粉飾決算を金融機関に伝える

銀行融資

銀行融資対策で粉飾決算に手を出してしまったものの、その規模が大きくなってしまいどうしたらいいのか悩んでいるのか、それともこれから粉飾をしようかと考えている経営者が多いのかもしれません。というのは、当社ホームページでアクセス数の多いページに、「粉飾決算に手を出してしまった このままでいいのだろうか」があるからです。

当社では粉飾に頼った金融機関との付き合いはせず、もしやってしまったら早めにかつ正直に伝えたほうがいいとの立場です。しかし、打ち明ける経営者としては、何を言われるか不安だし、今後の金融支援を考えると言いづらいでしょう。

粉飾決算を伝える場合

金融機関に粉飾決算を伝える場合、隠し事はしないでください。そして、新たな融資は原則不可能となりますが、(絶対とはいえないけど)リスケジュールによる金融支援は受けられます。

金融機関は疑わしい程度では言ってこない

赤字になってしまうと金融機関の態度が変わり見捨てられるのではないか、厳しいことを言われるのが嫌だ、そんな理由から経営者は金融機関に評価される決算書を作りたいと思い粉飾してしまいます。

融資する側の金融機関も、中小企業の決算書はあまり信用していないというか、何らかの調整がされているのではと基本的には疑っています。

あまり度が過ぎたものでなければ、経営者に「社長、粉飾していますよね」なんて聞くことはないと思います。金融機関側もノルマがありますし、融資審査が通りやすい決算書の方が都合は良いので、何となく怪しい程度ではわざわざ口には出さない事が多いのです。

それに自分が担当している間に粉飾を指摘し、それによって今後の金融支援をストップすることで倒産でもされたらいろいろ面倒です。なるべく触れずにしておきたい事情もあります。

ただあまりにもやりすぎの粉飾決算では、さすがに金融機関も黙っているわけにはいきません。もし金融機関から粉飾を指摘されたら、相当の規模の粉飾になっている可能性があります。

隠し事をしない

はっきりと粉飾を疑ってきた、あるいは直接言われなくとも審査に時間がかかるようになってきた、問い合わせや求められる書類が増えてきたら、疑われている可能性はあるでしょう。

金融機関からの決算書の内容について質問が増え資金調達が難しくなってきたら、リスケジュールによって返済分の資金流出を抑える必要があります。リスケジュールを依頼する際、粉飾のことはすべてをさらけ出すことです。

粉飾決算が明らかになれば、基本的(極めて稀に支援が継続されることもあるけど)には新たな融資は期待できません。そこで経営実態をオープンにして、「本当は経営が悪化していました。申し訳ありません。しかし、これからは隠し事をせず(経営改善計画書を提出して)計画内容に沿った経営を行い再生させますのでご支援をお願いします」と伝えます。

リスケジュールを依頼する際は、粉飾しなかった場合の数字を公開しなければなりません。金融機関に本当の数字を見せる義務があるし、経営改善計画を策定するには実際の経営状態を知る必要があるからです。粉飾したままの数字で計画を策定しても、間違った数字を使って作成しているのですから、実現可能性の乏しいものになります。

それに「本当の数字はこれです。他に隠していることはありません」と言っておきながら、後になってまだ隠していることが発覚するようなことがあれば、完全に金融機関との信頼関係は崩れてしまいますから注意してください。

粉飾決算

税理士の変更

さらに税理士の変更が必要かもしれません。税理士が粉飾に関与しているのなら、これから作成する決算書の内容は信頼性に欠けます。いくら正しい内容だと主張しても信頼してもらえない可能性が高いですから、これを機に税理士を変更した方がいいと思います。

税理士が深く関与していなかったとしても、専門家として本来気づくべき規模の粉飾なら、金融機関は今までの税理士との顧問契約を解除して欲しいと希望します。命令ではありませんが強く要望してくるはずです。つまり企業としては変更した方がいいのです。

当社にも粉飾決算で悩む経営者からのご相談が後を絶ちません。その場合、決算書を粉飾する前の数字に戻すこと、税理士の変更、経営者と一緒に経営改善計画を策定、金融機関への説明をお手伝いしています。新しい税理士については当社でご紹介できるかと思いますので、今後の税務申告等については問題ありません。

少なくともリスケ支援は受けられる

少額の売上架空計上や在庫計上、減価償却費未計上等、その程度の粉飾なら今後の見通しにもよりますが、基本的には金融機関は取引先企業を倒産させて回収ができないぐらいなら、新たな資金は出さなくとも返済額軽減で支援(リスケジュール、リスケ)を継続し、少しでも回収できる方向で動く可能性は高いと思います。

もちろんこれは絶対ではありません。粉飾の程度にもよります。実際の年商が1億円なのに、10億円にしていたなど大規模な粉飾ではリスケ支援も受けられないでしょう。

粉飾を続ければ続けるほど、本来の返済能力を超えた借入金残高になっていきます。それでは経営悪化の問題解決にはなりません。悪質な場合は逮捕されることもあります。粉飾をするということは、正常な経営状態にはないのですから早急に対応しなければなりません。どうやって粉飾しようか考えるぐらいなら、直ちに経営改善や資金繰り対策について考えていきましょう。

粉飾決算に頼らない経営を

金融機関が粉飾だと言わなくても、気が付いている、あるいは疑っていることはあります。先ほどの例で言えば、売掛金や在庫が月商の何か月分あるか、それが業界平均とどれぐらい違うか、過去と比較して大きく変化していないか等に問題点があれば、粉飾の可能性を疑われることになります。粉飾でないにしても回収不能の売掛金や販売できない在庫の存在を疑われます。

今後の金融機関との付き合い方は、騙すような付き合い方ではなく、よきパートナーとなってもらえるような付き合い方をするべきです。

「粉飾決算で銀行から資金調達すればいいや」という考えはどうか持たないようにして欲しいと思います。そんな方法をいつまでも続けることはできません。

また粉飾決算の最も大きな問題点は、粉飾を続けることで自社の本当の数字が分からなくなってしまうことです。本当の数字を直視することから経営改善は始まります。そういう意味からもぜひ粉飾決算は避けるようにしてください。

なお、当社では粉飾決算のお手伝いは一切しません。

しかし、過去に粉飾決算をしてしまったが何とか改善したい、正しい数字を見て経営改善をしていきたい、そんな経営者さんならよろこんでお手伝いさせて頂きます。