企業向けの融資審査において、まずは資金使途(何に使うのか)そして返済能力(返済となる原資は何か)が大切です。その2つに問題がなく、かつ財務内容が良好であれば、融資が実行される可能性は非常に高いです。
しかし、財務面は重要ですが経営者の経営能力や人間性も大切です。特に中小企業では経営者の能力が大きく影響します。もし経営者の能力、人柄や性格に大きな問題があれば、銀行融資が断られる場合もあります。
財務内容に問題があるとしても、例えば「計画内容について経営者の能力からして実現可能性が高いと判断される」、あるいは日頃の付き合いから「経営者が真面目で経営課題から逃げずに取り組んでいる」ことが分かれば、そのような企業に対しては、「何とか金融支援を行えないだろうか」と金融機関は考えるのです。
マイナス評価の例
では、どのような経営者だと金融機関はマイナス評価をするでしょうか。次のような経営者さんは要注意です。
融資交渉から逃げる
中小企業経営者の中には、金融機関との交渉から逃げようとする方がいます。「数字が苦手だから財務内容について質問を受けても答えられない」、「決算内容が悪いと担当者から厳しい対応を取られるかもしれないから嫌だ」、そんな理由からコンサルタントや経理社員に任せたいとなるのです。
同席してもらって説明の補助をしてもらう程度ならいいですが、すべてお任せでは問題があります。金融機関としては、そんな経営者ではやる気や資質を疑うし、いざとなったら経営から逃げてしまうのではと不安になるのです。
特に経営が苦しい時の交渉こそ逃げずに経営者自身が前に出るべきです。
自社の数字が分かっていない
決算書の数字をすべて覚える必要はありませんし、財務分析をする必要もありません。ただ、直近の決算書の売上や利益、金額の大きい経費がいくらだったかぐらいは覚えていないと、経営に真剣に取り組んでいるのか姿勢を疑われかねません。
数字に弱い経営者がいる企業は倒産リスクも高いです。
新規事業に熱心すぎる
新規事業を考えたらダメということではありません。しかし、本業がしっかりしていないにもかかわらず、新規事業のことばかり考えている経営者がいる企業は、倒産リスクが高いのは間違いありません。
以前お付き合いしていた顧問先ですが、毎月訪問するごとに新規事業の話が出てきました。話を聞いていると確かに需要があって儲かりそうなのですが、本業が安定もいないうちに儲かりそうだからと次々に手を出す、これでは本業が影響を受けます。
「事業の柱をいくつも作るのはいいことだろ」という意見もあるでしょうが、限られた経営資源が分散され、本業すら倒れてしまいます。金融機関としても本業を安定させてそれから新規事業をと考えます。
公私混同
自社の運転資金や設備資金と説明して融資を受けているのに、その資金を経営者個人が使っている、これは非常にマイナス評価を受けやすい行動です。
資金使途と返済原資を確認して融資をしているのにそれと全く違う使い方をするのですから、その資金からは利益を生まないし、徐々に経営を悪化させ返済能力にも影響を与えます。そもそも嘘をついて金融機関を騙し信用を失います。
経営者の贅沢な生活や株式投資等のために、融資してもらった資金を使うようなことは絶対にやめましょう。
担当者への対応が悪い
一般的に、融資を受ける企業側が金融機関に頭を下げて「融資してください」とお願いするイメージがあります。しかしその逆で、担当者に高圧的な態度を取る経営者がいます。そのような態度はやはりいい印象を持ってもらえません。
それでも業績が良好ならば担当者も成績がありますし融資は出るでしょう。しかし、そうでない場合、丁寧な対応をしてくれる経営者と、そうでない経営者では、前者のほうを担当者だって積極的に応援したくなるものです。
時々、支店長にはペコペコ頭を下げて、担当者には大きな態度を取る人がいます。担当者の感情を侮ってはいけません。気を付けましょう。
約束が守れない
約束した日時に訪問できず遅刻する、必要書類を忘れるあるいは提出できないなどです。約束が守れない経営者は信用できません。人として基本的なことですから必ず守りましょう。
私も約束を守れない経営者と出会ってきましたけど、だいたい碌な人いませんね。
もし何か避けられない事情ができてしまったら、金融機関には早めに連絡してください。
プラス評価を受けるには
ここまで金融機関からマイナス評価を受ける経営者の行動を説明してきました。ではどうすればいいのか、それはマイナス評価を受けることをしない、つまり経営者なら当然のことをするに尽きます。
経営者なら苦手であっても、毎月の試算表を見る、内容が分からなければ税理士や経営コンサルタントに教えてもらえばいいのです。そして融資交渉は自分が中心になって対応してください。
また、約束を守る、嘘をつかない、これは人として当たり前のことです。金融機関から信用を得ることができれば、いざという時に助けてもらえる可能性が高くなります。