東京商工リサーチ『2018年「負債1,000万円未満の倒産」調査』によると、2018年1月~12月の負債1,000万円以上の倒産は8,235件、10年連続で前年を下回っているものの、負債1千万円未満の企業倒産は521件と3年連続で前年を上回りました。
中小企業金融円滑化法(2009年~2013年)により多くの中小企業が返済額軽減を受けました。金融円滑化法が終了してからも、金融機関はリスケジュールによる支援を継続しています。再生しつつある企業はあるものの、いつまで経っても業績が回復しない企業も存在します。地域金融機関はそれでも支援を続けているけど、改善されない企業への支援は徐々に困難となり、ある程度の事業継続ができない企業は増えてくるでしょう。
急増というわけではないものの、増加局面に入ってきそうですから取引先の倒産には警戒しておきましょう。
危険な兆候をいくつかご紹介します。
■ヒト
単なる定年退職なら問題ありません。しかし、幹部社員の退職は、従業員よりも内部情報を知りうる立場にありますから、経営不振から今後に悲観的となり、見切りをつけて退職をする可能性は高いでしょう。特に経理部長が急に退職したら要注意です。
従業員が退職する場合も、給与や賞与などの待遇が悪い、むしろ悪化しているようだと、やはり企業の将来に見切りをつけて退職していきます。優秀な人材ほど先に流出していきます。
さらに最近は「ブラック企業」という言葉が知られるようになりました。取引先がそれに該当し慢性的な人手不足なら経営は悪化していきます。定着率が悪いようでしたら注意しましょう。
また、経営者が高齢であるにもかかわらず、後継者が決まっていない取引先にも注意してください。経営者の年齢が高いほど経営は悪化する傾向にありますし、体調不良や死去によって突然倒産することあります。
■モノ
「利益を増やすにはとにかく売上を増加させなければ」と、安く仕事を受注、あるいは値下げをして売上増を目指す経営者はいます。それでは資金繰りが一層苦しくなるので、経営リスクは高くなるだけです。
また、新たな収益源の確保を目的に新規事業に手を出す中小企業はあります。本業から得られた利益で新規事業を育てていくのは間違いではありません。しかし、本業がうまくいっていないので、新たな事業に手を出す中小企業が結構多いのです。もし取引先がそうだとしたら、人材や資金などの経営資源が分散されるため、経営にはより悪影響を及ぼす可能性が高いです。特に本業とは無関係の事業ならかなり危険だと思います。
■カネ
支払条件の変更要請があったら要警戒です。お互いで取り決めた条件を変更したいといとの申し出は、資金繰りがかなり苦しい状況にあります。変更要請に応じるかどうか、そして万が一に備えてどう対応するか検討が必要です。
変更要請までには至らないものの、例えばこれまで月末に支払ってくれていたのに、翌月1日に入金になることが増えたとしましょう。その場合も、月末の資金残高では支払えないために遅れているわけですから、資金繰りは悪化の傾向にあると考えられます。
■その他
同業者からの噂話というのも意外と侮れません。私の経験からすると、結構正確な情報であったりします。どこかの偏った報道しかできない新聞よりもずっと信用できます。
その他にも、営業社員が取引先を訪問して得た情報、例えば社長や経理部長が不在気味、社員からは会社の悪口や不満がよく聞かれるなども参考になるでしょう。
経理からの情報、そして営業社員が取引先を訪問して得た情報、あるいは信用調査会社の情報などを社内で共有し早めに対応しましょう。早めの対応が回収不能債権の発生防止につながります。