赤字決算に陥り資金繰りが苦しくなると、金融機関への返済だけでなく、税金(社会保険料も含む)を滞納してしまうことがあります。
税金未納と融資の関係
税金未納が発生する理由は、単に忘れてしまった場合もあるでしょうが、そのほとんどは資金繰りが極めて苦しいからです。
納税義務を果たせないほど資金繰りがひっ迫しているのですから、その状態で融資を行っても、ろくに返済もされずに早期に融資が焦げ付く危険性が高いと判断せざるを得ません。
そもそも、期限までに納付するのが当たり前であり、未納は本来なら許されるものではありません。
したがって、金融機関が義務を果たせない企業への支援には慎重になります。
融資が受けられるケース
では「税金未納=融資は絶対に受けられない」が正しいかといえば、正しくもあり、誤りでもあります。確かに厳しいですが、絶対無理ということではありません。
ではどのような条件が満たされるかといえば、次の3つが必要でしょう。
分割納付の手続きをしている
税金未納を解決しなければなりませんが、そのためにもまずは税務署へ連絡し、今後の資金繰り見通しを説明し、分割納付を認めてもらわなければなりません。
税務署から連絡してくるだろうと放置するのはまずいです。
交渉は税務署や職員によって差があります。厳しいことを言われても冷静に交渉してください。
短期間で未納解消が見込まれる
分割納付といっても短期間で解消されることが必要です。長期は認められません。法人税なら中間納税がある企業でも半年以内、そうでない企業でも1年以内を税務署は求めてくるはずです。実際にはもう少し短い期間を要求されるでしょうが、金融機関としても短期間で解消することが条件だと考えたほうがいいです。
一定期間行われている
税務署に申請をして承認を得られたといっても、実際にそれが履行されているか、すぐに守られていないようなことがないか3か月程度は必要でしょう。
プロパー融資は原則厳しい
税金未納がある状態ではプロパー融資は難しく、信用保証協会の保証を求められることが一般的です。
しかし、融資に絶対はありません。税金未納があってもプロパー融資を受けられたことはあります。
以前、ある信用組合の副支店長と税金未納の件で話す機会があったのですが、融資することで税金未納が解消され、事業再生が大いに期待できるのなら応じると言っていました。
なお、「不動産などで十分な担保があれば問題ないのでは?」と考える方もいるでしょう。確かにそれで融資を受けられるケースもあるでしょうが、担保がしっかりあったとしても事業活動によって得られた利益から返済できるかを金融機関は重視します。いくら担保があっても返済能力がないのであれば融資には慎重です。
税金未納で融資が受けられないのなら
分割納付しているからといって必ず融資が受けられるわけではありません。どうしても通常の融資よりも審査は厳しいのが現実です。そこで金融機関以外からの資金調達も考えるでしょう。
ノンバンクの利用
金融機関以外からの資金調達は、金利や手数料負担が大きいのが問題になります。ただし、金融機関よりも審査基準が緩やかであり、税金未納であっても利用できる場合があります。
リスケ中で新規融資は望めないが、例えば売上獲得のチャンスに仕入資金を先に支払うような場合で、売掛金入金までの数か月間利用するなら金利負担も軽く検討できるでしょう。
ファクタリングは注意
売上債権を売却するファクタリングという資金調達方法がかなり普及してきました。債権の売却という融資とは異なる方法です。売上先の支払能力が重要で、業績や税金未納については基本的に問題ありません。
しかし、1か月先に入金される売上債権でも手数料が5~10%程度かかります。年利にしたら大変な数字ですから頻繁な利用は危険です。
詳しくは当社ホームページ「ファクタリング」を参照してください。
差し押さえに要注意
税金未納を放置し税務署にも誠意ある対応を行わない、あるいは分割納付を約束しながらそれが履行できていない場合は、税務署から企業にまず連絡が来るでしょう。それでも十分な対応ができないと、税務署は預金口座を差し押さえする権利があります。
もしこれをやられたら新規融資どころではなく、逆に借入金の返済を求められることになります。
金融機関との融資取引を開始する際、銀行なら「銀行取引約定書」という書類を取り交わします。そこには預金口座の差し押さえがあったら、借入れをしている企業の「期限の利益を喪失する」と書かれているはずです。期限の利益とは返済期限までは借り続けることができる権利のことです。期限の利益を喪失するのですから、直ちに返済しなさいという意味なのです。
税務署から金融機関に差し押さえするよう書類が届けば、直ちに預金は納税に充てられてしまい、資金繰りに極めて深刻なダメージを与えます。
税務署には誠意ある対応を行い、最終手段を行使されないようにしてください。
返済よりも税金を優先
金融機関への返済はもちろんいずれはしなければなりません。しかし、限られた手持資金ではすべての支払いや返済ができないのなら、優先順位を付けなければなりません。
非常時は金融機関が最後
資金繰りの非常時は金融機関への返済が最後です。事業継続に必要な仕入や給与支払いがまず優先されます。その次に他の経費でしょうが、金融機関よりも納税が先になります。
金融機関としては不愉快かもしれませんが、納税が理由であれば拒否できません。低姿勢で「納税を優先させてください」とお願いしてください。
手持資金があるうちにリスケ
税金未納が発生しそうな段階で、返済よりも税金を優先しましょう。税金は長期での納付には応じてくれませんが、融資は長期間待ってくれるか少額の返済に応じてくれます。つまり交渉の余地は金融機関のほうがあります。
新規融資は困難になりますから、手持資金に余裕があるうちにリスケをさせてもらい、税金も分割納付を交渉しましょう。多額の税金未納、そして手持資金がないタイミングでリスケをしても立て直しが困難となります。


コメント