金融機関に融資あるいは返済額の見直しをお願いするとき、経営者は担当者に交渉しなければなりません。資金を調達するのなら、「何にお使いですか(資金使途)、いくら必要ですか(必要額)、どのようにして返済されますか(返済原資)」等の質問を受けます。
資金繰りが苦しくて返済額を軽減したいのなら、いくらまで減額すればいいのか、どのようにして経営を立て直すのか、そして返済計画等について質問を受けるでしょう。
貸す立場にある金融機関がこれらの質問をするのは当然のことですが、交渉の場で説明するのが苦手な経営者がいます。だから交渉を代行して欲しいというご相談が意外とあるのです(代行は法律に触れるのでできませんが)。
苦手な原因
金融機関との交渉が苦手な原因としては次のようなものが考えられるでしょう。
業績悪化で立場が弱い
経営が順調で頻繁に金融機関が訪問して来る立場なら、こちらも強気で交渉に臨めますから苦手な経営者はいないでしょう。しかし、経営が悪化している企業への金融支援は金融機関としても慎重になります。
特に返済額の軽減(リスケジュール)についてはすでに融資をしてしまっていますから、どのように経営を正常に戻し返済を再開できるのか、かなり厳しい質問も受けることもあります。経営改善計画書を提出しても内容が実現可能性に乏しいものなら、交渉が難航することも考えられます。
そんな状況では企業側が頭を下げる立場になりますから、金融機関との交渉は嫌だと思います。プライドの高い経営者なら、それが原因で資金繰り改善が遅れ経営に大きなダメージを与えることもあります。
隠し事があるから
企業経営を続けていれば、あまり話したくないような失敗や経営上の問題点もあるものです。代表的なものとしては粉飾決算があります。
しかし、金融機関に知られたら融資に消極的になるのではと不安になり、極力隠すようになります。だから交渉時も積極的にはなれないのです。
また、経営者の一部には金融機関を敵と考える方がいます。こちらが不利になる情報を敵に渡すわけにはいかないと、交渉でも自社に有利な話ばかりして不利な内容には触れません。
そういう姿勢は金融機関も感じ取りますし、経営課題がなく順調な企業なんてありませんから、かえって警戒されることになります。
金融機関は敵ではありません。常に味方となってくれるとも限りませんが。過去に嫌な思いをしたとしても今の担当者には関係ありません。ビジネスパートナーと考えるようにしてください。
人と話すのが苦手
金融機関との交渉時において、自社の状況等について説明する必要はありますが、上手に話せる必要はありません。
質問には丁寧に対応すればいいだけです。緊張してうまく話せない、どもってしまう方がいるかもしれませんが、上手に説明できるかが問題ではなく、経営者が自分の口で正しい説明できればいいだけなのです。
だから、「私は人と話すのが苦手で」という方、心配する必要はありません。
金融機関の考え方を理解できない
金融機関の考え方を理解できない経営者もいます。金融機関と交渉するのはいいとしても面倒なのは次のとおりでしょう。
・担当者が相談を受け支店長あるいは本部の承認を得るまで日数を要する
・審査に必要だといろいろな書類を要求される
金融機関が預金者のお金を棄損させることなく、かつ中小企業に少しでも低金利で融資するためには、慎重に審査する必要がありますし、そのためにも様々な書類を要求するのは当然のことです。そんな金融機関の立場を理解しなければなりません。
しかし、理解できない経営者は「書類なんて作成するのは面倒だ」「(自分の資金繰り管理が疎かだったのに)すぐに必要なのだから早く融資をしろ」と言うのです。
このような経営者は金融機関との面談どころか良好な関係を構築することも難しく、交渉を丸投げしたい方が多いです。そして、すぐに結果が出るよう粉飾決算や政治家の口利きに頼る傾向があります。
事前に準備
事前に準備をしておけば少しは落ち着いて交渉ができるのではないでしょうか。例えば前期の決算は赤字、今期も試算表を見ると赤字になっている企業であれば、今後の業績見通しや決算予想を作成しましょう。加えて経営悪化の原因や改善策も説明できるよう準備してください。
融資やリスケジュールの相談をするのですから、資金繰りに悩む経営上の問題が何かしらあるわけです。それらに対してどう取り組んでいくのか、そして融資をすることで今後の経営にどうプラスになるのか、資金繰りはどのように改善されるのか、これはどんなときでも金融機関が知りたい内容です。
それを準備しておけばどんな質問を受けても落ち着いて説明ができます。
また、いつも決算書と試算表しか出さない企業よりもずっと評価は良いでしょう。
専門家の協力を受ける
とはいってもどうしても一人では不安なら、協力を受けることも考えましょう。
外部専門家の同席を嫌がる金融機関が一部にはあるかもしれません。あるいは最初は金融機関担当者と経営者の2者面談、途中から専門家の同席が認められることもありますが、最初から同席して説明のお手伝いをさせて頂ける機会が多いと思います。
あくまで面談時は経営者がメインとなって対応するべきですが、専門家に同席してもらって細かい説明についてサポートを受けるのもいいでしょう。顧問税理士あるいはすでにお付き合いのあるコンサルタントがいればそれらの方が良いと思います。
当社でも顧問先の銀行交渉に同行することがよくあります。
もし、みなさんにはそのようなサポートをしてくれる専門家がいなければ、お近くにいないか探してみましょう。もしいなければ当社でお手伝いができるかもしれません。ぜひ一度、当社サービスのページ「金融機関との融資取引サポート」をご覧ください。