銀行員に騙された

銀行融資

銀行員は顧客のお金や情報など重要な物を取り扱いますから、信用第一の仕事です。そして、多くの人が銀行員は真面目で、不正はしない、信頼感ある方たちだと思ってお付き合いしています。

でも銀行員の中にも悪い人というか顧客を騙す人はいます。

銀行員に騙されて経営危機に直面した企業からのご相談が、残念ながら時々あるのです。

いくつ具体例をご紹介します。

粉飾決算のケース
銀行員としては、融資先の決算書は悪いよりも良いほうが新規融資はしやすいですから、決算申告の時期が近づいて今期は赤字の見通しだと伝えると、売上の前倒し、在庫を増やす等の粉飾によって黒字にしようとする銀行員がいます。いけないことではありますが、多少の数字をいじるくらいなら、それほど大きな問題にはならないでしょう。

ただ以前あったのですが、大口取引先が倒産したことで、多額の貸倒損失が発生した企業がありました。大幅な赤字と債務超過は免れません。しかし、リスケジュールで資金の流出を抑えれば再生は可能であったのですが、取引銀行の担当者は自分のノルマ(融資件数と実行額)を優先するため、架空売上の計上を強く指導したのです。経営者と顧問税理士は「明らかな売上の架空計上をして大丈夫なのだろうか」と不安だったそうですが、結局は担当者に押し切られそれに従ったのです。

そんな決算書でもその銀行からは資金調達ができました。予想できたことではありましたが、他の取引銀行からは明らかな粉飾を指摘され、金融支援は打ち切られ、結局は倒産しました。

信用保証協会を利用したケース
信用保証協会(以下、保証協会)は、中小企業の多くが利用する公的保証機関です。中小企業は担保や保証が不十分で、決算内容があまり良くなくても保証が出る可能性は高く、金融機関もリスクを大幅に減らして中小企業に融資をすることができますから、双方にメリットがあるといえます。

先月あったケースです。ある企業が設備資金の融資を受けたいと相談し、取引銀行はプロパー融資と保証協会付き融資を半分ずつ実行するという約束をしました。しかし、いざ融資実行となったら全額が保証協会付き融資でした。

保証協会の枠があまり残っていなかったので、社長は「今後の運転資金の調達に影響はないか」と担当者に確認をしたところ、「問題ない」との返事でした。

しかし、その後、運転資金を調達しようとしたところ、保証協会から「保証枠が一杯なため保証できない」との回答、銀行もプロパー融資は無理との返事でした。結局それが引き金となって倒産したのでした。ちなみにその後、担当者は騙したことを認めました。こんなのが今年は2件ありました。

保証協会に関連するものはそれ以外にも、取引銀行から保証協会付きでしか対応してもらえない企業に対して、当行で借換えしてくれたらプロパー融資を出すと営業してきたので、その企業は保証付き融資をすべて借り換えました。しかしその途端、プロパーは出ないと本部から言われ経営者は騙されたと気付いたのです。今までの金融機関とは関係が悪化してしまいましたので、しばらく資金繰りに影響を与えることになってしまったのです。

多くの銀行員は取引先企業のためにという気持ちをどこかに持っています。しかし、その中のほんの一部の行員は、自分のノルマだけを考え行動する者もいます。

いつもと違うことをする、こんなことして大丈夫だろうか、何かおかしいと不安に感じることがあったら、場合によっては倒産につながることもありますから、自分1人で判断しないようにしましょう。