赤字工事を受注する建設会社

建設業では「今回の現場は赤字だけど、この赤字工事が次の(利益が得られる)工事につながっていく」といった内容を口にする経営者がいます。

確かに次につながったケースはあるでしょう。当社の顧問先でもそこから次の黒字工事を受注したことはありましたから。しかし、赤字工事を受注して、次の(ちゃんと利益が得られる)工事を獲得できているケースは少ないように思います。次もろくに儲からない工事で「ここを頑張れば、うちの事を信頼して、儲かる工事を出してくれる」と信じて受注し、経営は一層悪化していくほうが多いように思います。

そこまでやったとしても、発注企業から「うちに協力的な良い会社だ」と評価されるようなことはまずありません。むしろ今後のメリットをチラつかせれば、簡単に安請け合いする都合の良い会社としか思われておらず、利用されているだけなのです。

キャバクラや風俗店で接待をさんざんさせて、その分を請求金額に上乗せしていいと言っておいて、結局はそれが認められなく、接待させた分が影響して赤字なんていう顧問先もありました。

他の業種からすると理解が難しいのですが、建設業界って工事が終わってみたら赤字だったというケースもありますが、最初から赤字になると分かっていても受注していく事があります。

その理由は、先ほどのように赤字工事でも受けて今後につなげるということも1つありますが、利益よりも売上高にこだわりすぎる経営者が多い事だと思います。どの業界でもそうなのですが、特に建設業の経営者はその傾向が強いようです。自社の規模を大きく見せたい経営者は多い。

業績の悪化した建設関係の顧問先に「御社は今、3,000万円の赤字です」と言ったところ、「来月から始まる工事の請求金額が3,000万円ですから、赤字を解消できます」と言ってきたことがありました。売上ばかりに目が行ってしまい、利益のことを忘れてしまうようで、そんな感じの経営者さんは意外といるのです。

建設業の経営者が売上高にこだわる傾向が強いという理由以外にも、経営事項審査(経審)の影響がありますし、それ以外にも社員の給料は固定費であることから、仕事が無くて遊ばせておくぐらいなら工事を受注して働かせようと考えることもあります。

赤字工事であっても、材料費、外注費、その他諸経費、そして人件費の一部もカバーできるのであるのならまだ良いとは思います。しかし、人件費だけでなく、それ以外の経費もカバーできないような工事なら絶対に受注してはいけません。

でもやっぱり材料費、外注費、人件費、その他諸経費をすべて賄える売上高の工事を受注するべきです。いろいろ事情はあるかと思いますが、最初から赤字と分かっている工事、特に人件費どころかそれ以外の経費も賄えないような工事を受注するのは避けましょう。

それを繰り返していくうちに自社の経営はどんどん悪化していく事になります。