よく金融機関が嫌がる勘定科目として貸付金が挙げられます。このブログでも過去に書いたことがありますし、経営者ならご存知かもしれません。
貸付金といっても取引先や従業員への貸付けもありますが、多くは経営者個人に流れていることが多いと思います。どちらにしても返済してもらえる可能性が低いのではないでしょうか。それ以外にも杜撰な経理処理が影響で、実体のない現金が発生、それを隠すために貸付金等で処理することもあります。
返済原資を生まない
貸付金がいけない理由は事業に使われていないということです。
貸借対照表をみてください。資産の部には、上から現金・預金、売上債権(受取手形や売掛金)、その次に棚卸資産(商品、原材料等)が並んでいて、その下にもいろいろな勘定科目が並んでいるはずです。
企業は調達した資金で資産を購入し事業活動に使います。
・商品や原材料を購入、それを販売、あるいは製造しててから販売します。
・建物(工場や店舗)や機械を使って商品製品の販売、製品を製造します。
・車両運搬具を使って営業に行ったり、商品・製品を納めたりします。
どれも資産を使って売上計上に貢献していることになります。
その結果として売上債権が発生し後に資金化され、給料や仕入先そして諸経費の支払い、金融機関への返済に充て、残りを自己資金として蓄えたり、次の仕入れや設備導入に使うことができます。
資産の部にある現預金や売上債権等の一部を除き、資産は費用化(商品なら売上原価、固定資産は減価償却費)して売上を計上し、利益を生み出さなければなりません。
しかし、貸付金はこのように経営に貢献しているでしょうか。確かに利息を受け取り、かつ短期間に返済してもらえるケースはあるかもしれません。しかし、その多くは経営者の個人的なことに使われ、利息どころか返済すら困難になっていることがほとんどでしょう。
手持の現預金が潤沢で、経営者への貸付金が多額になっても経営に影響が出ないなら、それでもいいでしょう。しかし、そうでないのに金融機関から調達した事業資金を個人への貸付金に流したのなら、新たな資金調達が必要になってきます。
金融機関への利息支払いや返済も発生しますので、収益や資金繰りを悪化させます。だから貸付金はいけないのです。
今後の資金調達に影響
金融機関も貸付金残高が膨らんでいけば、経営者に詳細をヒアリングしてきます。そして、資金使途を運転資金と偽って融資を受け、経営者個人に流れていれば資金使途違反になりますから、金融機関はいずれ融資をストップしてきます。少額の貸付金にまで口は出さないですが、無視できない金額になってくればそのリスクは高いです。
企業が事業資金として調達した資金は、必ず自社の経営のために使わなければならないのです。当たり前のことなのですが、できない経営者がいるんですよね。
なお経営者への貸付金がやむを得ない場合もあります。例えば、自社の株を経営者が買い取りたいが、手持資金がそれほどないので、企業から経営者に貸付け、毎月の役員報酬から返済していく、こういうことなら自社の経営安定のために必要ですから意味のあることです。
個人的なことに資金が流れると、急速に資金繰りは悪化していきます。それを補うために資金調達すれば毎月の利息と返済が増え、貸付金も増加し結果的に融資も不可能になってきます。
今までもそんな企業を嫌というほど見てきました。だからこそ、資金の使い道は事業目的に限定しましょう。