘束することは避けてください。説明時間としては30分程度、長くても1時間程度で終わるようにします。

過去、現在、未来の流れで

決算説明といっても、「売上高は〇〇〇万円、仕入高×××万円」と決算書を見れば分かるようなことを説明する必要はありません。

それよりも、決算書を見ただけでは分からない部分を説明してください。その時のポイントは、過去、現在、未来です。

過去との比較

金融機関は決算書を過去の推移で見ますから、直近と前期の決算書を比較し、変化が生じた勘定科目について理由を説明しましょう。

売上高が増加したのであれば、どの商品が好調であったのか、あるいは取引先の開拓に成功したのか、いろいろな理由があると思います。人件費が増えたのであれば、営業強化等の目的があるはずです。どの部署でどれだけ採用したのか、その理由を説明するといいでしょう。

貸借対照表なら固定資産が増加していれば、機械の買換えなのか、増設したのか、その目的や効果等を伝えるようにします。

現在の取組み

3月決算の企業なら5月に申告納税を行います。金融機関に決算書を提出するのは6月からになりますから、すでに2カ月を経過しているわけです。

仮に決算内容が悪かったとしても、その2カ月間の間に大きく変化していることもあるでしょう。まだ結果は出ていないにしても、実行している改善策について伝えるようにしましょう。

今後の見通し

決算書は過去の結果ですが、決算書は融資審査に極めて大きな影響を与えてきました。確かに今でもそうなのですが、現在では一部金融機関を除き、企業の未来(将来性)により目を向けるようになっています。

そもそも融資というのは、その企業の未来のために実行するものです。「借りた資金で材料を仕入れ、そこから製造販売し利益を出し、そこから返済が可能です」「新たな機械を購入すれば、生産能力が2倍になり、利益は〇〇〇万円まで増加する見通しですから、返済に懸念はありません」と、企業が生み出す未来の利益が返済原資になりますから、自社の未来(今後の見通し)についてしっかり説明できるようにしなければなりません。

したがって、企業は金融機関に対して精度の高い経営計画書を提出する必要があります。できれば5年程度の中期経営計画を作成しましょう。内容としては、目標達成のため実行する具体策、予想損益計算書・貸借対照表、資金繰り見通しなどです。

そこまでは難しいとしても、少なくとも今期の数値計画(予想損益計算書、資金繰り予想)程度は必要です。こういう書類があるのとないのとでは今後の付き合い方に大きな差が出ます。

そこで注意したいのは、自社の強みや良いことばかりを語らないことです。どんな優良企業だって経営課題はあります。隠さずそれらについて今後どのように解決していくのかを説明すればいいのです。

今後1年間の資金繰り予定を伝える

金融機関は融資先がどんなに利益を出していたとしても安心できません。資金繰りに問題がないか、しっかり返済してもらえるかが重要ですから、今後の資金繰り予定を伝えましょう。

資金繰り表で説明

金融機関との融資取引においては、決算書や試算表は提出できても、資金繰り表までとなると、そこまでしっかりできている中小企業はそう多くはありません。

それだけに資金繰り表があると融資交渉には有利です。

そのためには、資金繰りの実績に加え半年から1年程度の予想を作成しましょう。

実績部分については試算表等から作成できますが、予想についてはやや難しいかもしれません。毎月の経費はこれまでの実績からある程度予想できるでしょうし、返済額や利息は返済予定表等から分かるはずです。

しかし、売上入金や仕入支払については、まず売上高の見通しを考えなければなりません。経営者だけでなく営業社員等も含めて保守的に予想します。そうすれば仕入高も予想できるでしょうし、入金や支払サイトから資金繰り予想ができます。

資金繰り表の作成は、今お付き合いされている専門家に相談するといいでしょう。もしそのような方がいないようであれば、当社の無料相談をご利用ください。詳しくは当社ホームページ「無料相談のご案内」を参照してください。

資金調達の予定を伝える

先ほど決算説明で自社の未来について語るべきであり、その中で資金繰り見通しを説明してくださいと申し上げました。

その理由は自社の資金繰り見通しを説明するためですし、いつ頃に資金調達が必要になるのかを知ってもらうためでもあります。

決算説明をしただけで満足するのではなく自社の要望も伝えましょう。

例えば、「自社で資金繰り見通しを考えてみたところ、11月あたりに現預金残高がマイナスになると予想されますので、その前に融資の相談をさせてください」と伝えるのです。

これにより、資金繰り管理がしっかりできている企業との評価を得られますから、金融機関は安心して融資を行えます。それに担当者としては営業目標の管理もしやすくなりますから、スムーズに融資を受けやすくなるでしょう。

多くの企業が、預金残高がかなり減ってきてから融資相談しています。困ってから「すぐに融資してください」と言ってくるようでは、資金繰り管理が杜撰な企業とのマイナス評価を受けてしまいます。