専門家といっても優秀とは限らない

銀行員と経営者の面談 中小企業経営

数年前のことです。私の家の近くに結構大きな病院があるのですが、はっきりいって診察が杜撰で、(前のカルテを見て)病気と全く関係のない薬を処方するし、息子が胸の苦しみを訴えても、ただの風邪だとしてろくに診察しませんでした。次の日に別の病院で診察してもらったら死亡する可能性もあるということで、ある大学病院に入院することになったことがありました。医師といっても能力は様々です。

専門家が優秀とは限らない

しかし、このようなことは医師だけでなくコンサルタントや士業等の専門家でもよくあることです。

当社の顧問先で建設関係の仕事をしている会社さんがあります。お付き合いが始まった頃は年商1億円前後だったのですが、1千万円程度の赤字が続いていました。その赤字の原因は社長や家族の給与が非常に高額だったためでした。

その理由について聞いてみました。すると、数年前に資金繰りが苦しくなり銀行から融資を受けようとしたところ、当時の顧問税理士から「銀行からお金を借りなきゃならないような会社は、経営が正常な状態とは言えないから廃業しろ」と意味不明な理由で怒られたと教えてくれました。とても信じられないのですが、社長のご家族みなさんがそうおっしゃるので間違いないのでしょう。銀行から融資を受けると税理士に怒られるからと、仕方なく個人で金利が高い消費者ローンから借りて会社に資金を入れており、増えていく元金と利息を支払うために年々給与が高くなっていたのでした。

ここまでおかしなことを言う専門家は少ないかもしれません。しかし、どうみてもお手伝いしている企業の業績が異常な状態にもかかわらず、何のアドバイスや支援をしない、あるいは誤ったアドバイスを教える専門家は結構います。

それでは経営を良くするどころかより悪化させるだけです。

不正な方法を指導する専門家にも注意

絶対に相談して欲しくないのが、不正な方法をアドバイスする専門家です。

例えば、資金調達に成功したら実行額の数%を成功報酬として取る専門家がいます。もちろん正当なやり方でコンサルティングされている方もいますが、そういう専門家の中には粉飾決算で金融機関を騙す方法で成功率を引き上げる方がいます。成功報酬も後になって考えてみたら結構取られていた企業もありました。そういう専門家にも注意して欲しいのです。あと、権力者(政治家、政治家の秘書など)を紹介する方法で融資を引き出そうとする人脈コンサルタントみたいな人とかもいます。そういうのも紹介料がかなり高かったりします。

粉飾決算で資金調達しても自社の返済能力を超えた融資を受けるわけですから、いずれ資金繰りは悪化していきます。一時的に経営難を逃れることができるだけです。また仮に権力者を利用しての融資が成功したとしても、そのような圧力に現場の行職員は良いイメージを持ちません。
ホームページだけでは分かりにくいのですが、そういう方法を使うという提案を受けたらぜひ避けてください。肩書や資格に惑わされず、自社の経営に貢献してくれるコンサルタントを選ぶようにしましょう。

不景気に入って中小企業の経営が悪化してくると、資金調達を支援しますよと悪い組織や自称専門家が皆さんに近づいてくるかもしれません。十分注意してください。

耳の痛い事を言う専門家を大切に

誰でもそうだと思いますが、厳しいことを言ってくる人より優しい言葉をかけてくれる人に近づきたくなるものです。そして、選択肢がいくつかあったら楽な方を選びたくなります。

経営改善を支援しているコンサルタントや士業の中には、経営者に対して耳触りのいい話ばかりする人がいます。

例えば、経営悪化が深刻な経営者にやさしく近づき、「経営改善計画なんて社長さん作れないでしょ。私がすべて作ってあげますよ」、「社長はもう何もしなくていいです。経営のことは私にすべて任せてくれれば大丈夫です」と言ってくるコンサルタントは実際います。

資金繰り、銀行交渉、業績悪化で問題が山積みの時に、そんな事言われたらすべて任せたくなる経営者さんはいると思います。確かに、私も「銀行さんが納得してくれるよう、うまく計画書を作ってくれませんか」と言われたことが何度もあります。

当社は経営者さんと一緒に経営を良くしていく取り組み方をしています。業務の中では耳の痛いことを言わなければならないこともあるし、面倒なこともしてもらうケースもあります。すると、何でもやってくれる専門家よりも面倒だと感じる経営者さんは残念ながらいます。

しかし、本当にそれでいいのでしょうか。「コンサルタントや金融機関から厳しいことを言われたくない」、「もう面倒なことからはすべて逃げたい」、という経営者に従業員がこれからも付いてきてくれるでしょうか。従業員だけではありあせん、取引先や金融機関も支援しようなんて思わないでしょう。
たとえ、コンサルタントにすべて任せて再生することができたとしても、経営者自身が変わっていなかったら、いずれまた経営は元の状態に戻る可能性が高いです。自社の再生のためにも、すべてお任せの専門家に頼ってはいけないのです。

それと、経営者の意見に迎合してばかりのコンサルタントにも注意が必要です。

中小企業の経営者は、自分の意見に反対してくるより、支持してくれるコンサルタントが好きです。コンサルタントも経営者の意見に迎合した方が契約を続けてもらいやすくなります。私もそうすればもっと儲かると思ったことがありました。

でも、それって企業のためにはなりませんよね。

経営者自身の判断が間違っていたから経営が悪化したわけです。そのままの状態で今以上に頑張っても間違ったまま進んでいくだけです。だったら、社内やコンサルタント等の意見を参考にしながら、経営を見直していった方が効率よく改善が進みます。

中小企業だと社長である自分に意見を言う人が少ないかもしれません。だからこそ、耳の痛いことも素直に聞く姿勢を大切にして下さい。

セカンドオピニオンの活用

当社が経営相談で伺うと、長年の付き合いだからと自社の経営に全く貢献していない専門家を使っている企業に出会います。ひどい場合は足を引っ張っていることも。だから不満に思って当社に相談されるのです。ただ、変更を前提に他の専門家を探すべきですが、それができないこともあるでしょう。

そんな時は、今の専門家と付き合いながら、別の専門家とのお付き合いも検討するべきです。医療の世界ではセカンドオピニオンという言葉が聞かれるようになってきました。経営についても同じだと思うのです。今お付き合いの専門家のアドバイスに疑問を感じたときは、他の専門家の意見を求めるのもいいでしょう。

当社では「経営セカンドオピニオン」を行っていますし、無料相談も実施中です。詳しくはこちらを参照してください。