多くの方は目が見えにくくなってきた、歯が痛くなってきた、何か症状が出てから医者のお世話になると思います。しかし、私はそうなる前に対処したいと考えています。
歯は痛くなってからでも治療すれば完治するでしょう。ガンも早期に発見すれば生きられる可能性は高くなりますが、発見が遅れたらガンが大きくなったり、他に転移していたりして死亡の可能性が高くなるでしょう。
年に1回は経営の健康診断を
企業においても同じことがいえます。
倒産した企業のほとんどが、突然死ではなく破綻する前から徐々に兆候が現れています。しかし、それに気がつかない、あるいは気がついていたとしても、現実から目を背ける、まだ何とかなるだろうと誤った判断をしてしまいがちです。そして、このままでは数か月後には経営破綻だというレベルに至って、ようやく何とかしなければと行動に移すのだけれど、すでに手遅れになっているのです。数か月先ならまだ良い方で、より深刻な状態の企業からご相談を受けることもあります。
「たかがそれぐらいで医者に行くなんて」という考えは、企業経営では後に大きな後悔を残すことになりかねません。
(行かない人もいるようですが、)多くの経営者は年に1回は健康診断に行くでしょう。しかし、経営者は自身の健康については意識しても、企業の健康診断(経営診断)をしてもらうことはまずないと思います。
決算書の内容について問題を指摘してもらいましょう
決算書が完成したら税理士から説明はありますか。税理士あるいはコンサルタントから決算書の内容について問題点があれば指摘してもらいましょう。どんな小さなことでもいいですから、気になった点を教えてもらってください。
決算書を過去3期以上並べてみましょう。売上高や利益の減少、利益率に悪化の傾向がないか、現預金が減少し借入金が増加傾向にないか等が分かりやすくなるでしょう。
中小企業経営者の多くが売上高や利益、納税額だけが気になり、損益計算書にしか関心を示さないのですが、貸借対照表やキャッシュフロー計算書にも目を向けて下さい。そして、過去から現在までの流れから、悪化の傾向にある数値はないかをチェックしてください。
金融機関からもアドバイスをもらおう
決算書が完成したらできるだけ早めに提出してください。その時に決算書の内容を説明するとともに、金融機関からアドバイスをもらうのがいいでしょう。自社と同業の融資先がいくつもあるのでしたら、他社との比較や動向等、参考になることを教えてくれるかもしれません。
経営自己診断システム
専門家や金融機関に頼らなくても、自分で経営自己診断できるサービスが提供されています。中小企業基盤整備機構が提供する「経営自己診断システム」です。
このシステムに決算書に記載された財務情報を入力すると、同業他社の財務データと比較することができます。各業種数千から数万社の同業他社データと比較できる便利なサービスです。
無料ですし、しかも企業情報や個人情報の登録が不要ですから情報漏洩の心配もありません。
ぜひ一度は利用して欲しいサービスです。
問題が小さいうちに対処する
専門家からのアドバイスやサービスを利用し、問題点が明確になれば対応策もはっきりします。
病気でいえば、症状の軽いうちに対処すれば完治する可能性は高く、放っておけばおくほど治らないあるいは死亡という結果になります。せいぜいできることといえば延命治療位になってしまいます。当社でも多額の税金滞納や規模の大きい粉飾決算をしている企業からのご依頼がありますが、どうしても事業継続が難しいケースが多いです。
したがってそうなる前に、顧問税理士や経営コンサルタント等から年に1回は経営診断をしてもらった方がいいと思います。「まだなんとかなるんじゃないか」「このまま頑張れば良くなるだろう」と自己判断は大変危険です。
ぜひ、正常な状態の時から定期的に経営診断を行っておきましょう。