経営者から借入れした場合、貸借対照表の負債の部に「短期借入金」や「長期借入金」ではなく、「役員借入金」として計上していることがあります。
それは内訳書を見なくても、決算書だけで金融機関からの借入金との違いが明確になるようにするためです。
そしてもう一つ理由があります。中小企業は経営者がほとんどの株式を保有していることから、法人と個人を一体と見なすことができます。経営者から法人に貸付けた資金について返済を求めないのであれば、金融機関も借入金ではなく資本金として扱うこともできます。そのためにあえて「役員借入金」と分けて計上しているのです。
この役員借入金ですが、経営者の個人口座から振り込まれたのが明らかであったり、資金繰りの都合上、役員報酬の未払分を役員借入金にしていたりすれば、そのような取り扱いもしやすいでしょう。しかし、そう簡単に行かないこともあるのです。
例えば、金融機関が融資をしてくれないために、ノンバンクあるいは高金利の金融会社から資金調達した企業は、それがばれないよう役員借入金で計上していることが多いからです。すでに資金繰りの悪化で個人の預金もほとんどないのに、多額の役員借入金が発生していたら家族や知人からの可能性もあるけど、やっぱり金融機関は怪しいと考えるかもしれません。
それ以外にも、仕入や外注費、その他経費の未払いが増加していたら、資金繰りが極めて悪化し支払能力がないと思われます。それを隠すためにすべて役員借入金で処理していることもあります。
業績の悪化で、個人の資金を自社に投入する、あるいは役員報酬未払を計上するのは、仕方がないことです。ただ、何か隠し事があるのでは、と疑われることがないようにしましょう。
また、リスケジュール中に役員借入金が発生したのなら、新たな融資が困難だから自己資金を使ったのだろうとなりますが、まだリスケジュールをしていないのなら、他行での資金調達が困難になっているのだな?と疑われる可能性があります。
そうであれば無理せず返済をストップしながら、自社と経営者の資金でやりくりしなければなりません。隠しても良いことはありませんから、一日も早めに元金返済をストップしてもらいましょう。