手元資金確保の重要性

資金繰り

手元にある資金が潤沢であり、金融機関からも「借りてください」とお願いされる経営状況にあるなら、経営者が資金調達に費やす時間は極めて少ないですから、経営に集中して業績の拡大にもつながりやすいでしょう。

経営が順調なうちは経営者が資金調達にかける時間が労働時間の10%であったとしましょう。そうすれば90%は営業活動、人材育成、新たな商品やサービスの開発など、前向きなことに時間を使えます。

しかし、徐々に経営が悪化してきて手元資金が減少し、資金調達に時間がかかるようになれば、これまで90%の前向きに使えた時間が減ってしまうことになります。金融機関を訪問して説明をしたり、提出を求められる書類が増えたり、そうなれば本業にしわ寄せが来てしまいます。

もし資金繰りや資金調達のために使う時間が50%にまで拡大してきたら、かなり危険な状況にあるといえるでしょう。さらに半分以上が資金調達で本業は半分以下にまでなると、経営改善はかなり難しくなってきます。その頃には、税金が滞納、ノンバンク等からの資金調達、粉飾決算を行うなどの状況にあるはずです。

経営者が本来取り組むべき業務に集中し、資金繰りなどの本業以外で時間や体力を消耗しないよう、やはり余裕のあるうちから手元資金をしっかり確保しておくことが必要です。傘を貸してくれるうちに資金調達し、傘を貸してくれない間も資金繰りに悩む必要がないようにすれば、自社の再生できる可能性は高くなるのです。

「資金調達や金融機関との交渉に費やす時間が増えてきたな」と感じたら、直ちに経営改善の実行が必要なのです。しかし、そう感じる前に動くのが理想的なのでしょう。

当社で受けるご相談の多くは、資金繰り50~90%、本業10~50%の中小企業からです。それでは遅すぎます。延命はできたとしても再生できる可能性は低くなってしまいます。そうなる前に当社のようなコンサルタント会社、あるいは顧問税理士に相談していただきたいと思います。

それなのに「まだ何とかなるだろう」と思ってこれまで通りの経営を続けていると、いつの間にか大切な時間が余計なことに取られてしまい、本当に大変なことになってしまいますよ。

今後も資金繰りに悩むことが全くない経営をするのは無理でしょう。しかし、極力悩まないで済む経営をするためには、余裕のあるうちから今後の経営をどうしていくべきかを考え行動することなのです。

そのためにも、金融機関には試算表や資金繰り表を定期的に提出しましょう。期首には簡単でもいいから経営計画書を作成して金融機関にも提出し、進捗状況を報告するのがいいでしょう。