信用保証協会が嫌がる行為

銀行融資

信用保証協会は、中小企業にとっていざという場合に頼りになる公的保証機関です。金融機関がプロパー融資では対応できなくても、保証が付けば融資が出やすくなります。日頃の資金調達だけでなく、コロナウイルス、東日本大震災、リーマンショック等の非常時に助けられた経営者も多いはずです。

したがって、信用保証協会とは常に良好な関係でありたいですし、裏切るような行為は絶対に避けなければなりません。

次の行為は絶対にやめましょう

信用保証協会との付き合いでやってはいけないことは次のとおりです。

粉飾決算

金融機関を通して信用保証協会にも決算書は提出されます。決算書は保証審査に重要な役割を果たしますから、粉飾が発覚すれば今後どんなに正しい数字の決算書や試算表を提出しても信頼されません。発覚すれば今後の保証が期待できないぐらいに考えた方がいいです。

当社の顧問先で1社、それでも保証が出ている企業がありますけど極めて稀なケースです。

資金使途違反

資金使途は大きく運転資金と設備資金に分けられます。設備資金とは機械、土地や建物、車両などを購入するための資金です。

設備資金として借りたのに仕入代金の支払いに充てた、運転資金として借りた資金で設備を購入した、これらは金融機関や信用保証協会に説明した資金の使い道とは違いますから、資金使途違反となります。

「バレやしないよ」と思うかもしれませんが油断しない方がいいです。設備資金なら融資実行と同時に購入先への振り込みを求められるから見つかりやすいでしょうが、運転資金ならそんなことはないので分からないかもしれません。

しかし、以前ご相談を受けた企業は、運転資金で設備を購入していました。そしていざ運転資金が欲しいという時に、信用保証協会担当者から「すでに必要な運転資金の保証をしている。これ以上は保証できない」との回答。しばらく融資が無理となってしまいました。

最悪の場合は一括返済を求められます。実際にはそこまでされないにしても、今後の保証審査に大きなペナルティを受けることになります。

他者へ転貸(又貸し)

貸借対照表の資産の部に、貸付金や仮払金、あるいは実際には存在しない多額の現金が計上されていませんか。

信用保証協会付き融資で調達した資金が経営者やその家族等に流れているというケースです。

これも商品仕入資金などと説明して経営者個人に流れるわけですから、資金使途違反と一緒かもしれません。ただこちらは事業に使っていない違いがあります。

経営者に貸付けている場合の多くは、すぐに返済してもらうことが難しかったりします。自宅や自家用車購入などに使っていたりするから返済原資がないのです。だから決算書に貸付金などが残ったままになってしまうので、先ほどの資金使途違反よりやっかいです。

少額ならあまり問題にはなりませんが、ある程度の金額になってくると指摘される可能性があります。そうなれば今後の保証に影響しかねません。

顧問先でも経理が一時期杜撰になり貸付金と現金が膨れたことがあり、東京信用保証協会から「これ以上増えたら今後は保証しない」と問題にされたことがありました。

経営者の役員報酬から少しずつ返済し改善を図っているところですが、解消するまで時間がかかりますから要注意です。

企業が調達した資金は事業にだけ使う、経営者は自分が欲しいものは自分のお金で買う、こんな当たり前のことですが、今後の資金調達のためにも徹底してください。欲しいおもちゃやゲームがあったら、お小遣いをためて買うことを子供だって知っています。大人ができないはずありません。

旧債振替

これまでの3つは金融機関も嫌がることです。そしてこの旧債振替は、信用保証協会だけが嫌がることです。

新しく調達した資金で既存の借入金を返済することを旧債振替といいます。

これは経営者よりも金融機関から提案されるかもしれません。よくあるのが、プロパー融資は金融機関がリスクを負う融資です。でも企業の業績が悪化しリスクが上昇したら、信用保証協会付き融資で借りさせて、プロパー融資の返済に充てさせたいのです。

これは禁止されている行為なのですが、金融機関の中には経営者にうまく説明して、旧債振替が行われることが時々あります。

もし取引金融機関からこのような提案があったら断ってください。金融機関にしかメリットがありませんし、企業は保証枠を使われてしまうだけですから。そもそもそんな金融機関とは取引を見直した方がいいです。

一般的にプロパー融資の方が金利などの条件が悪いため、信用保証協会付き融資で借換えを希望する経営者もいますが注意しましょう。

今後の資金調達に影響が

みなさんのお近くに金融機関は地方銀行や信用金庫等、いくつか選択肢はあるでしょうが、一部を除き信用保証協会は都道府県に1つしかありません。

したがって、信用保証協会から問題視されるような行為はしないことです。業績が悪化して保証が受けられないことは仕方ないですが、それは経営努力によって挽回することができます。しかし、先ほどのような例で問題が発覚すれば、せっかく業績が好転しても保証が受けられなくなります。あるいは受けられるにしても通常よりも手間がかかることに。

金融機関からプロパー融資の提案を受けている企業は、信用保証協会の世話になることはないかもしれません。ただ、それがいつまでも続くとは限りません。金融機関の対応が冷たくなったときは世話になります。そんな非常時に資金調達ができないなんてことがないよう注意してください。