人件費削減は最後に

中小企業経営

業績の悪化を理由に今までの返済が困難になった場合、まずは新たな資金調達の可能性を探り、それが無理ならリスケジュールという流れになるでしょう。

金融機関としては、企業の売上拡大と経費削減を行い、利益をどうやって増やしていくのか具体策を知りたいでしょうし、企業側も当然それを考え実行し正常な経営状態に戻さなければなりません。

売上の増加は、自社の商品、製品、サービスがどんなに良くとも、顧客が買ってくれるかどうかという外部の影響もあることですから、結果が出るには時間がかかります。経費削減は自社だけで決めることができるうえに、実行すればすぐに効果が出ます。だから、リスケジュールと同時に無駄な経費を見つけ削減しなければなりません。金融機関もそれを期待しています。

人件費削減から人材育成に

経費で大きなウエイトを占めているのは人件費です。これを大幅に削減すれば利益が出る企業が多いと思います。

以前は経営改善計画を策定する場合、経費削減といえば人件費のカットを実行することが多かったし、金融機関もそれを求めてきました。しかし、現在は中小企業の多くが人手不足ですし、リスケジュールを申請する企業はすでに給与の引下げや人員削減を行っている事が多く、これ以上は難しいことが多いでしょう。

給与引き下げを行えば従業員の退職も引き起こす可能性も高く、経営改善どころではなくなります。

人件費を削減して利益を出すのではなく、むしろ従業員の待遇面をしっかり守り、人材育成に力を入れ一人一人の能力を向上させ、企業の稼ぐ力を付けていく経営改善が必要でしょう。

 

役員報酬は高額なら削減

経営者と従業員では立場が異なりますから、リスケジュール等による金融支援を受けるためには、経営者として経営悪化の責任を取らなければならないケースがあります。

役員報酬が高額であれば、金融機関が削減を求めてくることは十分に考えられます。それが原因で赤字になっているのなら、経営者自ら率先して実行することも必要となります。

ただ、高額でなければ引き下げを求めてくることはまずありません。経営者だってそれほど高額でもない役員報酬をさらに引き下げたら、経営改善のモチベーションは下がってしまいます。従業員よりも先に役員報酬は削減すべきですが、人件費削減は最後だといえます。

なお、経営者個人から自社への貸し付けがある場合、役員報酬を削減して、貸し付けた分を返済してもらう方法もあります。

この方法は損益計算書は改善されますし、経営者個人の税金や社会保険料が削減できるメリットもあります。しかし、これによって損益計算書は黒字になったとしても、今まで通りの生活レベルを維持するために、法人から個人に多額の資金が流れているのなら、黒字でもキャッシュフローは改善されていませんから、金融機関からの評価は得られないでしょう。

個人の支出を公開する場合も

経営者にも生活があります。それに自社の資金繰りのために個人的に借りた資金を投入していることも珍しくはありません。

以前ご支援した顧問先が、リスケジュールをお願いしに行ったら、個人の支出の内訳を書いて提出しろと言ってきた金融機関がありました。記入用紙には、家賃や住宅ローン返済、その他返済、食費、水道光熱費、教育費、こづかいなど、項目はかなり細かく書いてありました。

もし金融機関の役員報酬引き下げ要求に納得がいかないのなら、個人の支出内訳を説明したり、それ以外の経費削減や売上増加策を説明したりして、役員報酬削減は不要(あるいは不可能)であることを理解してもらいましょう。