顧問先や経営相談のご依頼で伺う会社さんの会計データを拝見すると、同じ取引先で売上と仕入が両方発生するというのを時々見かけます。
例えば製造業等でしたら、材料を仕入れて同じ取引先に販売する事があります。そういう場合、仕入よりも売上のほうが金額的には当然大きくなりますよね。
しかし、売上よりも仕入のほうが金額的に大きい取引先を見かけることがあるのです。
例えば、売上入金108万円、1か月後に仕入118.8万円といった感じです。
すぐに分かった人もいるでしょうが、これ実際には売上は借入で、仕入は返済と支払利息なのです。1か月後に10%上乗せして支払う(返済する)のです。
そういう仕訳をすれば売上を多く見せることができるので、中小企業の経営者の中には、こういう仕訳をしたがる方が意外といるのです。それに、借入先を銀行にはあまり知られたくないためというのも理由でしょう。
今週伺った会社さんの会計データを拝見していたらそういう処理を見つけました。
以前お客さんだった会社でもありました。私に新しい事業を始めたと説明していたのですが、私がおかしいと言い続けたら、借入をこのように処理をしていると話してくれました。
完済すれば売上よりも仕入のほうが多いので粗利益はマイナスです。会社全体の粗利益率の低下を招くので、頻繁に借入と返済を繰り返すと、過去の利益率と比較してもおかしくなってしまいます。
経営者さんの気持ちは理解できるのですが、やはり仕訳入力時は借入金を使ったほうがいいのです。
それにこれから申し上げるのは企業によって異なりますし、税務的な問題なので顧問税理士等に確認して欲しいのですが、消費税の計算にも影響してしまうかもしれません。
大雑把な説明ですが、通常は売上の消費税から仕入やその他費用の消費税の差額を納税することになります。
しかし、基準期間の課税売上高が5,000万円以下なら、簡易課税制度を利用する事ができます。それは課税売上高と業種から消費税を計算する事ができる制度で、普通の税額計算よりも楽ですし、通常の計算よりも有利になることがよくあります。
そういった制度も、借入金を売上で処理してしまい5,000万円を超えると使えなくなると思います。
また、課税売上高が5億円を超えると、やはり消費税の計算がやや面倒になるので注意が必要です。
このように税金の計算にも影響を与える可能性があるので、売上や仕入として処理をするのはやめて、(そもそも借入金なのですから)ちゃんと借入金で処理するようにしましょう。
こういう処理をして借入をしている場合、相手先には結構な金利・手数料を支払っていることが多いです。
極めて高い金利での借入は徐々に経営を苦しくします。一時的にどうしてもという仕方の場合もあるでしょう。しかし、経営に負担となってくることが多いですから注意してください。