簡単な決算書分析の仕方

財務分析 中小企業経営
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決算書は企業の通知表です。

損益計算書は1会計期間(通常1年間)の売上等の収益がどれだけあって、仕入、人件費、地代家賃等の費用がいくらあり、結果としていくら利益が出たのか経営成績が分かります。

貸借対照表は決算日時点での現預金、売掛金、棚卸資産、買掛金、借入金等がいくらあったのか財政状態を表しています。

決算書は金融機関が融資審査をする際の重要な材料となります。財務分析の結果である定量面、そして経営者の能力、販売力、技術力等の定性面から、企業の格付けを行い今後の融資方針を決定しています。

しかし、決算書の見方がよく分からないからと、あまり内容をよく確認しない経営者が多いようです。せいぜい利益が出ているのか、売上高は増加したのか、その程度です。

簡単な決算書分析の仕方

財務分析というと何だかとても難しいと感じるでしょう。よく知られた財務指標としては、EBITDA有利子負債倍率、ROA、ROE、自己資本比率、債務償還年数、流動比率等があります。

こういうのが大好きな経営者が稀にいますけど、そんな難しい事なんて知らなくても大丈夫です。知っていて無駄な事はありませんが、次のように自社の決算書を見てみましょう。

1,過年度との比較

簡単な決算書分析方法があります。それは過去と比較することです。

人間も健康診断の結果を見る時、過去と比較すればどこが良く(悪く)なってきているのか分かりやすいでしょう。それと一緒です。金額や利益率の変化に注目してみましょう。

①金額の変化

例えば次のように販管費が100万円増加した、そして売上高が1,000万円減少したとしましょう。

・販管費が100万円増加した
100万円増加した内訳として、広告宣伝費が前期よりも100万円増加したとします。しかし、その事実を知って終わりではなく、何に使って増えたのか確認する必要があります。

例年よりも広告宣伝費を多く使ったのなら、それに見合った売上増加ができたのか、求人募集の広告費なら優秀な人材が確保できたのか、そこまで見る必要があるのです。

その結果、100万円の支出は効果があったのか、あれば今後もその広告を利用するという判断になるし、そうでなければこの広告費は見直すということになるでしょう。それを行っていなければ、今後も無駄な広告宣伝費を垂れ流す可能性がありますし、逆に効果があったのに削減してしまう誤った経営判断を下すことになってしまいます。

・売上が1,000万円減少した
こんな時「あーあ、売上が減っちゃった。景気悪化の影響もあったから仕方がないか。これからはもっと気合い入れて頑張ろう」で終わってしまう経営者さんいませんか。

売上は業種によって違いはありますが、「売上=販売単価×販売数量」に分解することができます。

販売単価が低下しているとしたら価格競争が影響しているかもしれません。

販売数量が減少しているとしたら、外部要因としては天候不順が続いたことで来店客数が伸びなかった、内部要因としては商品在庫が少なく販売機会を逃した、接客サービスに問題があった等、何らかの問題があったはずです。

減少理由を経営者が中心になって原因の追究、そして改善策を考えていきましょう。

②利益率低下

前期比で売上高はそれほど変化がないにも関わらず、利益率が低下していることはないでしょうか。

この場合は、仕入や外注費等の売上原価、販管費の増加を販売価格に転嫁できていないわけですから、販売価格の見直し、仕入先の見直し、固定費の削減等を実行しなければなりません。

さらに商品あるいは売上先ごとに利益率を集計してみることも必要でしょう。

2,参考資料やシステムの利用

自社の決算書を見比べてみたところ、改善されている、あるいは悪化しているといった結果は明らかになったとしても、やはり経営者なら「当社は他社と比べてどうなのだろうか?」と思うでしょう。

「うちの決算書は良いのか悪いのかよくわからない」、「うちだけでなく他社も赤字のところが多いのだろうか」、「他社はうち以上に利益を出しているのではないか」あるいは「同業他社の利益率は当社と同じぐらいなのだろうか」ということを知りたい経営者は多いのではないかと思います。しかし、他社の決算書を見る機会はまずないでしょう。そのようなときに参照して欲しいのが次のサイトです。

・財務省の「法人企業統計

法人企業統計の調査対象は大企業や中堅企業が中心です。

・日本政策金融公庫の「小企業の経営指標

小企業の経営指標は中小企業を対象としています。結構業種が細かく分類されていますから、やや特殊な業種であったとしても同じ業種を見つけやすいですし、かなり参考になると思います。

経営自己診断システム

経営自己診断システムというサイトがあります。自社の決算書の数字を入力していくと、デフォルト企業や業界標準との比較を行うことができます。難しくないですし利用も簡単、しかも無料で使えます。

あくまでも参考程度に

他社の数値を参考にすることはいいと思います。やはり経営を改善していくには目指すべき目標はあった方がいいですから。ただ、あまりそれを気にしすぎるのも問題です。

平均値よりも劣っているから自社の経営が駄目ということはありません。なぜなら、それらの数値は全国的な平均値であって地域によって異なりますし、それに規模によっても差は出ます。粗利益率の業界平均が例えば35%であったとしても、自社が小規模企業ならばそれよりも低いことはよくあります。

業種が一緒でも扱うものが違えば数値にも差が出ることもあります。例えば、ワインを扱っていたとしても、数百円から数千円が中心のお店と、数万円以上を扱っているお店とでは、利益率や回転率は違います。

多少数値が悪かったとしても、人間で例えたら体重が少し平均よりもオーバーしている、血圧が少し高いのと同じです。度が過ぎれば直ちに改善しなければなりませんが、多少悪い(劣っている)程度なら個人差もありますし、少しずつ良い方向を目指していけばいいのです。

同業他社の数値は気になるかもしれませんが、「悪かったからうちの会社は他社よりも劣っている」とだけは決して思わないで下さい。