赤字でも存続する企業

中小企業経営

決算書は赤字よりも黒字のほうが当然いいですが、黒字なら利益が資金化されて返済や、手持ち資金の充実、新たな投資に回すことができます。赤字ではそれらができないことになります。したがって、金融機関は赤字にはあまり良い評価をしません。では赤字の企業は、今後の事業継続が難しいのでしょうか、もう経営を諦めた方がいいのでしょうか。

赤字の原因

赤字といってもその原因はいろいろあります。例えば次のようなものです。

創業時

創業期は法人設立、採用、備品購入など多額の経費が発生します。しかし、まだ売上は徐々に増加している段階であれば、1期目の前半は赤字でも後半は黒字、しかしトータルでは赤字ということも多いです。それならばあまり気にする必要はありません。

災害の影響を受けた

例えば、「台風などの災害で設備が被害を受け特別損失を計上したことで赤字になった」。その期は赤字になっても、収益力が落ちたわけではありません。営業利益がプラスであれば問題はありません。

製造や営業面で影響を受け、営業利益で赤字の場合もあるでしょうが、今後の事業に問題がなければ創業時と同じく一過性の赤字としてもらえるでしょう。

高額な役員報酬

税務調査に来られたくない、あるいは経営者個人に資金をシフトしたいとの考えから、役員報酬を高額に設定していることがあります。その結果、損益計算書は赤字にはなってしまいます。しかし、例えば毎月100万円としても実際には50万円だけしか取っていないこともあります。

あるいは一旦100万円は取るけどすぐに50万円戻す(差額は未払金や役員借入金に計上する)こともよくあります。決算書は赤字になってもそれでキャッシュがプラスとなるなら、事業継続に関しては問題ないでしょう。

ただ、金融機関としては利益を出して欲しいと思うはずです。確かに、経営者に流れている資金を合わせれば返済は懸念ないとしても、企業だけの返済能力で問題がない、利益が出るようにしてほしいのです。

販売不振による赤字

自社の商品(製品、サービス含む)に魅力がない、より高品質な商品を他社で取り扱っている等の理由で売上高が減少している場合は、早期の業績回復は難しく金融機関の姿勢は消極的になるでしょう。

あるいは優秀な社員が転職した場合も、影響は大きいでしょうから対応は同じです。

赤字になった場合

では赤字になったら、金融機関の金融支援は無理なのでしょうか、事業継続を諦めなければならないのでしょうか。

一時的な赤字なら問題になりませんし、役員報酬も引き下げてプラスになるのならいいでしょう。しかし、販売不振や人材流出により赤字なら、何もしなければこのまま倒産となるでしょう。

これから黒字になり事業継続できる見通しがあるかがカギとなります。

取扱商品やサービスは他社よりも優位性がなく、赤字解消の見通しがまったく立たないなら廃業を選ばないといけないかもしれませんが、事業継続が可能そして成長性が見込める強み・能力が自社にはあるかを社内で検討してみることが必要です。

当然、金融機関が金融支援するには、それらがあるかどうかが審査上重要となります。そうでなければ融資しても返済してもらえませんし、リスケジュールをしても無駄になってしまいますから。

自社の問題点や課題を認識し、自社の強みというかお客様から評価されるところはどこか、そこから経営改善策を策定して、継続かつ将来の成長が見込めることを説明できれば、プロパー融資は無理でも保証協会付き融資や日本政策金融公庫による支援、リスケジュールによる金融支援の可能性は十分にあります。

それと経営改善計画書を作っただけで、今までと同じように経営している経営者が本当に多いです。改善するという経営者の強い意欲が大切です。計画を策定した経営者自らが主体的に行動している中小企業は、経営改善の速度が速いです。そうでない企業は多少延命できたとしても、そんな遠くないうちに廃業となることが多いものです。